アニメ放映直前の話題作! “取り違え”から始まるカオスな四角関係ラブコメ『カッコウの許嫁』
公開日:2022/3/28

※この記事は作品の内容を含みます。ご注意の上お読みください。
『カッコウの許嫁』(吉河美希/講談社)は記録ずくめの作品だ。単行本1巻が講談社史上最速の約半年で10刷となり、5巻が同社の令和最高初版発行部数を打ち出し、さらに令和初年度から発行された同社作品の中で初版最高発行部数(当時)となった。そんな超絶話題作が、作者・吉河美希氏の過去作『山田くんと七人の魔女』に続いてアニメ化が決定! 2022年4月からの放映を控えており、筆者は楽しみで仕方がない状況なのである。
本作の魅力は何といっても吉河氏らしい、生き生きと描かれたキャラクターたち。そんな彼らが繰り広げるストーリーは、主人公の男子高校生・海野凪(うみのなぎ)と3人のヒロインによる“四角関係”を中心に描かれており、さらに“許嫁”に“同居”というラブコメの王道エッセンスが加味されている。しかし本作の魅力はそれだけではないことを紹介したい。なお、ストーリー展開の内容を含むので、ご注意の上でお読みいただきたい。
取り違えられたあの子が許嫁になって同居することに……!
16歳の凪はある日、自分が産院でベッドを間違えられた“取り違え子”だと知る。この事実が発覚して1カ月後、実の両親を含めた2家族で会うことに。嫌々ながら会食場所へ向かう凪は、道中で天野エリカ(あまのえりか)と偶然出会い、こう言われた「私の彼氏になりなさいよ」。
エリカはホテル王の娘で、超がつくセレブだった。彼女は親に無理やり決められた許嫁に会いにいくのだという。そこで「恋人がいるから結婚はしない」と親に意思表示をするため、凪に彼氏のフリをさせたのだ。エリカはツーショット写真を撮って親に送付したが、信じてもらえなかった……。
彼女と別れて、凪は会食場所に。そこに再びエリカが現れる。実は彼女こそ凪との取り違え子で、エリカの“親たちが決めた許嫁”というのが凪だったのだ。彼はエリカ以上に全力で抗う。なぜなら彼は同じ高校に好きな子がいるからだ。
強引な親たちはふたりの気持ちを聞くことなどしない。天野パパの「ふたりの関係はまだ始まったばかりだから」という考えから、一軒家をあてがわれて同居生活を送ることに……! さらにエリカが凪の高校に転校してきて……。取り違えという数奇な運命から、出会ったふたりに何が起こるのか?
運命を変えたい凪、エリカ、幸、ひろのカオスな四角関係
本作のメインとなるキャラクターを紹介する。凪は少年マンガらしいアツい主人公だ。その情熱は、高校の同級生・瀬川ひろに向けられている。彼女は才色兼備、社交的で性格もいい高嶺の華。ひろが「好きなタイプは自分より頭がいい人」と言っているのを聞いた凪は、猛勉強を続けてきた。彼女の成績は不動の学年1位。凪はそんなひろに、万年2位の自分が勝てたなら「告白する」と決意していた。
エリカはSNSでインフルエンサーとしてその名を知られる美少女だ。趣味は写真をSNSにアップすること。驚くほど写真へのこだわりがあり、バズらせて有名になりたいと思っている。その理由は“ある人”に自分の存在を届けたいからだ。
凪の妹・海野幸(うみのさち)は兄のことが大好き。“取り違え”により、実の姉ができた複雑な思いとともに、兄として一緒にいた凪と血がつながっていないことの意味を考えるようになる。
そして瀬川ひろ。大きな神社の一人娘で前述の通りの完璧なマドンナ的存在だ。超絶負けず嫌いな性格が発覚した時に凪は「カッコイイ……」と惚れ直す。ただ彼女は“誰とも付き合えない”運命を背負っていた。
本作のポイントはそんな彼らの四角関係なのだが、ここまででお分かりの通り、複数ヒロイン全員が主人公を好きなわけではない。
凪はひろが好き。
凪の許嫁・エリカには気になる人がいる。
幸は凪が好き。
ひろは誰のことも好きに“なれない”。
このように整理すると独特な関係性が分かるだろう。本作は決して単純なハーレムラブコメではない。恋心を軸にしつつも、4人の人生が変わっていくさまが描かれる物語なのだ。
凪たちは、取り違え・親が強引に決めた人生・生まれた家、という運命に振り回されていた。ただ彼らが出会い人生が交錯したことで、一緒に運命に立ち向かうようになれたのだ。
果たして4人は自分たちが望むように運命を変えられるのか。そしてその先に待っているものは――。単行本10巻の時点ではさらにカオス度が増しており、全く展開が読めず目を離すことができない。アニメ化により筆者と同じ状態になる人がさらに増えることだろう。
文=古林恭