「なんかやべえ奴がいる。って世間に広まったら最高」髙橋ヒロム インタビュー【プロレス特集番外編】

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2018/8/18

海外遠征から凱旋帰国して約1年半。IWGPジュニアヘビー級王者にのぼりつめ、すでに二度の防衛を果たした髙橋ヒロム。観客の度肝を抜く派手で常識外れのパフォーマンスで観客の喜怒哀楽を掌握し、期待を煽り続けている。誰もが目を離せない“髙橋ヒロム劇場”の原点とは?

――6月には「BEST OF THE SUPER Jr.」初優勝、IWGPジュニアヘビー級王座奪還。7月7日には二度目のベルト防衛。「IWGPジュニアのベルトを巻き、ジュニアとしてヘビーのベルトを巻き、ゴールデンタイムで試合をする」という夢に着々と近づいていますね。凱旋帰国からわずか1年半なのに。

髙橋ヒロム(以下、髙橋) 自分でもまだ1年半なのかって驚いてます。実感が湧く間もなく新日本プロレスってところはタイトルマッチを組んでくるので。スーパージュニアで優勝して、オスプレイのベルトに挑戦するってとこまではいいんですけど、そのあとのエル・デスペラード戦にしろ、ドラゴン・リー戦にしろ、こんなに早くやるとは思わなかった。まあ、挑戦者を指名したのは俺ですけど。

――どちらも因縁深い相手ですね。

髙橋 そうなんですけど、最近、ドラゴン・リーとは年2回ペースくらいで試合していて、ちょっと多いなって気がしてるんです。個人的には4年に1回のオリンピックくらいの間隔でいいんじゃないかと。せめて2年に1回とか。ドラゴン・リーとの戦いは楽しいけど、失うものも大きいんですよ。受けるダメージはもちろん、負けた場合はあとの精神的ショックがでかい。向こうも同じことを思ってるんじゃないかな。

――2014年、メキシコでのドラゴン・リー選手との初試合をきっかけに「好きなようにプロレスをやればいいんだ」と開き直れたと。

髙橋 観客を盛り上げて、観客と一緒に盛り上がってなんぼ。それがプロレスだ、って思いました。やりたいと思ったことは我慢せずになんでも自由にやればいいんだな、って。

――それが今の“髙橋ヒロム劇場”につながっているんですね。ゴールデンタイムにこだわるのはなぜですか?

髙橋 今の時代、インターネットが主流だけど、新日本プロレスワールドにしろYouTubeにしろ、プロレスってワードを検索しないと観られないじゃないですか。それだとプロレスファンか、自主的に興味を持った人にしか伝わらないですよね。だけどゴールデンタイムの地上波で試合が放送されたら、なにげなくチャンネルを変えてるときに“見つける”ことがありうる。俺自身がそうやってプロレスを知って、プロレスラーをめざした人間なんで、やっぱりテレビには意味があるんじゃないのかなと。

――初めてプロレスを観て「なんだこれは!」と受けた衝撃を、今度は自分が誰かに与えたい、と。

髙橋 そう。髙橋ヒロムっていう、なんかやべえ奴がいる、って世間に広まったら気持ちいいじゃないですか。会社や学校で「きのうテレビ観た? なんかやべえ奴が映ってた」「あいつは一体何なんだ」「観た観た、プロレスでしょ」なんて会話してくれたらもう、最高。別に、何を言われても構わないんです。声援でもブーイングでもなんだっていい。反応されないのがいちばんつまんないですから。そんなふうに、まったくプロレスに興味のない人間にも観てもらいたいんですよね。

自由な感情表現こそが最強のプロレス

――猫のぬいぐるみ「ダリル」を連れてきたり、リング上で駄々をこねてのたうちまわったり、ベルトを「さん」づけで呼んで話しかけたり……唯一無二のパフォーマンスを見せていますね。

髙橋 なんだって感情のある人のほうが面白いし、伝わるものも大きいじゃないですか。試合も、自分の感情以上のものを引き出してくれる選手がやっぱりやってて楽しい。だから、この間のデスペラード戦も楽しかった。あいつは素晴らしいマスクマンですよ。反則技の仕掛け方もうまい。反則は5カウントまでOKってルールがある以上、俺はそれが悪いとも思わないし、観てるのもやるのも面白い。ただ、人間的には嫌いですけどね。いやな記憶が蘇ってくる。

――それもまた感情、ですね(笑)。ヒロム選手の剥き出しの感情に観客もいつのまにか巻き込まれてしまいますが、それだけ気持ちを全開にするのって難しくないですか。

髙橋 う~ん。俺はべつに「さあ、感情を出そう!」なんて思ってるわけじゃなくて、楽しいときは楽しくて、むかつくときはむかつく、ってやりたいようにやってるだけ。でも大人って意外とそれができないですよね。子供がいちばん感情表現がうまい。仲良く遊んでいたかと思ったら、一瞬あとに殴り合いの喧嘩をしてたりするし。制御不能の天才だなって思います。

――確かに、感情に脈絡がなくて自由ですよね。

髙橋 ベルトだろうとぬいぐるみだろうと大抵のモノとは話せる。子供も同じじゃないですか。そういう心を忘れちゃった大人たちは、なんてつまんねえ生き物なんだって思います。感情むきだしで生きたほうが絶対楽しいし、緊張したり恥ずかしがったりしてチャンスを逃すのはもったいない。俺はそういうの、絶対いやなんで。プロレスでも、プロレスでしか表現できない喜怒哀楽を見せていきたい。それが絶対、最強だから。帰国後に、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンに加入したのは、ここが一番俺を自由にさせてくれると思ったから。

――他にお誘いはなかったんですか?

髙橋 タグチジャパンから声がかかりましたよ。まさかのTwitter越しで。俺は田口さんは好きだけど、タグチジャパン=田口さんですからね。入ったところで、べつに俺は何も得しねえなと思って。田口さんしか得しない場所じゃないですか。だからシカトしてやりました。

「イニシャルK」の正体は「あの人」じゃない!? 特別ヒントは……。

――観客を盛り上げるための一つに「イニシャルK」というのがありますよね。いつか闘いたい相手として折に触れて口にするので、誰なんだとファンの憶測を呼んでますが……。

髙橋 あ~、なんか最近、確定事項のように書かれてますよね。俺、なんも言ってないのに。これだけは言っておきますけど、違いますよ。K本さんじゃないですよ。今、あの人とやりたいとは思ってないですし。言い始めてから1年くらい、いろんな人が予想しているけど、俺が見たなかで正解しているのは今のところ2人だけですね。

――え、2人だけ!?

髙橋 けっこうヒントを出してるんですけど、みんな違いますね。ってことで、これ、ダ・ヴィンチさんだけの特別ヒント。俺、1回だけ会ったことあるんですよ、Kには。会ったというか、見ただけ。

――そ、それは……。候補が軒並み削られていきますね……。

髙橋 K本人も、まさか自分のことを言ってるとは思ってないでしょうね。まあ、これに関しては答え合わせがあるかどうかわからないんで。もしできなかったときは、引退のときにちょろっと言うことにします(笑)。

取材・文:立花もも  写真:江森康之