TVアニメ『ヲタクに恋は難しい』放送スタート記念対談 ふじた(原作)×平池芳正(監督)

アニメ・マンガ

2018/5/24

隠れ腐女子とゲームヲタクの不器用な恋を描いた恋愛コメディマンガ『ヲタクに恋は難しい』。累計550万部を突破した通称『ヲタ恋』が、4月からテレビアニメに! 原作者のふじたさんも制作に深くかかわったというアニメ版『ヲタ恋』の見どころについて、ふじたさん、平池芳正監督にたっぷり語っていただいた。

ヲタ恋 ダ・ヴィンチ描き下ろし
原画:荒木弥緒 仕上げ:安部なぎさ フィニッシュワーク:青嶋俊明 美術:スタジオ天神 (c)ふじた・一迅社/「ヲタ恋」製作委員会
 
ヲタ恋 アニメビジュアル

TVアニメ『ヲタクに恋は難しい』
2018年4月よりフジテレビ“ノイタミナ”にて放送開始。Amazonプライム・ビデオにて日本・海外独占配信

隠れ腐女子と重度のゲーヲタによる、不器用な恋を描いた人気コミックをアニメ化。原作のエッセンスを色濃く残しつつ、時系列をシャッフルしたりエピソードを補完したり、アニメならではの『ヲタ恋』を楽しめる。もちろん、原作にちりばめられていたヲタク感あふれるギャグや“ヲタクあるある”も満載! いきものがかり、ポルノグラフィティの音楽プロデューサー・本間昭光が劇伴を担当することも話題を呼んでいる。
原作:ふじた 監督:平池芳正 キャラクターデザイン:安田京弘 プロップデザイン:朝井聖子 美術設定:袈裟丸絵美 美術監督:諸熊倫子 色彩設計:坂本いづみ 撮影監督:青嶋俊明 音楽:本間昭光 音響監督:土屋雅紀 音響制作:HALF H・P STUDIO アニメーション制作:A-1 Pictures 制作:「ヲタ恋」製作委員会

 

「異種恋愛格闘技」と自分では言っています(笑)。(ふじた)

――はじめに、『ヲタ恋』が誕生した経緯を教えてください。

ふじた もともとイラスト投稿サイト「pixiv」を利用していて、他の方が描いた恋愛マンガを見ては「かわいいな、自分も描いてみたいな」と思っていたんです。私はオタクですし、マンガ専門学校時代にできたオタクの友達もたくさんいました。私の知っているオタクのエピソードとみなさんが好きな恋愛ものを掛け合わせたら、面白いものが生まれそうだなと思ったのがきっかけです。日常会話の楽しさ、リズム感、気の置けない雰囲気は、専門学校時代の友人たちとのおしゃべりそのままです。

――ちなみに、ふじたさんは何オタクですか?

ふじた なんだろう……。〝マンガ描きオタク〟でしょうか(笑)。紙とペンさえあれば遊んでいるような子だったので。

平池 ゲームも好きですよね?

ふじた あ、そうですね。宏嵩ほどではないですけど(笑)。

――監督が、この作品に出合ったきっかけは?

平池 1巻は自分で買って読んでいました。完全に表紙買いでしたね。今回監督のお話をいただいた時には「おお、あれですか!」って感じでした。このマンガはカテゴリーが難しいですよね。ふじたさんの担当編集者の方も「この時代に現れた新種のマンガかもしれません」と話されていました。確かに少女マンガでもなければ少年マンガでもないし、深夜アニメになるような青年マンガとも違います。でも、このカテゴライズしにくさが、『ヲタ恋』の魅力なんでしょうね。

ふじた 私自身にもよくわからないんです。恋愛をテーマにしていますが、それだけではない。「異種恋愛格闘技」と自分では言っています(笑)。

平池 だからこそこの作品は、オンリーワンなんでしょうね。

――でも、カテゴライズしづらい作品をアニメ化するのは、難しいのでは?

平池 『ヲタ恋』に限らず、近年アニメ化される原作モノの多くは、作家さんの独特のエッセンスがそのまま作品の面白さになっているケースが非常に多いと思うんです。だとすると、作品がどのように作られているのか作家さんごと分析するしかありません。ふじたさんのダシがどのように作品ににじみ出ているのか、それを考えていきました。

ふじた ダシ… …(笑)。

平池 でも、原作からだけでは作者のエッセンスを読み取るには限界があって。ふじたさんと話すことで、「なるほど、だからこういう作品になったのか」と裏レシピを知ることができるんです。たとえば成海はかわいいOLキャラなのに、時々小学生モードになるじゃないですか。あれが独特で面白いなと思っていたら、シナリオ会議の時にふじたさんが出す案がまさにあんな感じで(笑)。

ふじた 私のアタマが小学生なんです。

平池 そういうところに、作家さん独自のこだわりやダシがにじみ出るのかなと思っています。

――ふじたさんからは、監督にどんなオーダーをしましたか?

ふじた いかにも少女マンガっぽい「恋愛!」って感じを出しすぎないでほしいとお願いしました。私自身、恋愛パートは毎回「描きづらい……」と思いながら描いているんです。描き方がわからないし、「ときめき? え、何?」って(笑)。いい雰囲気になりすぎると、ギャグで落としちゃうんですよね。もともとギャグありきのマンガなので、恋愛要素を強調しすぎてギャグを弱めないでほしいと思っていました。でも、初めてお会いした時から監督自身も私と同意見でしたよね?

平池 そうですね。担当さんからも、「ふじたさんは恋愛を描こうとすると恥ずかしくなってギャグにする」って聞いていました。

ふじた 恋愛要素が強めのマンガが好きな方は少女マンガを読まれると思うので、私はギャグ8割、恋愛2割というバランスで描きたいなと思っています。アニメでも同じようなバランスですが、恋愛パートがさらに映えましたよね。私のつたない表現を、動きと音楽と声優さんのお芝居で素晴らしいシーンに仕上げてくださいました。

平池 盛り上げるべきところは盛り上げないとね。

ふじた 「あ、これこれ!」って思いました。

ヲタ恋 マンガコマ
恋愛パートかと思いきや……そっちか! ここにもふじたさんの照れが!?
 

職場での顔、ふたりの時の顔 キャラクターの多面性が魅力

平池 原作は女性ファンが多いそうですが、アニメは男性も楽しめるんじゃないかと思っています。成海はもちろんですが、樺倉なんて男性人気が高くなるんじゃないかな。同性から見ても面白いキャラだし、なんかかわいいんですよ。

ふじた アニメのスタッフさんにも樺倉好きがいますよね。「樺倉、もうちょっとカッコよくなりませんか?」ってこだわってくださる方がいて(笑)。

平池  男性向けのアニメを作る時にも、いかに男性キャラを面白いと思ってもらえるかが大事なんです。樺倉は男性が見ても女性が見ても面白いと思うんですけど、どうでしょう。

ふじた こういう人相の悪い男性キャラしか好きになれない、生きづらい女性もいるんですよ(笑)。私もまさにそのタイプ。

平池 各キャラクターに、ふじたさんのDNAが入ってると思うんですが、樺倉とふじたさんの共通点は、「恋愛が恥ずかしい」ってところかなと思っています。

ふじた  確かにどのキャラクターにも私の要素は入ってます。私の要素をひとつ入れて、それを強くするというキャラクターの作り方なので。だから多分、私にも尚哉みたいな天使の部分があるんです、きっと(笑)。

平池 自分で言いましたね……(笑)。

ふじた でも、尚哉みたいな純真無垢なキャラクターを動かすのは難しいんですよね。わかりやすいギャップ、アクがないので。その点で苦労しましたが、最近では尚哉の横に光を添えることで「あ、いい子だけどアホなんだな」とわかってきました(笑)。少しは人間らしく描けるようになったかなと思います。

――キャラクターは、カップル単位で考えるのでしょうか。

ふじた はい、ふたりセットで考えます。樺倉も、成海や宏嵩に対してはいい先輩ですが、小柳を隣に添えると雑な部分が見えてくる。樺倉と小柳のふたりきりになった時には、また別の顔が見えてくるので。

平池 どのキャラクターと相対するかで、表情が変わるのが面白いですよね。樺倉と小柳は、後輩に対する顔と、ふたりだけでいる時の表情が全然違っていて。それは成海たちもそう。突然恋愛スイッチが入ると、「あ、こんなシーンが来ちゃった!」ってびっくりさせられる(笑)。キャラクターの多面性が魅力ですよね。

『ヲタ恋』登場人物

登場人物 宏嵩 成海

二藤宏嵩 26歳/ゲーヲタ CV:伊東健人
ルックスがよく、仕事もできるハイスペック眼鏡。重度のゲーヲタで、ゲームと名の付くものは大体うまい。成海とは幼なじみで、偶然同じ会社に転職してきた彼女と再会を果たす。めったに感情を表に出さず、基本的に無表情。

桃瀬成海 26歳/隠れ腐女子 CV:伊達朱里紗
マンガ、乙女ゲー、アイドルなどを幅広くカバーする、オールラウンダー腐女子。ヲタクだとバレたため、彼氏にフラれた過去あり。それもあって職場ではヲタクであることを隠しているが、幼なじみの宏嵩と再会してしまい……。

 

登場人物 太郎 花子

樺倉太郎 28歳/ライトヲタ CV:杉田智和
メジャーなマンガやゲームは一通り押さえている、一般人以上ヲタク未満な男子。顔は怖いが、根は真面目で面倒見がよい。成海、宏嵩、小柳にとっては上司にあたる。小柳と交際しているが、デリカシーがないためよくキレられている。

小柳花子 27歳/コスプレイヤー CV:沢城みゆき
成海が働く会社の先輩。演劇、舞台、アニメ、BLなどを愛する男装コスプレイヤーで、成海と意気投合する。サバサバして見えるが、意外と世話焼きでおせっかい。高校時代の先輩であり、同じ会社で働く樺倉と付き合っている。

 

登場人物 尚哉 光

二藤尚哉 19歳/非ヲタ CV:梶 裕貴
宏嵩の弟であり、ヲタク趣味のない健全な大学生。ヲタク用語を業界用語か何かだと思っている。兄に似ず、爽やかで社交的で表情豊か。ゲームが下手なところも、兄とは大違い。成海たちの職場の近くにあるカフェでアルバイトをしている。

桜城 光 19歳/ゲーヲタ CV:悠木 碧
尚哉と同じ大学に通う学生。コミュニケーションが苦手なソロゲーマーで、大学でも誰とも話さずゲームに没頭している。内向的で無口だが、気持ちが表情に表われやすいタイプ。男性に間違われやすいが、れっきとした女性。

目指すは、〝原作者の力を借りた原作超え〟!

――アニメは、原作をベースにストーリーが進んでいくのでしょうか。

平池 そうですね。でも、アニメのために加筆もしています。たとえば成海と宏嵩がふたりで会っていた夜、小柳と樺倉は何をしていたのか?という、同じ時間軸の別の場所でのエピソードを追加したり。ふじたさんも毎回シナリオ会議に参加してくれているので、一緒に作っています。

ふじた セリフのテンポ、ギャグのノリに関しては、私も妥協したくないので。その場でひらめくこともあるので、できる限り会議には参加するようにしています。

平池 おかげで、いちばん大事なキャラクター性を損なわずに加筆させてもらえたかなと思っています。

――原作にはストーリーパートとネタパートがありますが、アニメにはどうやってネタを組み込んでいるのでしょうか。

平池 「ここなら入るかな」と、ストーリーに差し込んでいます。なので、原作どおりの時系列になっていないところもあります。

ふじた 自然な形でシャッフルされていますよね。違和感は全くありません。コミックス1巻の冒頭部分は、まだ担当編集がつく前に個人でpixivに載せていたものなので正直粗いんです。それもアニメではわかりやすく組み直していただき、「ありがとうございます!」という気持ちです。

平池 描きたいように描いたからこそ、ふじたさんのエッセンスが濃い部分でもありますよね。相談しながらバランス調整はしましたが、そのエッセンスは残したいと思いました。あと、難しかったのはオタクネタかな。ネタ元があるものなので、メーカーに許諾を取る必要があるんですが……。

ふじた それでも「そこを避けると面白くないよね」って、アニメを面白くするためにみなさんが努力してくれました。

平池 ふじたさんも全力を尽くしてくれていますよね。アフレコにも来てくれて「監督、ここのニュアンスが気になります」と指摘してもらったりしています。

ふじた 私もスタッフのみなさんも、誰ひとりとして妥協していません。『ヲタ恋』が好きで、いいアニメにしようという熱意にあふれているんです。「アニメ化は不安」という方もいると思いますが、この作品を好きな方々ばかりで作っているので安心して見ていただければと思います。

平池 私としては原作をそのままアニメにするだけでは満足できないんです。「それなら原作読めばいいんじゃない?」と思ってしまうので。そうではなく、アニメとしてベストなものを作りたい。そのために、ふじたさんの力を借りています。アニメ版の『ヲタ恋』が、新たなファンも原作ファンも満足できるものになってくれたらうれしいです。

ふじた 原作ファンの中には「原作にはない、アニメオリジナル展開が不安」という方もいるかもしれません。でも『ヲタ恋』に関しては、なぜ変更したのかすべてに理由があるんです。マンガとアニメでは、ベストの見せ方が全く違います。「アニメのベストはこういう形」という可能性のひとつとして、楽しんでいただければ。

――これから放送がスタートしますが、注目してほしい話数は?

平池 まずは1話を見てもらわないと話にならないので、ぜひ最初からご覧ください。本間昭光さんが担当する音楽も、すごくいいですし。主題歌からエンディングテーマまで楽しんでほしいですね。

ふじた  私は4話が好きなんです。マンガの序盤でいちばん盛り上がる部分を4話に持ってきているので。原作どおりの時系列ではありませんが、4話に大切なシーンを入れた意味もご覧になった方にはわかっていただけると思います。正直、恋愛パートはアニメのほうが断然いいです(笑)。

平池 アニメ版『ヲタ恋』のキーワードは、〝原作者の力を借りた原作超え〟。原作者も含めたアニメチームで、原作を超えてやろうというズルい作戦です(笑)。原作者の方にここまで時間を割いていただくのは珍しいケース。ぜひアニメも原作も両方楽しんでください。

取材・文:野本由起

ふじた●兵庫県出身。イラスト投稿サイト「pixiv」に発表した『ヲタクに恋は難しい』が「第1回次にくるマンガ大賞」の「本にして欲しいWebマンガ部門」第1位を獲得し、2015年デビュー。Webマンガ誌「comic POOL」で連載中。
 
ひらいけ・よしまさ●アニメーション監督・演出家・脚本家。制作会社サテライト所属。『SoltyRei』『WORKING!!』『アマガミSS』『AKB0048』『繰繰れ! コックリさん』『にゃんこデイズ』など監督作品多数。