ゆっくり近づいて育んだ、4人の絶妙なコンビネーション――STARTails☆座談会

アニメ

更新日:2020/5/14

 TVアニメ『スロウスタート』の楽しさは、何をおいてもメインキャラクター4人が織り成すかけ合いにある。「中学浪人」という秘密を抱え、最初はおずおずしていた一之瀬花名が、友人たちとゆっくり距離を縮めていく過程で交わされる会話と、そこに流れる時間はとてもあたたかくて、観る者を自然に引き込んでいく。そして、彼女たちを演じる近藤玲奈(一之瀬花名役)、伊藤彩沙(百地たまて役)、嶺内ともみ(十倉栄依子役)、長縄まりあ(千石 冠役)のキャスト4人もまた、収録やイベントを重ねる中で花名たちと同じように距離を縮め、絆を育んできた。オープニング主題歌“ne! ne! ne!”を歌うユニット、STARTails☆としても活動する4人に話を聞くべく、池袋のサンシャインシティ 噴水広場でのリリースイベント終了後に、座談会を敢行。TVアニメ『スロウスタート』の一員として過ごす日々を、絶妙なコンビネーションで楽しく語り合ってもらった。

はじめはお見合いしてました(笑)。「血液型は?」「趣味は?」とか聞いてました(近藤)

――リリースイベント、盛り上がってましたね。振り返ってみて、どんな時間でしたか?

advertisement

長縄まりあ:『スロウスタート』のイベントとしては先行上映イベントがありましたけど、今回はSTARTails☆としての第一歩という感じがしていて。「今日からいろいろ知ってもらって、スタートしていくんだな」っていう。

伊藤彩沙:最初、わたしたち4人でSTARTails☆ですって名前を教えてもらって、しばらくは名乗るのが恥ずかしかったんですよ(笑)。

長縄:(笑)「言っていいのかな?」みたいな。

伊藤:そう。でも今日、胸を張って「STARTails☆です!」って言えたのがすごく嬉しくて。

近藤玲奈:サンシャインの噴水広場と言えばアイドルの聖地なので、ちょっとアイドル気分でした(笑)。

伊藤:アイドル気分だよー! 上にもお客さんがいらっしゃって、360度上から下まで隅々と見られて(笑)。嶺ちゃんは、お客さんの前で歌うのは初めてだったんだよね。どうだった? 緊張とか顔に出ないよね。

嶺内ともみ:えっ、やばいよやばい。最後、正直にもう「緊張しました!」って言ったもん。お渡し会のときにも、「緊張してるのわかんなかったです」って皆さん言ってくださって、「うそだろ!?」ってビックリして。終わった後、「ふーっ、はぁー」って感じだったから。

伊藤:ほんとに!? そうだったの? 全然わからなかった、堂々としてたよ。

近藤:練習も、4人で一緒に合わせる機会があまりなかったので、けっこうドキドキの状態でステージに上がって、「どうなるかな?」と思ったけど、掛け声とかも皆さんがやってくださって……。あと、視覚からの情報が多かったです。

伊藤:せやな。

――(笑)。

近藤:視覚に刺激が行くから、踊りをミスしそうになって(笑)。

伊藤:お客さんの顔が見えるから、つい顔を見ちゃったね。でも、みんながすごく楽しそうな顔をしてくれて、嬉しかったなあ。4人でいたから、ほんと心強かったし。

嶺内:歌のときも、みんなの声を聞きながら歌ったっていう感じ。

伊藤:4人でいれば怖くない!

4人:怖くない!

――合わせる時間が少なかったとは思えないくらい、コンビネーションがいい4人組ですよね。

伊藤:えぇー、嬉しい! 最初の頃から考えると、ほんとに今仲良くできてるのがもう……。

近藤:はじめはお見合いしてたから(笑)。「血液型は?」「趣味は?」とか聞いてました。

嶺内:控室のお座敷をみんなで囲んでね。

伊藤:最初はわりと探り探りだったんですけど、気付いたらもう(机の下で近藤の足を蹴ってしまい)……あっ、ごめん。

近藤:(笑)

長縄:蹴れるくらいになりました(笑)。

伊藤:(笑)なりましたね。もう、みんなのこともよくわかってきて。『スロウスタート』の仕事がある日は、わりと長い時間一緒にいるから。それこそMV撮影のときは一日中一緒にいたんですけど、その日をきっかけに、4人が仲良く、ぎゅぎゅっと距離が近くなった日でもあるのかなって。

近藤:気づいたら、距離が近くなってました。

嶺内:でも、始まりはすごくゆっくりだった気がする。

――『スロウスタート』自体、キャラクター同士の関係性や距離感が大事じゃないですか。距離を縮めていくプロセスが、楽しい作品でもありますよね。だから4人の関係性の変化も、演じる役の心の動きと近いものがあったんじゃないかな、と思うんですけども。

伊藤:確かに! そこはほんとに重なるところだな、と思います。それこそ、最初のニコ生から観てくれてる方はほんとに「仲良くなったんだね」って言ってくれますし。特に、MV撮影があった次のニコ生からすごく言われるようになった気がします。「距離が近くなってよかったね」みたいな。

近藤:一番はじめのニコ生の日が「はじめまして」だったんです。

――今日のステージの様子を見てて、作品を通して関係性が深まってるし、4人の相性もすごくいいんだろうなって思って。「自分たちって相性がいいな」と思ったエピソード、ありますか?

伊藤:絶対あります。

近藤:ある。いっぱいある。

伊藤:ほんとにひとりひとりの性格も全然違うから、パズルの違うピースがハマる、みたいな――なんか、表現が玲奈ちゃんみたいな感じになってきた。

全員:(笑)

近藤:わかるわかる、すごくわかった、今。

伊藤:わかってもらえた(笑)。

近藤:みんな違う形をしてるんだけど、集まるとぴったりハマる。

長縄:『スロウスタート』では、初期の頃、栄依子がいなくなっちゃうと冠が人見知りで緊張しちゃうんです。別に嫌いなわけじゃないんですけど、「はぁ」ってなったりして。女の子の中ではよくある感じなのかなあ。いつもはグループでいるけど、ひとり抜けると「あっ」みたいな感じになるときって、あるのかもしれなくて。『スロウスタート』でも実際にそういうことが描かれていて、「あるあるだなぁ」って思ってたんですけど、わたしたちにはそれがなくって。

嶺内:ないかも!

伊藤:なーい!

長縄:MV撮影のロケのときも、ふたりずつになったりしてたけど、全然大丈夫。

嶺内:寝てたよね、わたしの上で。

近藤:おにぎり食べながら寝て、最終的におにぎり落としてました(笑)。

伊藤:わたしたち、年齢もちょうど一歳ずつ違いなんですけど、それぞれの役割というか、「この子と一緒にいたらこうなる」みたいな感じがあって、毎回エピソードが生まれるよね。

――四人の中での自分の役割があるとしたら、それぞれ何だと思います?

伊藤:嶺ちゃんはやっぱり、母性じゃないですか。

近藤:うん、お母さん!

伊藤:包容力がすごいから、受け入れてくれる。

長縄:そうそうそう。

近藤:なんでも受け入れてくれるし、よく毛づくろいしてくれる。洋服とかも直してくれます。

嶺内:逆にみんながね、ちょっと危ういだけだと思います(笑)! この前、内田(真礼)さんの服も直して、「ありがとう栄依子さん」って言われて。

伊藤:あっ、背中のリボン? 「ちょっと取れそうだな、後で言おうかな」と思ってたら、戻ってきたときにきれいになってて。あれ、嶺ちゃんだったんだね。

嶺内:そうなの。ちょうどそのとき、万年さんの服を直してあげる回だったから。

伊藤:ほんとだあ。STARTails☆の母ですね。

嶺内:ぬ(=長縄)さんは……ペット?

伊藤:ぬはね、ついちょっかいかけたくなる。ツッコミが面白いから、いじっちゃう。

嶺内:意外と冷静かと思いきや、たまにすごいことするから。

近藤:わたしと嶺ちゃんがトイレで歯磨きしてたら、デンデンデデンデンデンデデンって入ってきて。

嶺内:鏡見てたら……。

伊藤:急にそんなことしたの?

長縄:デンデンデン、って入っていったのに、ふたりは「……」。

全員:(笑)。

近藤:なんか、爆弾的な……。

嶺内:そう、爆弾だね。

伊藤:で、れいれいは、ぱっと見爆弾じゃない爆弾かもしれない。

嶺内:安全装置がついてない爆弾って感じ。一度爆発したら止められない。

伊藤:それこそ一回目のニコ生のときとか、おとなしくて健気な感じの女の子なのかな、と思ってたら、二回目に急に開花して。爆発したもんね。

嶺内:最初は、「しっかりしてる?」ってよく言われるでしょ?

近藤:言われる!

――STARTails☆、今のところ爆弾がふたつあるユニットになってるけど(笑)。

嶺内:(笑)そうですね、爆弾処理班っていう感じで。

長縄:わたしはペッツでいきます!

全員:ペッツ!

――母とペットと、安全装置がついてない爆弾。

伊藤:やばいですね(笑)。

近藤:彩沙ちゃんは……なんだろう?

嶺内:わたしの中では、意外とお姉さん。

長縄:長女キャラかもしれない。イメージが長女っぽい。

伊藤:ほんとに? まあでも、実際長女だからね。

近藤:イケイケお姉さん。

伊藤:えっ(笑)?

近藤:なんかね、彩沙ちゃんのインスタを見てるとハッピーになる。

伊藤:あっ、ありがとう(笑)。

近藤:おしゃれスポットを知ってるし、おいしいスイーツもよく知ってるから、今どきだなって。

嶺内:わたし、ダンスのときはずっと彩沙ちゃん見て踊ってるもん。

伊藤:ほんと? ちょっと視線感じるな、と思ってた(笑)。わたし、どこの現場にいても基本は素なんですけど、その中でも「自分だったらここのポジションかな」とか考えちゃうんですよ。でも、STARTails☆でいるときはほんとに素でいます。チャキチャキお姉さんっぽいことをするのも好きなんですけど、ここは自由にしても許される空間、みたいな。とても安心感があります。

こんなにあたたかい『スロウスタート』に出会えてよかったな、って思います(伊藤)

――演じる立場から見て、『スロウスタート』という作品が好きなポイントって何ですか?

近藤:何に対しても4人が盛り上がれるところが好きです。アイスが出てくる話も、アイスがアイスじゃなくなっちゃったんじゃないか、みたいな衝撃を受けて。

嶺内:アイスだよ(笑)!

伊藤:どういうこと?

近藤:アイスの話をしてたのに、どんどん広がっていくところがシュールで面白くて。

嶺内:そう、シュールなところと、友情のシーンのさじ加減が、観ていて楽しいです。

伊藤:ほんとに! よきバランスだよね。

長縄:みんな包容力があるよね。全体的に気にしない、というか。サバサバしてていいなって。

伊藤:確かに。それこそ、自分の演じているたまちゃんも、なんだかんだ自分のことより人のことを考えてるし、みんながそうだなって思います。1話で花名ちゃんの誕生日を真っ先にお祝いしているのを見て、「なんていい子なんだ」って思って。自分だったら恥ずかしかったり、様子を見ちゃったりして、一番にいける自信はないんですよ。そういうところに勇気づけられたりします。

近藤:自分の悩みだったり考えていることを相談するシーンが多いなって思っていて。でも、相談できることっていいことだと思うし、相談しているという事実が描かれているのが素敵で。安心できるんだろうなって。冠はテレパシーで相談してるし(笑)。その関係がすごくいいなって思います。

長縄:花名ちゃんが「中学浪人してるんです」って言ったところで、「いいんじゃないですかー?」「そうなんだ~」ってなりそう。悩みを打ち明けても「浪人してるんだ。花名ちゃん、でも頑張ろう……」じゃなくて、さらっと「そんなん気にしなくていいよ」みたいな感じの優しい世界。悩みを相談して、一緒に悩んであげるのとは逆の意味で、優しい世界になってるというか。

近藤:アフレコも、1話のときは探り探りな感じだったけど、だんだんやっていくにつれて、アニメの中の4人もすごく盛り上がって仲良くなってくるし、わたしたちもそれと同時にくだらない会話して笑ったりしているので、同じだなって思います。

――この作品を通して、「自分がここは成長できたかな」って思うところを聞きたいです。

嶺内:わたし、全部です。この作品は初めてのオーディションで受かった作品だから、初めてづくしで。初めてやること、初めて考えなきゃいけないこともあるし、いっぱいセリフをしゃべるのも初めてなので、ほんとにこれから勉強することだらけだなっていう感じです。歌って踊るのも初めてだし。

近藤:わたしは、ちょっと度胸がついたんじゃないかなって思ってます。わたしもアフレコでこんなにしゃべるのは初めてだったし、ダンスレッスンも本格的な振付でやったりするのは初めてで。それと、特番でバンジージャンプを飛んだんです。わたしはめちゃくちゃビビりだし、自分からは絶対しないんですけど、作品のためだと思ったら、恐怖心はあったけど、一発で飛ぼうっていう意思でちゃんと飛べた自分にちょっと感動して泣いちゃって(笑)。それからは「もう怖いものってあんまりないな」と思うようになって。すごくわたしを変えてくれた作品だなって思います。

――なるほど。さあ、どちらがトリを務めますか。

長縄:はい! わたしいきます。えっと、わたしは、あの~。

伊藤:先に言おうか?(笑)

長縄:いい、いい! なんだろうなー。いや、あの、あれです。あの~(笑)。

全員:(笑)

長縄:カップリング曲のダンス練習にあまり参加できなくて、もちろんおうちでやったりはしてたけど、自分でもちょっと不安で。でも今日、できたんです! 「やればできる!」っていう。

伊藤:わたしは、自分が当事者であることをこの作品で学びました。

嶺内:その心は?

伊藤:声優になって、今までやってきたことも全部本気なんですけど、どこか俯瞰で見ちゃう自分がいて。わたしも、初めてメインで受かったのがこの『スロウスタート』だったから、絶対にいい作品にしたいし、自分がよくしていきたい思いがすっごい強くあって。その思いで動けている自分が嬉しいです。新しい自分に気づけました。ほんとに、愛に包まれている作品だな、と思うんですよ。だから今の環境にも感謝しているし、こんなにあたたかい『スロウスタート』に出会えてよかったな、って思います。

取材・文=清水大輔 撮影=北島明(SPUTNIK)
ヘアメイク=addmix B.G