『ジャンプ』では異色の設定が人気『約束のネバーランド』――絶望の淵に立たされた子どもたちの行方は……?

マンガ

公開日:2019/3/8

人気YouTuberグループ「東海オンエア」ゆめまる×虫眼鏡
『約束のネバーランド』の吸引力とは?

食料にされる子どもたち 斬新な設定に引き込まれた

東海オンエア ゆめまるさん、虫眼鏡さん

東海オンエア
とうかいおんえあ●愛知県に拠点を置くYouTuberグループ。2013年より活動スタート。メンバーは虫眼鏡、ゆめまるに加え、てつや、しばゆー、りょう、としみつの6人。「やってみた系」や「ドッキリ企画」で人気を集め、2019年2月時点でのチャンネル登録者数は、約414万人。

——原作は連載当初から話題になっていた作品ですが、ご存じでしたか?

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ゆめまる もちろん知っていましたけど、連載当初は読んでいなくて。ただ、書店で“銃を持つ子どもたちの姿”が描かれている表紙を目にしたときに、「これ、どういうマンガなんだ!?」と思ったんです。それで読んでみたら、子どもたちが鬼の食料にされるという設定にめちゃくちゃ衝撃を受けて、そこからは一気読みでしたね。

虫眼鏡 僕は逆にアニメから入ったんです。元々アニメが好きということもあって、新しいクールが始まったら放送される作品を一通り観るようにしているんですけど、本作はドンピシャでした。生きるか死ぬかという重い雰囲気なのに、主人公のエマたちは11歳の子どもで幼いじゃないですか。だから、「この子たち、本当に生き残れるのか?」と引き込まれました。

ゆめまる まさか鬼に喰われちゃうなんて驚きだよね。

虫眼鏡 うん。第1話の時点で6歳の子の死体も出てくるしね。普通だったら黒塗りとかでごまかすようなグロいシーンもちゃんと描かれていて、挑戦作だと思う。

アニメ『約束のネバーランド』場面
エマとノーマンが“世界の真実”を知ってしまう、第1話のハイライト。鬼から身を隠し、トラックの下で息を潜めるふたり。心拍音すら聞こえてきそうな、手に汗握るシーンだ

ゆめまる 子どもが死んでしまうのって、マンガだとタブー視されている側面もあるのに、これはそこから逃げずに描いているところに惹かれる。

虫眼鏡 そう。しかも、子どもが主人公だから、どう考えても鬼を倒せるはずがない。絶対的な戦力差があるという希望がないところからスタートしていて、そこからエマたちがどうやって逃げ出すのかが気になって仕方なかった。

——「11歳の女の子」が主人公という点は、これまでの作品とは異なる点です。

虫眼鏡 これまで、マンガの主人公は強いものだと思っていたんです。敵を倒せるだけの強さを持っているイメージというか。でも11歳の女の子が主人公になっている時点で、それは不可能だと思わされるじゃないですか。だからこそ、彼女たちがこの状況をどう打破していくのかが、この作品の魅力になっているんだと思うんです。それなのに、エマは途中で「全員で逃げたい」とか言い出すし……。そんなの無理に決まってるし、無謀なワガママを言い出すエマには正直イライラしました(笑)。

ゆめまる そうなんだ!? 僕はエマに共感できた。同じ施設で育った仲間たちと脱獄したいと思うのは当然だし、逆に、レイが「(みんなを)置いて行く」って言ったときは、「なに言ってんだよ!」って思ったよ。

——ふたりが共感するキャラクターは正反対ですね。

虫眼鏡 そうですね(笑)。ただ、だからこそ面白いんだと思います。エマとレイは対照的な性格で、僕がレイに、ゆめまるがエマに共感しているように、観ている人によって想いを寄せるポイントが違うのかなって。さらに、エマとレイの拠り所になっているノーマンっていうキャラクターもいて、この3人の誰かしらには共感できるはず。

ゆめまる この3人って、本当にバランスがとれてるよね。明るく運動能力が高いエマ、穏やかで頭脳明晰なノーマン、冷静で戦略家のレイ。観ている側としても、この3人が揃えば、きっと脱獄作戦もうまくいくんだろうなってワクワクさせられる。

アニメ『約束のネバーランド』場面
施設を管理し、子どもたちの世話をするママ。いつもニコニコしている裏で、子どもたちを食料としか見ていない残酷さも併せ持つ。どうやらその背景には理由がありそうで……。

原作の印象的なシーンをアニメ特有の手法で再現

——アニメは原作を忠実に再現していますよね。

ゆめまる そうですね。原作モノのアニメって、放送時間の都合で途中途中を端折ってしまうこともありますけど、この作品は至るところに伏線が張り巡らされているから、端折ってしまったら意味がわからなくなってしまうと思うんです。なので、原作ファンも納得するアニメになっているんじゃないかな、と。

虫眼鏡 その一方で、アニメ化されたことで、より深く作品のことを理解できる部分もあるよね。声や動きが乗ることで、エマたちの「子どもらしさ」が強調されている気がする。

ゆめまる 確かに! 会話の間とか空気感も子どもらしい。

虫眼鏡 彼女たちはすごく頭が良いから、つい子どもであることを忘れてしまいがちなんだけど、動いているところを観ると「やっぱり子どもなんだ」って思うんだよね。それがより絶望感につながってるんだけど。

ゆめまる 第1話は本当に絶望した! エマとノーマンがトラックの下に隠れて、鬼とママとのやりとりを聞いているシーンなんて、怖くて怖くて仕方なかったもんな(笑)。シーンとしている中で、エマたちは鬼に気づかれないように息遣いも我慢しているんだけど、あの場面はアニメになったことでより緊迫感が増していたと思う。

虫眼鏡 ママが出てくるシーンはゾッとすることが多いよね。ニコニコしていたかと思いきや、次の瞬間に表情が変わっていたりして、その対比表現が本当にうまい。マンガは自分のスピードで読み進められるんだけど、アニメは受動的に観ることしかできないから、心の準備もできないし。

東海オンエア ゆめまるさん、虫眼鏡さん

——動画編集のプロの目線で観たときに、印象的だったシーンや演出はありましたか?

虫眼鏡 マンガだとページをめくった読者を驚かせるために、一番右上のコマにびっくりさせるようなシーンが描かれていることが多いんですけど、アニメではそれができないじゃないですか。でも、この作品では、原作の右上に配置されているコマを画面いっぱいに描くことで表現しているんですよね。

ゆめまる ママの仲間であるシスター・クローネと鬼ごっこするエピソードとかでしょ?

虫眼鏡 そうそう。エマたちがクローネに見つかってしまうシーンは、びっくりした。

ゆめまる 画面いっぱいにクローネの顔が映って、迫力あったな〜。

虫眼鏡 それと、オープニングやエンディングも効果的に効いてると思う。オープニングではエマ、ノーマン、レイの3人が均等に描かれている印象があって、主人公はあくまでもエマなんだけど、彼女ひとりが大活躍する物語ではなく、それぞれに足りない部分を補い合うというメッセージが隠されているように感じたんだ。

ゆめまる エンディングは、ちょっと絶望感が滲んでるよね。「ああ、今日も1話が終わったか」っていう小休止みたいな役割を果たしていて、だけど気持ちよくは終わらせてくれないから次も観なきゃって思わされる。

虫眼鏡 うん。救われたいから、次の話も観たくなる。

脱獄後のエマたちは……?

——アニメでは原作の第5巻まで、エマたちが脱獄するところまでが描かれます。

虫眼鏡 前半では子どもたちが抱く理不尽さとか歯がゆさに焦点が当たっていて、視聴者の方たちもやるせない気持ちでいっぱいになると思うんです。でも、エマたちが脱獄に成功することで、最後の最後で救われるんじゃないかな。

ゆめまる この作品って、ジェットコースターみたいなんですよね。問題が発生してそれを解決したと思ったら、また次の問題が出てきて……って。だから、アニメの最後まで気が抜けないんだけど、散々落とされて、最後にホッとすると思います。

虫眼鏡 ただ、施設から逃げ出して終わりじゃないもんね。鬼のことも倒してもらいたいし。いやいや、物語はこれからだぞ、っていう気持ちにもなると思います。

ゆめまる だから、第2期は絶対にやるべきです(笑)。

アニメ『約束のネバーランド』場面
エマたち人間を食料とし、世界を牛耳っている鬼。人語を解してコミュニケーションを図り、施設のママに子どもたちの“飼育”や“出荷”といった管理を命じている

——では、本誌読者に作品の見どころを教えていただけますか?

ゆめまる この作品に登場するのは、能力は高いもののみんな普通の子どもたち。そんな子たちが知恵を振り絞って行動しているところ、そして、問題を解決するごとにちょっとずつ成長しているところに注目してもらいたいですね。

虫眼鏡 もしも自分がエマたちと同じ状況下に置かれてしまったら、やはり武器を持って戦うのではなく、とにかく逃げ出すことを考えると思うんです。そういう意味で彼女たちの行動はリアルだし、とても共感できるはずです。そして、エマ、ノーマン、レイの誰かに自分を重ねることで、まるで自分自身が囚われているかのような絶望感を味わえると思います。僕はあくまでもレイ派ですけど(笑)。

ゆめまる レイも、成長して変わっていくからね。

虫眼鏡 そうだね。レイだけじゃなく、エマもノーマンも、今後どんなふうに成長していくのかが楽しみ。

構成・取材・文=五十嵐 大 写真:夏目圭一郎