永作博美さんが選んだ1冊は?「言葉の背後にあるのは究極的には愛や優しさなんですね」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/11/13

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年12月号からの転載になります。

永作博美さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、永作博美さん。

(取材・文=松井美緒 写真=booro)

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 お子さんと書店に参考書を買いに行ったときに、永作さんが思わず「目が合った」という本書。学習書というよりはむしろ、「言葉の大切さ」を教えてくれた一冊だった。

「子どもたちが成長して言葉を覚えるほど、コミュニケーションが疎かになっている気がしていました。今、スピードが重視される時代ですから、皆、時間をかけることを面倒くさがる傾向にあると思うんです。会話でも相手の言葉を聞かずに、自分の考えを喋ってしまうような。でもそれでは言葉が死んでしまう。そして、人の心も死んでしまう」

 言葉に込められた人の気持ちを、まずは受け止めてほしい。それを伝えたいと、永作さんはお子さんとの日々の会話を実践しているという。一方で、本書は子どもだけでなく大人にとっても示唆に富んでいる。

「最後にサンタクロースについての作文が出題されて、私も子どもの原稿用紙を借りて実際に書いてみたんです。もう、本当に宝物をいただいたような気持ちになりました。やはり、言葉の背後にあるのは究極的には愛や優しさなんですね。そこに気づければ、人、社会、自然、自分の周囲のあらゆるものとの関係が、より豊かになるだろうと思います」

 永作さんは現在、舞台『月とシネマ2023』に出演中だ。映画プロデューサー・並木(中井貴一さん)の亡き父は、町の映画館の館長だった。父と絶縁状態だった彼は、映画館を売ろうとするが……。永作さんの役どころは、並木の元妻・高山万智子だ。

「コロナ禍で全公演中止になった舞台が、今回再始動できました。作・演出のG2さんは脚本のかなりの部分を書き直されたそうで、本作への思いの強さを感じます。私にとっては数年ぶりのコメディーで、G2さんの作る個性的な人物像をどう表現するか、新しい挑戦でした」

 今こそが、この作品の「出しどき」だったのではないか、と永作さんは思う。

「私にとって、と言いましたが、世の中全体にとっても、こういうジェットコースター的コメディーは久しぶりなんじゃないでしょうか。エンタメ業界でも、重いテーマを扱うことが続いていましたから」

 演じるのが楽しい。だから多くの方に観ていただきたい。

「いい意味で、人生の馬鹿馬鹿しさをきちんと描いています。皆同じだねって笑える。気持ちが楽になって、明日から少し軽い足取りで前に進める。そんな作品になっています」

ヘアメイク:光倉カオル(dynamic) スタイリング:佐藤かな
衣装協力:ブラウス3万800円、ロングジレ5万2800円、パンツ4万2900円(以上すべてプレインピープル/プレインピープル 青山)、その他スタイリスト私物

ながさく・ひろみ●1970年、茨城県生まれ。ドラマ「陽のあたる場所」で女優デビュー、以降、映画やドラマ、舞台で活躍中。主な出演作に、映画『八日目の蟬』『朝が来る』、連続テレビ小説『舞いあがれ!』、アマゾンプライムビデオ「モダン ラブ・東京〜さまざまな愛の形〜」などの作品に出演し、多くの受賞歴がある。

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●とある町の映画館「ムーンシネマ」は、映画プロデューサー・並木憲次の父である館長が亡くなり閉館の危機。並木は元妻・高山万智子から、映画館の相続権がボランティアスタッフだった朝倉瑞帆にあることを知らされる。