『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』リレーインタビュー第1回 大塚学プロデューサー「すべては『GENESIS』以上のインパクトを目指すことから始まった」

アニメ部

2017/4/28

 4月からスタートしたTVアニメ『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』。スマートフォンゲームを原作に、バハムートと呼ばれる伝説の存在を巡る物語を描いた『神撃のバハムート GENESIS』から10年後を舞台にした本作は、変わらぬクオリティの高さ、そして新たな主人公・ニーナによるフレッシュさを見せてくれている。

 ダ・ヴィンチニュースでは、そんな『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』のスタッフインタビューを連続で敢行。第1回はプロデューサーの大塚学氏に本作がどのような狙いで作られたかを中心に語ってもらった。

ハードな面とライトな面を共存させるために

――今振り返ると『GENESIS』はどんな作品でしたか?

大塚:当時、ああいう予算感のTVシリーズって珍しくて、どれだけの物が作れるかという挑戦の要素が強かったですね。その挑戦の結果、よかったこともあれば未熟だったこともあって。個人的には『GENESIS』は好きですし、今見ても良く作ったな、と思えるのですが、全てが満足できた作品ではありませんでした。例えばお話の構成なども、今見返すと勢いに頼りすぎてしまっていて。そうした反省点は、『VIRGIN SOUL』の企画段階からすごく大事に考えました。

――その一方で、『GENESIS』を評価する声も大きかったように感じます。

大塚:熱量は伝わったと思います。単純なアニメーションの枚数や参加しているアニメーターの力量とか。1クールに掛ける労力と気持ちは、伝わる人には伝わったのでしょう。

――『VIRGIN SOUL』の制作が決まった経緯は?

大塚:『GENESIS』のオンエア時から次回作の話はありました。Cygamesさんにとっては看板タイトルのひとつである『神撃のバハムート』をいかに継続して露出していくかというのもあったし、僕としても先ほど言った満足できなかった部分をもっとやってみたい気持ちがあったので、次回作の提案をさせていただきました。それが正式に決まり、内容を検討し始めたのが2015年ですね。

――現在の『VIRGIN SOUL』……前作の10年後を舞台に、賞金稼ぎ見習いの少女を主人公にするという形になるまで紆余曲折はありましたか?

大塚:今回、『GENESIS』を観ている人だけが楽しめるものではなく、新規のお客さんにも興味を持ってもらえることを大事にしました。そのために、いかに新鮮な印象を持ってもらうかを考えて現在の形になりました。もちろん、ファバロとアーミラの話を続けるとかほかの案もありましたが。

――『VIRGIN SOUL』は2クールというのも大きいと思います。この狙いは?

大塚:『GENESIS』は1クールでしたが、描ききれなかったり、駆け足になってしまったところがあったんです。バハムートという世界規模の災害みたいなものがあり、三種族が共存している世界で、それなりのドラマを作るとすると1クールでは足りなかったなと。あとは単純に、「あれを2クールやるんだ」という前作を超えた挑戦をしたかったのも理由のひとつです。

――あの全力投球感が2倍続くと思うと、確かにインパクトはありますよね。

大塚:やってみたらかなり大変で(笑)。これ以上は十分です。

――『VIRGIN SOUL』を作る上でのコンセプトは?

大塚:やはり、『VIRGIN SOUL』から観始めた新規の人でも楽しめるものにすることです。『GENESIS』が画面も含めてハードな印象だったので、今回はハードな面と明るくライトな面を作品内で共存させたかった。その点は、全編にわたって気を付けています。

――その明るさや二面性のような部分は、キービジュアルを比較したりPVを観たりするとわかりやすいですね。

大塚:『GENESIS』は、ダークファンタジーを描くにあたって少しストレート過ぎたので。賞金稼ぎの荒くれ者2人が主人公だし(笑)。でも、今回は明るい部分を担ってくれるニーナという新たな主人公を生み出せたのでよかったです。

――『GENESIS』でも、それなりにコミカルなシーンはありましたが……。

大塚:確かにそうですが、もっとバッカスとかハンサとかが出てくると安心感もあっただろうし、よりハードな部分が際立っていたかもしれない。ただ結果論ではあるので、『GENESIS』は『GENESIS』で、ひとつのスタイルは貫いていて切れ味は良かったとも思っています。

新脚本担当・大石静の苦労と功績

――『VIRGIN SOUL』はメインスタッフがほとんど継続する中、新たな脚本担当として大石静さんを迎え入れているのが際立ちます。

大塚:『GENESIS』と根本的に違う切り口で物語を作りたい、よりキャラクターを描きたかったためです。登場人物の人生観や、どういう人なのかをきちんと描いた上で、物語を描くというスタイルですね。そこでそういう作品をずっと作り続けた人の仕事を作品に取り入れたいと思い、大石さんに参加してもらいました。

――実写畑の人も色々いると思いますが、大石さんに白羽の矢を立てた理由は?

大塚:音楽を担当されている池頼広さんのお知り合いということもあったのですが、巨匠でありながら、アニメは初めて、ファンタジーは初めてという方にお願いすると、これまでとまったく違うものができるんじゃないかと思ったのが一番の理由でした。

――オファーした際の反応はいかがでしたか?

大塚:やはりアニメやファンタジーであることに戸惑いを感じていたようです。これまで日常的なところでのドラマを扱ってらしたのに、いきなり悪魔や神がいるとか、手からビームが出るとか、そんな作品の脚本をやることになるんですから(笑)

――なるほど。

大塚:でも、例えばアザゼルとかは『GENESIS』だと解りやすい悪魔として単純に描かれていたのですが、『VIRGIN SOUL』では凄く心情を感じさせながら動くんですね。そこは大石さんの力で視聴者がキャラクターの感情を理解できるよう脚本に落とし込んでもらいました。

――ジャンルとしてはアニメやファンタジーだけど、『VIRGIN SOUL』で描こうとしているのはあくまで人間ドラマだから、意外と書けるものなのでしょうか。

大塚:それでも苦労はされていました。これは僕の考え方ですが、今のどんなアニメも、過去のアニメ作品の影響は少なからず受けているんです。お話以外でも。でもその歴史の中で生まれるベーシックな物が大石さんには一切ないから、そういうアニメの共通言語的な部分は互いに一生懸命話して摺り合わせしました。

――具体的にはどういった部分でしょう?

大塚:やはりアニメ的なアクションシーンですね。実写ドラマだとなかなか戦わないですから(笑)。アクションの割合や構成をどう考えるか……たとえば羽のある奴を高台に立てたとして、集団を相手にどう戦うかも考えなければいけないんです。そういった部分は一緒に作っていきました。

――ドラマは1時間単位のものが多いですよね。『VIRGIN SOUL』はその半分の30分の放送枠ですが、その違いによって脚本も変わるのでしょうか。

大塚:その通りで、実写とアニメでは間の取り方が全然変わってきます。たぶん実写の俳優さんなら持つ間も、アニメのキャラクターだと持たなかったり。「こんなにコロコロとシーンが変わるんだ」と大石さんも感じていたと思います。

――逆に実写畑の人に頼んでよかった点は?

大塚:色々ありますが、一番はセリフですね。 いい意味で新鮮なセリフ、面白いセリフが多くって。あとニーナの恋愛に関する部分は『GENESIS』になかった要素です。大石さんは恋というものをずっと描いてきた人なので、そこが上手くいっていれば、それは完全に大石さんの力だと思います。

――ニーナというキャラクターは、大石さんが参加する前からできていたのでしょうか?

大塚:そうですね。企画段階から若く快活とした女の子を主人公にすることを考えていました。頭にあったイメージは、女子高生感、もっと言うと女子高生特有の無敵感です。彼女たちのエネルギーってすごいじゃないですか。弊社の近くに共学の高校があって会社の近くを高校生たちが良く通るのですが、まず彼女たちは声がでかい(笑)。あのエネルギーを持ったキャラクターをセンターに置きたいというのが最初の発想でした。

――AnimeJapan 2017のイベントでも、諸星すみれさんを声優に起用した理由として、女子高生感があったと「さとうけいいち監督」が話されていました。

大塚:今のアニメにおける女子高生というよりは、生の女子高生が持つ、溢れ出すパワーのようなものを描きたかったんです。さとう監督にも娘さんがいて、自分の経験を活かしながら、ニーナを描いてくれたと思います。ニーナがいきなり「イエース!」って英語を言っちゃう辺りは、まさに監督が生み出したノリですね。

『GRANBLUE FANTASY The Animation』と合わせると、Cygamesのいいところが両方出ている

――放送が始まる前に、『GENESIS』と『VIRGIN SOUL』をつなぐ特別映像が2本公開されました。あれらはなぜ作られたのでしょうか?

大塚:単純に、Cygamesさんのオーダーがあったからですね(笑)。当初はハンサが追いかけられるだけとか、アザゼルのギャグ回とかそういった案もあったんですけど、最終的にはファバロがバハムート事件を通じてどういう思いを抱いたかというのと、ジャンヌがなぜ騎士団にいるかという2本になりました。

【神撃のバハムート GENESIS】 Short story #1

【神撃のバハムート GENESIS】Short story #2

――個人的にはアザゼルが『VIRGIN SOUL』ですごく面白くなったと感じているので、彼のギャグエピソードはぜひ観てみたかったですね。

大塚:でもアザゼルこそ、『GENESIS』からの変化を説明なしで観てもらえてよかったんじゃないかなと思います。人間と悪魔の関係が崩れた中で、ひとりそれに抗っているという悪魔のヒーロー的なポジションで。『VIRGIN SOUL』は前半を、アザゼルに引っ張ってもらっています。

――『神撃のバハムート』をアニメ化するにあたって、気を付けている点は?

大塚:Cygamesさんに最初に仕事をもらった時に言われた「ぶっ飛んだものを作ってほしい」という点はつねに考えています。僕はその言葉を「お客さんの想像の範囲内のものを作っては駄目」と捉えていて、次の展開を想像されたり、「このキャラ、どこかで見たことある」とかなるべく思われないように努力しています。もちろん、ただトリッキーなだけのものにはしていませんけど。

――ソーシャルゲームのアニメ化についてはどのような印象がありますか?

大塚:『神撃のバハムート』シリーズというアニメはすごく幸せだと思うんです。原作はあるけど、ほぼこちらで考えたオリジナルの作品なので。アザゼルやジャンヌ・ダルクみたいなゲームからのキャラクターもいますけど。もちろん「ゲームの雰囲気を壊さないように」みたいなルールはあるけどそこまで厳しくないので。本当に思う存分やらせてもらっています。

――同じ4月開始アニメで同じくCygamesの『GRANBLUE FANTASY The Animation』がありますが、どちらもそんなスタンスなのでしょうか。

大塚:『GRANBLUE FANTASY』は今のCygamesのヒットコンテンツだからか、アニメ版はビジネスとしてもすごくきちんとした形で世の中に送り出しているなと感じています。その一方で、一社提供で好きに作っている感じの『VIRGIN SOUL』もあって。この2本で、きっちりと作品を展開する真面目な部分と、「驚かせたい」とか「思いきり作りたい」というシンプルな部分がCygamesの魅力として両方出ているな、と思います。

――最後に、今後特に注目して欲しい1話を教えてください。

大塚:難しいな……今の時点であえて言うとしたら6話かな。ニーナの恋が描かれた話で、それは『VIRGIN SOUL』の象徴的な話数になると思います。あとは7、8話も個人的にはすごく好きで、シリアス度が高まっていて観ると刺激的だと思います。僕は泣きそうになりました(笑)。でも、どの話数もそれぞれ役割を持っているので、最後まで放送されたあとにどう評価されるか楽しみです。

取材・文=はるのおと

神撃のバハムート VIRGIN SOUL

アニメ「神撃のバハムート VIRGIN SOUL」公式サイト

<イントロダクション>
ここは、《人》《神》《魔》あらゆる種族が入り混じる神秘の世界ミスタルシア。

バハムート復活による世界崩壊を免れてから10年───

新たな《人》の王は《神》の神殿を襲い《魔》の国を攻め落とした

壊滅寸前だった状況からの復興と更なる発展
王都は《人》に富をもたらす

王都復興の糧として奴隷となる《魔》
消えゆく信仰心により力を失った《神》

均衡を失っていく世界で《人》《神》《魔》それぞれの正義が交錯する―――

<スタッフ>
原作:Cygames
制作:MAPPA
監督:さとうけいいち
脚本:大石静
キャラクターデザイン・総作画監督:恩田尚之
美術監督:中村豪希
音楽:池頼広
撮影監督:淡輪雄介
VFXスーパーバイザー:森川万貴
エフェクトアニメーション:橋本敬史
色彩設計:三笠修
CG監督:伊藤敬之
編集:廣瀬清志
音響効果:勝俣まさとし

<キャスト>
ニーナ・ドランゴ:諸星すみれ
シャリオス17世:梅原裕一郎
ファバロ・レオーネ:吉野裕行
カイザル・リドファルド:井上剛
アザゼル:森田成一
リタ:沢城みゆき
バッカス:岩崎ひろし
ハンサ:森久保祥太郎
ジャンヌ・ダルク:潘めぐみ
ムガロ:???
ソフィエル:坂本真綾
ディアス・バルドロメウ:間宮康弘
アレサンド・ヴィスポンティ:小野賢章

© Cygames/MAPPA/神撃のバハムート VIRGIN SOUL