「みんなのメインテーマ」から「みんなとMay’nのメインテーマ」へ。10年の絆が、歌に力を与える――May’nインタビュー

エンタメ

2019/8/2

 7月31日、May’nが2枚の作品を同時にリリースした。ひとつは、表題曲が現在放送中のTVアニメ『胡蝶綺 〜若き信長〜』のエンディングテーマである17枚目のシングル、『牙と翼』。そしてもうひとつは、2009年1月の『メイン☆ストリート』以来となる10年ぶりのミニアルバム、『YELL!!』。いずれも、10年を超えるキャリアを重ねてきたMay’nが持つシンガーとしてのスキルと、オーディエンスとの絆を強く感じさせてくれる内容だ。May’nは今春から全国をめぐるツアーを行ってきたのだが、7月7日の横浜ベイホール公演では『YELL!!』に収録された新曲“全部大丈夫”も披露。圧倒的にポジティブなメッセージを放つこの曲は、これからMay’nが歩む道を象徴しているように感じた。手応え十分の最新シングル&ミニアルバムについて、じっくり話を聞かせてもらった。

何かを守るために突き進んでる姿は、すごく美しい

――最新シングルの“牙と翼”、第一印象として、すごくどっしりした安定感のある曲だな、と思いました。この曲でまた新しいMay’nを見せられた手応えがあるんじゃないですか。

May’n:確かに、自分の足で力強く立ってる、みたいな曲にしたいな、と思っていて。男性的な強さと女性的な美しさや儚さ、どちらも込めた楽曲にしたいっていうオーダーがありましたが、その強さを出すときに、信念の強さにポイントを置きたいと思いました。音楽を続けさせてもらってきて、自分自身の音楽への覚悟とか、未来を見ていく力の強さとリンクする部分があったので、力強く自分の足で立っている姿を楽曲に込めてみました。

 それと、何かを守る強さを表現したいな、とも思っていて。何かを守るためにがむしゃらに頑張っていて、それは誰かが馬鹿にするような姿だったとしても、何かを守るために突き進んでる姿はすごく美しいものだなってわたしは思います。自分自身の活動としても、信念を持った自分でいたいなって思うので、力強さと美しさを重ねることができた楽曲になったんじゃないかなって思います。

――感情のちょっとした動きを、歌のテンションで表現するイメージが浮かぶ曲でもありますよね。ピンと張った綱の上を歩いている、みたいな。力強さと美しさ、そのどちらかに振れてしまうのではなく、ど真ん中をぶち抜く作業が必要だったのかな、と想像したんですけども。

May’n:確かに、突き抜ける感じは楽曲的に大切にしたいと思いました。メロディを畳みかけるところもそうですし、佐藤(純一/編曲)さんの流れるような美しいストリングの編曲もあって、まっすぐに揺れないで突き進む感じは必要だなあ、と思っていて。わたし自身、まっすぐ声を出して歌いたかったです。今までにも、わりとチャレンジが必要な楽曲、難しい楽曲を経ながら歩んできた気がしますが、今回は最初のレコーディングで「この曲、難し過ぎる!」と思って、めちゃくちゃ練習したし、その分思い入れもありますね。

――練習を重ねてみて、自分の中で「ここが正解なのかな」って思ったのはどこだったんですか。

May’n:わたしの中で、「アイロンがけ」って呼んでるイメージがあって。リズム感がある楽曲とか、この曲もパッと聴いた感じはメロディがたくさんあるので、それを全部汲み取ってしまうとアッパーに歌うこともできます。それはアイロンがけではなくて、射撃みたいなイメージです。わたしには射撃方式の楽曲も多いので、バラードだったとしてもアグレッシブさを出すために、リズムを全部汲み取っていく歌い方をずっとやってきました。

――射撃が点だとすると、「アイロンがけ」は面で歌うイメージ。

May’n:そう、面ですね。面をかなり意識してます。それも、自分自身がいつかやってみたいなあってなんとなく掲げていた課題ではあって。たくさん音楽を制作したり、歌ってきた中で、ネクストステージを意識したときに、年齢も重ねてきたからこその美しさというか、「動」だけではないよさの部分に、“牙と翼”でようやくたどり着けたのかもしれないなって思います。歌い方の幅が広がったというか。

――この曲はオリジナルTVアニメ『胡蝶綺~若き信長~』の主題歌でもあるわけですが、作品自体にはどんな印象を感じましたか。

May’n:織田信長は誰もが知っている歴史上の人物で、その若かりし頃を描いたひとつのストーリーなんですけど、やっぱり生きるか死ぬかみたいな時代なわけで、そんな過酷な状況の中でも精一杯生きていた各キャラクターの信念の強さや、今では想像もつかないような覚悟が絶対あると思います。だけど、それだけではなくて、キャラクター同士のドラマも、今のわたしたちにもわかるような人間関係も描かれたりするので、人と人が生活する中でわかり合える喜び、わかり合えない切なさやすれ違いの部分も、歌を通じて描けたらいいなって思いました。

――今回カップリングに収録されている“「愛してる」なんて”がとても新鮮でした。これほどストレートなラブソングはかつてなかったな、と思って。

May’n:そうですね。もともと、そういう曲を作りたくて、メロディをいただいたときに「ラブソングにしたいなあ」って思いました。ファンの方からも、「幸せなラブソングをたくさん増やしてほしい」って言ってもらっていて。この曲は、作詞をしている小澤ちひろちゃんがわたしの高校のときからの親友なんですけど、《あなたの名前を呼んでいたい》っていう歌詞がすごく好きで。《愛してる》という言葉よりも《あなたの名前を呼んでいたい》っていうのが一番のメッセージになっている曲です。「愛してる」っていう言葉は幸せなときしか言い合えないけど、名前は喧嘩したときでも言い合える言葉だから、「名前を呼んでいたい」っていう気持ちこそが「ずっと一緒にいようね」のメッセージになると思うんだって、ちひろちゃんが言っていて、なんて素敵な言葉なんだろうって思いました。

――もうひとつのカップリング“Starring”は自ら作詞を担当しているわけですけど、わりと《少女よ》っていう言葉が印象的に使われていて、この曲の歌詞の主人公は誰なんだろう?と気になりまして。

May’n:この曲には難しい問題があって(笑)。もともと『恒星少女』というゲームがあって、そのタイアップだったですよ。星と宇宙と少女、というワードが最初にありました。ゲームの主題歌って、アニメーションと違って、どこにテーマを持ってくるかがすごく難しいのですが、わたしはタイアップで歌詞を書かせてもらうときに――それは他のゲームでもそうなんですけど――どのキャラクターも主人公になり得るんだなって、まず思います。自分が選ぶキャラクターによってストーリーも変わっていくし、自分が選んだキャラクターが主人公なわけで。当たり前のことだけど、「この世界では誰もが主人公になれるんだな」って思いました。“Starring”って、「主役」っていう意味もある言葉なので、「誰もが主役なんだよ」っていう歌詞を書きたいなって思いました。

 わたしも、ときに活動の中で「これでよかったのかなあ」とか、「この選択をしてなかったらどういう未来になってたんだろう」って悩んだり、不安になってしまうこともあるけど、最近は「それでいいんだよ。だってあなたが選んだその道こそが、あなたが主役のストーリーなんだから」って思っていて。だからこそ、「あなたが選んでるその道は間違ってないよ」って言ってあげられるような歌が作りたいって思いました。自分自身の未来やストーリーを信じる大切さを描きたくて、書いた歌詞です。

今は「とにかく楽しいことしたいな」って思う

――ミニアルバムという形態としては『メイン☆ストリート』以来10年ぶりとなる『YELL!!』についても聞いていきたいと思います。言葉としてはわりとわかりやすいタイトルを掲げているわけですけど、テーマが先にあってこういう曲たちになったのか、制作を進めていく中で「YELL!!」という言葉に近づいていったのか、どちらだったんでしょう。

May’n:最初から、「YELL!!」っていう言葉で制作をしてますね。ミニアルバムって、そのときの自分がやりたい音楽を詰め込める贅沢なものだと思っていて。10年前の『メイン☆ストリート』っていうタイトルは、今振り返ってもすごくよかったな、と思いますが、この10年間歩ませてもらってきた中で、わたし自身も変わらない部分もあるけど、変わったなって思うところもあって。音楽的にはもっともっとみんなで楽しみたいねっていう気持ちがあって、その「みんなと」っていう部分が、10年前以上に深くなったし広がったところが、自分自身の変化だと思います。「みんなと一緒にもっと楽しめるアルバムを作りたい」って考えたときに、みんなの背中をもっと押してあげられるような応援歌アルバムにしようっていうコンセプトが最初にありました。

――なるほど。

May’n:『YELL!!』っていうタイトルを掲げたあとに、応援歌のイメージがある人に声をかけたいねっていう話になり、ファンキー加藤さんにお声掛けをさせていただいて。加藤さんの曲は、最初のデモから、もう誰がどう聴いても「ファンキー加藤」さんなんですよ。「わたしが歌ったらどうなるんだろう?」って思えるくらい。今までもたくさんチャレンジをさせてもらったけど、このアルバムではたくさんのアーティストさん、クリエイターの皆さんに、エールを送ってもらったなって思います。

――歌詞を受け取って、特にハッとさせられた曲もありますか?

May’n:「こういう楽曲が欲しいです」「今、こういうことを考えてます」みたいなところは、皆さんが汲んでくださってるんですけど、加藤さんから《全部大丈夫》っていう歌詞が届いたときに、「あっ、これだ」ってすごく思いました。いろんなことがあるけど、誰かが「大丈夫だよ」って言ってくれたら大丈夫な気になれる、魔法のような言葉だな、と思って。みんなも毎日いろんなことがあるけど、この曲を聴いたり、わたしのライブに来たときに「なんかいけそうな気がする。明日から頑張ろう」って明日へのパワーを感じてもらえたらすごく嬉しいなあって思って、ライブをしてきたので、それをまとめ上げてくれたのが“全部大丈夫”という曲だなって思います。

――リード曲“マイヒロイン”の歌詞についてはどうですか。

May’n:まず最初に、一番素直な歌をリード曲に入れたくて、自分で作る曲を歌いたいと考えていたときに、わたしの気持ちをわたし以上に素直に書いてくれるのはLiSAちゃんかもって思いました。すべてを知ってくれてるというか、LiSAちゃんはいっつも「May’n、ほんと頑張ってるよ」って言ってくれるんです。「全部大丈夫」と同じで、LiSAちゃんがそう言ってくれると、「わたし、まだ頑張れる」と思えます。LiSAちゃんがMay’nに対して思ってることを歌詞にしたいって言ってくれていたので、“マイヒロイン”のような歌詞を友達であるLiSAちゃんが書いてくれると、ほんとにエールをもらったなっていう思いで歌うことができますね。

――鷺巣詩郎さん作曲の “Lifetime with…”はMay’nさん自身の作詞ですけど、まさに今まで一緒に歩んできてくれた人への感謝の歌であり、これからも一緒に歩いていきますよっていう誓いの歌にもなってますね。

May’n:鷺巣さんと初めてご一緒したのはMay’nの1stアルバム『Styles』からなんですけど、もうずっと応援してくれています。なんていうんですかね、音楽の父、みたいな。いろんなことを見せてくださったし、経験させてくれた方なので、10年の感謝を込める歌だったら鷺巣さんと一緒に作りたいな、と思ってお願いしました。鷺巣さんは、わたしが中学生くらいのときから知ってくれてますが、「May’nは変わらないけど変わった」って言ってくれて。10年を振り返ると、わたし自身はすごく変わったなあって思ってたんですけど、LiSAちゃんも鷺巣さんと同じことを言ってくれました。「May’nが変わったんじゃなくて、変わらないMay’nがずっと歩んできたから、あの頃と違う今にたどり着いただけなんだよ」って。

 鷺巣さんも、「メロディが変わらないけど、どんどん変化していく曲を作ろうと思う」って言ってくれて、メロディ自体はずっと同じなんだけど、アレンジがどんどん豪華になって、家で作ってたデモがたくさんの人(楽器)が加わってホールで歌ってる人に変わっていくような、面白い曲になりました。これからも変わらずに音楽を続けていくメッセージも込められるし、変わらずに音楽続けていくからこそ変わっていくんだよねっていう希望の歌にもなりました。ずっと見てくださっていた鷺巣さんならではのメッセージの曲をくれたので、変わらないよさと変わっていくよさ、どちらも込めた曲にしたいなって思いながら歌詞を書きました。

――『YELL!!』の制作は、これまでのMay’nらしさ、これからのMay’nらしさを再認識するきっかけにもなったんじゃないですか。

May’n:10年経って、あの頃と違うのは、今は「とにかく楽しいことしたいな」って思っています。それって言葉にすると単純だし、逆に「今?」みたいな感じだと思いますが、はじめは頑張り過ぎてしまってたり、こだわり過ぎてしまったりして、もちろん楽しいんだけど、楽しいよりも大切なものがあるのかもしれないって思って、それ以外の大切なところを探し続けていたところがあったなって、振り返ると思ったりします。だけど今は、「とにかく楽しければなんでもいいじゃん」っていう。楽しいことをみんなでやっていきたいなっていうシンプルな答えにたどり着けたのは、一番大切なことでもあるし、一番の変化だなって思います。

――10年前、『メイン☆ストリート』のときに、「みんなのメインテーマを歌う」っていうテーマがあったじゃないですか。当時、これからお客さんと出会っていくタイミングだったと思うんですけど。

May’n:そうですね。

――そういう意味では、まだ見ぬお客さんもたくさんいたわけですよね。だから『メイン☆ストリート』と『YELL!!』の最大の違いって、お客さんがはっきり見えているかどうか、誰のメインテーマなのかがわかった状態で作れていることだと思うんですよ。

May’n:ああ~、確かに! ほんとにそれですね。

――「みんなのメインテーマを歌う」はひとつの概念で、それをやりたいという想いの強さはあった。それは『メイン☆ストリート』を聴くと、伝わってくるわけです。だけど、今はお客さんの姿が見えていて、みんなのメインテーマを歌いたいというモチベーションのもとに『YELL!!』はできている。「みんなとMay’nのメインテーマ」が歌われてるのが『YELL!!』なんじゃないかな、と。

May’n:そういうアルバムを作らなきゃいけない、作りたいって思いました。だからこそ思い入れもあるし、完成した直後のやり切った感もあったし、「今のわたしのライブに来てくれてる部員のみんなには絶対届く!」っていう自信もあります。

――ちょっとの違いなんだけど、実は大きく違うんですよね。「みんなのメインテーマ」はみんなが楽しいじゃないですか。でも。「みんなとMay’nのメインテーマ」は、みんなとMay’nが楽しい。で、今はとにかく楽しいことをやりたいっていう自分を発見した。『YELL!!』には、そこから生まれた曲たちが集まってるなあって思います。

May’n:そうですね。メインテーマっていう言葉が、どんどん分厚くなってきたなって思います。

――10年の活動を経て、一緒にメインテーマを歌う関係を築いてこられたわけですね。

May’n:確かに! みんなのメインテーマになるような歌を歌いたいってスタートしたけど、それが「わたしたちのメインテーマを歌いたい」に変化したのは、まさに「それだ!」って思います。

――10年前は、そこに「わたし」が入ってなかったんじゃないですか。

May’n:入ってないですね。入ってなかったです。

――自分が楽しいかどうかは二の次であって。もちろん、パフォーマンスのクオリティを上げることに関しては、すごく頑張ってきたと思うんですけど。

May’n:はい。ほんとに「みんなに」っていう思いのほうが全然強かったですね。だからこそ、今のほうがより楽しいって思えるんだと思います。

――この取材の時点ではツアー真っ最中ですけど、まさに全国を回ってますよね。

May’n:もう、とにかく毎回楽しいんですよ。常に、わたしにとってサプライズがあるというか。ほんとに、友達と遊んでる感覚は、より今回のツアーは強いですね。仲よくなりたいなって思って、自分からちょっとだけ勇気を出して「仲よくなりませんか」って言って、そうしたら「気が合うな」って思って、「じゃあ、もっと遊びませんか」って言って、遊んだらもっと仲よくなって、「やっぱこの人と友達になれた」みたいな。そういうやり取りが、一回のライブの始まりから終わりまである感じです。

――『YELL!!』をリリースすると、その仲よし感はさらに深まるでしょうね。

May’n:そうなんですよ。ツアーでも、各地で「これを出したあとのライブが楽しみでしょうがない」って、みんなに言ってて。絶対に気に入ってくれると思うから、「絶対聴いて」って。それだけ強い言葉でCDを届けさせてもらえるのはすごく幸せなことだと思います。それも、さっき言ってくれたように、「わたしたちの歌」って思えてるからこそ、「絶対みんなも気に入ってくれるって思う。だって、わたしめっちゃ気に入ってるもん」っていう言葉で伝えることができるんだろうなって思います。

――『メイン☆ストリート』から10年で、『YELL!!』が完成しました。これからの10年を過ごしていくにあたって、ライブに集まってくれる仲間たちに届けたい言葉はなんですか。

May’n:う~~ん……全部大丈夫(笑)。10年間でいろんなことがあったし、これからの10年もきっといろんなことがあると思うけど、そんな中で「絶対大丈夫だよ」ってみんなに思ってもらえるような自分でいたいし、自分自身も信じられる自分でいたいし、そう思える自分でいるための努力を、ずっとずっと続けていきたいなって思います。

取材・文=清水大輔 撮影=GENKI(IIZUMI OFFICE)
スタイリング=伊藤彩 ヘアメイク=サカノマリエ
衣装=AMAIL(アマイル) http://www.amail.tokyo/sp/ 03-6450-6547