夫の浮気を疑う主婦が“禁断の秘密”を抱えることに――元役者の探偵が暴く「知られたくない真実」とは『暴き屋』
公開日:2022/4/17

大小の差はあれど、私たちはみな、人には言えない秘密を抱えている。恋人や家族、親友には絶対に知られたくない真実…。もし、それが誰かの手によって、明るみに出てしまったとしたなら、あなたはどんな人生を送るだろうか。
漫画『暴き屋』(アミューズ・講談社・FIREBUG:原作、松井レナ:漫画/講談社)は、そんな恐怖を感じさせる1冊。LINEマンガで大きな反響が寄せられた本作には、日常の中で生じた小さなひずみが秘密となる怖さがリアルに描かれており、目が離せなくなる。
夫の浮気を疑い、結婚5年目の主婦が「秘密」を抱えることに…
天才役者の大谷壮は、とある理由により、役者の道を諦め、探偵事務所を始める。しかも、それは一般的な探偵業ではない。大谷は天才的な演技力を活かし、ターゲットの知られざる秘密を白日の下に晒す「暴き屋」になったのだ。
第1巻に描かれているのは、夫の不倫を疑い、秘密を持つことになってしまった恵美の苦悩。元看護師の恵美は、結婚5年目。夫との仲はマンネリ化しており、セックスもレス気味。自分への関心が薄れてきた夫の態度に傷ついていた。
そんな時、偶然、夫のスマホに届いたハートマークつきのメッセージを目にし、浮気を疑うようになる。なんだか、夫が遠い…。そう感じ、悶々とした日々を送るようになった恵美は、ある日、運命を変えることになる出会いに遭遇する。
買い物帰り、恵美は息子の家に行く途中で道に迷ってしまったという年輩女性から携帯を貸してほしいと頼まれ、快く承諾。すると、後日、息子と名乗る吉野佳介からお礼の電話が。
その時、吉野が口にしたなにげない言葉に、恵美は嬉しさを覚えた。なぜなら、夫と暮らす中で刻まれた、自分でも気づかない心の傷が癒されたと感じたから。そこで、「直接会ってお礼をさせてほしい」という吉野の申し出を受けることにした。
夫以外との食事は、恵美にとって久しぶり。どこか品がある吉野は物腰が柔らかく、人を値踏みしない性格。夫とは違い、自分の意見に耳を傾け、褒めてくれる彼に恵美はときめきを覚えた。
ご飯を食べて、話をする、ただの友達。そう自分に言い聞かせ、恵美はその後、再び、吉野と食事へ…。
そんな時、ひょんなことから自宅で夫の浮気の証拠と思えるものを発見してしまい、恵美は激怒。秘密を抱えることになる道へと足を踏み出してしまう…。
本作は、秘密を抱えることになるまでの心理描写が丁寧に描かれていて、読みごたえがあり、心が共鳴する部分も多々あるだろう。
秘密は些細な悩みや悲しみ、怒りから生まれることも多く、時には自分が隠している真実が誰かの秘密を生み出す原因になってしまうことも少なくない。だからこそ、恵美のように心がモヤモヤした時には、自分の本心や憂鬱のもととなっている相手ときちんと向き合い、未来の自分が後ろめたさを感じなくていい道を選択していきたい。
今シリーズは、2巻以降で親友同士の秘密なども描かれていくようなので、そちらも要チェック。果たして、探偵・大谷は恵美たち夫婦をはじめ、これから続々と登場する秘密を抱えたワケありな人たちに、どう接近し、真実を暴いていくのだろうか。
あっと驚く、その手法を目にすると、きっと作品を初めから読み直したくもなるはず。ぜひ自分が持っている秘密との向き合い方も考えながら、楽しんでみてほしい。
文=古川諭香