オフィスづくりは「サッカーコート」に似ている? 働き方改革と仕事環境の関連性とは

ビジネス

2018/2/16

「会社の悩みは環境の工夫で解決できる」。そんなスタンスから多様な働き方を紹介しているメディア「WORKSIGHT(ワークサイト)」は、雑誌媒体とWEB媒体を使って、国内外の新しいワークスタイルを読者に届けている。しかし「環境の工夫」と聞いても、いまいちピンとこない読者も多いはず。本当に環境が悩みを解決してくれるの? 良いオフィスと悪いオフィスって?

 同誌編集長で働き方のオーソリティである山下正太郎さんにそうした疑問をぶつけながら、これからの働き方のヒントを教わった。

■日本の働き方改革、一番の問題はどこにある?

山下正太郎さん(コクヨ株式会社 クリエイティブセンター 主幹研究員/WORKSIGHT編集長)

――政府主導で「働き方改革」が叫ばれていますが、企業にとっても働き手にとっても、これまでの働き方を大きく変えるのは難しいようです。今の日本の働き方改革には、どんな課題があるとお考えですか?

山下正太郎さん(以下、山下): まず企業側でいえば、働き方改革で何をしたいのかが曖昧です。ワーカーのためなのか、コストダウンのためなのか、他社がやっているからという義務感で動いている企業が少なくありません。他の動きに敏感であることも戦略のひとつですが、目的なき改革で取り組みが中途半端に終わっていることがほとんどです。

 根本的な日本特有の課題として、「場の空気」でマネジメントするという文化(ハイコンテクスト文化)が挙げられます。たとえば部長から「今日はもう帰っていいよ」とメールが来たとしても、本当に帰ってもいいのか、ただそう言っているだけなのか、空気を読んで忖度しないといけない(笑)。
 こういった風潮が、日本が目指すべき柔軟な働き方改革を難しくしている。カルチャーを変えない限り、抜本的な改革はきびしいと思いますね。

――では、働き手の側の問題としては?

山下: 一番の問題は、働き手にワークとライフをふまえた「こういう人生を送りたい」という明確なイメージがないことです。長時間労働が解消され、午後5時に帰宅できるようになったら、自分は何をしたいのか? 趣味でもいいですし、家族との時間を大切にするのでもいい。あるいは別の仕事をするかもしれない。充実した時間を過ごすからこそ、本業にも良いフィードバックが生まれるはずです。
 日本と同じような課題を抱えていて、働き方改革に成功した国としては、オランダやオーストラリアが挙げられますが、どちらもワーカー側にはっきりしたイメージがあったことが成功につながりました。しかし日本の場合、「ワーク」と「ライフ」がかなりの部分重なり合っているので、働くなと言われると戸惑ってしまう。急に余暇が生まれても、せいぜい同僚と飲みに行くくらいで(笑)。

 だから制度や場の問題よりも、もっと根本的に、あなたは今後どう生きたいですか、ということを問い直す施策を取らないと、この改革も頭打ちになると思っています。

――うーん、仕事が生き甲斐というのは国民性のようなものですし……問題はかなり根深いですね。

山下: 根深いです。オランダでもオーストラリアでも、子どもの頃から将来の夢やライフスタイルについて考える文化が根づいている。学校でも、何になりたいの?どう生きたいの?と、先生によく問われるんです。
 しかし日本ではそういう機会が少なく、就職活動の時期になってようやく考える機会に直面するわけですから。そして入社後に振り返ることもそうそうない。

■あえて「汚く」することで成果をあげる、海外のオフィス

――そこで本題なんですが、「WORKSIGHT」ではオフィス環境の工夫が働き方にも良い影響を及ぼした、というケースが多数紹介されています。働くことと環境はどんな関係にあるのでしょうか?

山下: オフィスとは何なのか? 根本的には「経営課題を解決するツール」と捉えるのがおすすめです。

 環境の工夫というと、格好いい家具とか、壁を取っ払った広々とした空間というイメージが浮かぶかもしれませんが、本質はそこではありません。大切なのは経営課題に即したオフィスであるかどうか。たとえば最近シリコンバレーのオフィスに行ってみると、工事中?と思わせるラフなものが多いんですよ(笑)。あまり綺麗に作りすぎるとワーカーが緊張しちゃって、人の動きが鈍くなる、コミュニケーションも取れなくなるということが分かってきた。
 むしろ作りかけの感じがあったり、汚れていたりするほうが大胆に動けて、仕事のうえでも活気が生まれたりする。戦略に応じて場の使い方が変わることを知っておくと良いと思います。

――見た目のデザインよりも、働く人にとっての生産効率中心で作られているんですね。

山下: 経営の課題は、「いかにインプット(=コストなど)を最小化して、アウトプット(=たとえば生産効率)を最大化するか」だと言い換えてもいい。
 そしてアウトプットを増やすには、大きく2つのパターンがあります。
 ひとつは答えの決まっている仕事をより早く、多くこなすこと。
 もうひとつが、まだ答えが分からない仕事を、よりクリエイティブに解決することです。前者については解決策が出尽くした感があるのですが、後者についてはまだまだ工夫の余地があり、企業によって作法も違ってくる。オフィスをめぐる現状はそんな段階ですね。