「北条司先生を前に感極まって泣いたのもいい思い出です」『シティーハンター』転生モノを描いた作者の意外な素顔

マンガ・アニメ

2017/10/1


 今年7月に、月刊コミックゼノン2017年9月号(ノース・スターズ・ピクチャーズ)から連載を始めた『今日からCITY HUNTER』。『シティーハンター』を“参考書”に、「40歳のヒロインが転生したら憧れの『シティーハンター』の世界にきちゃった!?」というナナメ上の設定を描き、ネットではSNSを中心に話題騒然。現在、9月25日に発売された同誌2017年11月号で第3話が掲載中と、順調に連載を続けている。

 本作を描いているのは『侍父』や『ロボこん‼』『3年B組一八先生』で知られる錦ソクラ氏。本記事では同氏に新連載『今日からCITY HUNTER』が実現した背景を直撃。インタビューから見えてきたのは、著作のイメージとは異なる誠実な人となりと、原作『シティーハンター』への熱い想いだった。


■「畏れ多くてとても描ける気がしません」

――『今日からCITY HUNTER』が連載されるまでの経緯は?

錦ソクラ(以下、ソクラ):コミックゼノンの編集の方に声をかけていただき、直接お会いして企画内容を伺ったのですが、それを初めて聞いた時は、正直、「自分には無理だ!」と思いました。

 なにしろ北条先生は巨匠中の巨匠、雲の上の存在です。その代表作のひとつである『シティーハンター』は、誰もが知っていて熱心なファンも多い。そんな愛されている作品を、自分が汚すことになってしまったらと思うと、畏れ多くてとても描ける気がしませんでした。

 その気持ちを担当さんに正直に伝えて、そうしないためにはどうすべきか、何が大切か、よく話し合いながら作品の方向性を探り、少しずつ形にしていきました。

――新連載が決まった時の心境はいかがでしたか?

ソクラ:自分でも驚きました。不安ばかりで自信は全くありませんでしたが、やると決めたからには腹を括ってこの作品に全力で取り組もうと思いました。北条先生にもお会いして、温かい励ましのお言葉をかけていただき、感極まって涙をこぼしたのもいい思い出です(笑)。北条先生に、そして『シティーハンター』のファンの皆様に、できるだけ失礼のないように、そして少しでも喜んでもらえるように頑張ろうと思いました。


――錦ソクラ先生が『シティーハンター』で一番好きなポイントは?

ソクラ:好きなポイントはたくさんあるのですが、やはり獠というキャラクターの魅力でしょうか。おちゃらけていて女好きですが、決める時はきっちり決める、これぞまさにかっこいい大人の男ですね。

 また、小さい頃に読んだ時はあまり意識しなかったんですが、今読み返してみるとキャラクターの心の動きや関係性の変化がものすごく丁寧に描かれていることに驚きます。香も当時の少年読者からは全く不人気だったと言われていますが、今見るとすごく魅力的で真っ当にヒロインしている。普段強がっている一方で、びっくりしたときにナチュラルに獠に抱きついてたり、すごくかわいい。獠のおふざけっぷりも、周囲の人間のためにあえてそう見せている節があって、単純なスケベではない、思慮深いスケベだと大人になってからようやく気づきました(笑)。

 香に対しても、恋愛感情が深まらないようにわざと怒らせている。ハンマーをくらうのはその後ろめたさの表れでもあると。だから作中でマリィーに「香のハンマーをかわせないなんておかしい」と突っ込まれるシーンとかは本当にさりげない一言なんですが、今見ると結構ドキッとしますね。

 お互い意識しているのにそれを素直に伝えることができない二人が、パートナーとして心が通い合い、少しずつ気持ちを伝え合っていく……というドラマが根底に流れているところも、『シティーハンター』の大きな魅力のひとつだと思います。

――特に好きなエピソードやシーン、キャラクターなどがございましたら教えてください。

ソクラ:獠が海坊主、ミック、海原などのメインキャラクターと対峙するシリアスなエピソードは、どれもかっこよくて何度読んでも痺れます。あと、『都会のシンデレラ!!』などの、獠と香の二人の関係性の変化が描かれるエピソードも大好きです。

■ファン視点で原作を別の角度から描きたい

――北条先生らしい作画、『シティーハンター』の世界観を守るうえで、気を付けていることはありますか?

ソクラ:『シティーハンター』の世界は北条先生の作品として完成されているので、僕はひたすら、北条先生の作品のノリを少しでも再現することを目指して描いています。そのためにも、尊敬の意を込めて絵柄をできるだけご本人に寄せることを意識していますが、北条先生は絵が上手すぎるので真似しようとするだけで精一杯です!

 また、作画だけでなく、細かいセリフ回しやギャグのテンポ、シリアスなシーンとのメリハリなどの、『シティーハンター』特有のノリや雰囲気を意識して、そのニュアンスを出せるように努力しています。


――北条先生の作画で、上手く近づけることが難しい一番のポイントは?

ソクラ:北条先生の絵柄は時期によってかなり変化しているので、単純にパーツだけ真似れば良いというわけではなく、髪の毛や服のシワに至るまで線の一本一本に気を配らなければ全体の雰囲気が近づけられないところがとても難しいです。

 北条先生の作画はとにかく丁寧で誠実で、僕は基本的に雑でいい加減なので、大変苦労しています。日々勉強させてもらっています。

――今後、『今日からCITY HUNTER』で描きたいことがございましたら、ぜひお聞かせください!

ソクラ:名エピソードの数々を、いちファンの視点で少しだけ違った角度から追体験できるような、そんな作品にしたいと思っています。

『シティーハンター』という作品の魅力を、よりたくさんの方に伝えられればと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

(C)錦ソクラ/NSP 2017