「掃除好きの妖精さんなんていないんやから!」芸人妻・野々村友紀子が訴えかける、“夫が知りもしない家事”とは?

暮らし

2019/10/8

 家事とはなにか。そう聞かれれば、大多数の人は「炊事・掃除・洗濯・育児」と答えるだろう。もちろん、それは間違いではない。ただし、これはあくまでも大雑把にカテゴライズしたもの。掃除ひとつとっても、トイレ、浴室、リビング、寝室ではそれぞれにやるべきことが異なる。たとえば、トイレであれば、便器を洗う、便座やフタを拭く、壁や床を磨く、トイレマットやカバーを交換する、トイレットペーパーを補充する、トイレ用洗剤を補充する……などなど。こういった細かな作業を把握し、完璧にこなしてこそ、初めて「家事を理解している」と言えるのだ。

 ところが、世の男性陣はそれらをあまりにも理解していない! そんな現状に怒りを覚えているのが、2丁拳銃・川谷修士さんの妻である野々村友紀子さんだ。現在、放送作家として活動している野々村さんは、働く主婦である。その日常がどれほど忙しいものかは想像するに難くない。

『夫が知らない家事リスト』(野々村友紀子/双葉社)

 そんな野々村さんが、このたび、家事についてまとめた一冊を上梓した。それが『夫が知らない家事リスト』(双葉社)だ。本書はそのタイトル通り、夫が知らない、理解をしていない家事について細かく分類し、リスト化したもの。総数はなんと211項目にものぼる! 家事を「炊事・掃除・洗濯・育児」の4項目として捉えていた人からすれば、「こんなにあるの!?」と驚くに違いないだろう。

 なぜ野々村さんは本書を執筆したのか。家事をリスト化することの意味とは。その想いについて伺った。

■掃除好きの妖精さんなんて、いない!

――日々の家事をここまで分解してリスト化するって、相当大変だったのではないかと思います。それでもこうしてまとめて、一冊の書籍にしようと思った理由はなんだったんですか?

野々村友紀子(以下、野々村):私は専業ではなく、働く主婦なんですね。でも、どんなに忙しかったとしても、「主婦たるもの、家事をたくさんこなして当然だ」と思い込んでいたんです。どうせ私のほうがうまいし、早いし。ただ、だんだんとしんどくなってきて、「これ、配分おかしいやろ……」と思ったんですよ。そもそも家事って、漠然と「炊事・掃除・洗濯・育児」の4つにわけられていますけど、もっと細かいことが多いし、「ここで一度すべて書き出したろ!」と思って。そしたら、予想をはるかに上回る量のものが出てきて、自分でもびっくりしましたよ。

――そのリストが本書の前身となったんですよね。それを実際、パートナーである修士さんにも見せたそうですが、そのときの反応は?

野々村:「離婚届持ってこられるよりも怖かった」って言ってましたよ(笑)。でも、それで夫も変わってくれたんです。それまでは「私ばっかりしんどいねんけど!」って怒りをぶつけるだけで、日々の家事を可視化してなかったんですよ。だから彼もどうしたらいいのかわからない。家事の全体像を把握できていないから、それでも想像がつく洗い物やゴミ捨ての回数を増やしたりはしてくれたんです。

 ただ、それだと私が背負っている家事の数は全然減らなくて、やっぱりイライラが再発してしまうだけで。彼は彼でどうしたらいいのかわからないから、堂々巡りのような状態。そこでリスト化したことによって、「家事ってこんなにあるんだ!」と気づいたみたいです。

――若干、耳が痛いお話なんですが、どうして男性側はそこまで家事を把握できていないんでしょうか?

野々村:見えていない、気がつかない。これが原因だと思いますよ。古くなった歯ブラシがいつの間にか交換されていても、わざわざ「妻がやってくれたんだ!」とは思わないでしょう? どんなに散らかしたとしても、毎日キレイに掃除されているし、それが普通の状態だと思っている。

 でもね、それは当たり前のことじゃないんですよ。誰かがやってくれてるの! 掃除好きの妖精さんなんかいない! 私たち主婦がやってるんですよ!

――お、仰るとおりです……。

野々村:忙しく働く男性にとって、おうちは安らげる場所です。それは理解できる。でも、女性からすると、おうちは安らげる場所であると同時に、働く場所でもあるんです。その認識の違いも大いに関係していると思います。もちろん、夫が疲れてるのはわかっているので、なるべく休ませてあげたいなとは思いますよ。ただ、こっちが休む間もなくせかせか家事をこなしている横で、ソファーに寝そべってスマホばっかりいじられると、「おい、私いまやっとんねん!」ってイライラしますよね(笑)。本当、ちょっと意識を変えて手伝ってくれれば、嫁の負担は減るし、機嫌だって良くなるのに。

■イクメンぶる前に、本当の育児をやってくれ

――個人的に、「これを手伝ってくれると楽になるのに」という家事はありますか?

野々村:うーん、なんぼでもありますけど、ひとつは「麦茶を作る」。知ってます? 麦茶って泉から湧いてくるもんじゃないんですよ。なくなったら補充しなきゃいけないの。特に子どもがいる家庭だと、あっという間に減っていきますからね。

 あとは、「傘の片付け」。びしょ濡れの状態ではたためないから、開いたままで乾かしておくんです。でも、その間にもこっちは晩ごはん作ったり、子どものお風呂を手伝ったりとやることはたくさんあって。そこに手ぶらの夫が帰ってきて、開きっぱなしの傘を素通りして入ってくるわけでしょう。「気づいたらたたまんかい!」って思いますよね。

 言い出したらきりがないんですけど、「洗面台の掃除」にも気をつけてもらいたい。鏡に飛んだ歯磨き粉は拭いて、洗面台がびしょびしょだったらタオルで拭く。その場でササッと拭けば一瞬ですよ。それなのに、やろうとしないの。男の人って、水見えてへんの?

――いや、見えてると思います……。

野々村:でしょう? そんならなんでやらんねん! 歯磨き粉も水も放置しておくと、後で掃除するの大変なんですよ。歯磨き粉はカピカピになるし、水だって水垢の原因ですからね。乾けばキレイでしょ、じゃないねん! その場でできることはやる。そして、自分で汚したものは見て見ぬ振りをしない。それを心がけるだけで、だいぶ変わると思いますよ。

 育児に関することもそう! 子どもが生まれると家事って爆発的に増えるんですよ。それこそ、男性からすると見落としがちな家事かもしれない。たとえば、学校に提出する書類にハンコを押す、子どものアレルギーを報告する、持ち物全部に名前を書く。えんぴつやまち針、絵の具の一本一本にもすべて名前を書くんですよ? 知ってますか? それらがなぜかお母さんの仕事になってますけど、ふたりの子どもなんだから、ふたりでやるべきなんですよ。

 公園で子どもを肩車してあげて、近所に見せびらかしたところで、そんなの家事じゃないですからね? イクメンでござい、ドヤッ、じゃないですよ(笑)。

■妻側には、夫がする家事を見守る意識が必要

――そうですよね。ただ、男性側としては、「家事をしようとすると、怒られる」という声もあるかと。「そのやり方じゃダメ!」って否定されてしまって、なかなか手が出しづらくなるというか……。

野々村:その気持ちはわかります。どうしても慣れている主婦がやったほうが早いし、むしろ手伝ってくれたことで逆に仕事が増える……ってパターンもあるんです。でも、私たちもそこはグッと堪えて、ある程度は夫に任せないといけない。いちいち指摘してモチベーションを下げてしまったり、やろうとしていることを取り上げてしまったりしていては、結局、妻のしんどさは変わらないので。夫にも積極的に家事に参加してもらいたいと思うのであれば、妻も歩み寄る必要がありますよね。

――男性側にもそれぞれのやり方がありますからね。そこは否定せずに見守ってくれるとうれしいです。

野々村:そもそも、私も結婚した当初は家事が苦手だったんです。ご飯の炊き方すら知らなくて、夫に教えてもらったくらいで。水の量なんて、指で量るもんやと思ってましたもん。「計量カップ? なんやそれ?」言うて(笑)。そこから努力して、自分なりのやり方を確立していまに至るんです。

――そんな野々村さんが、こうして一冊の本を執筆できるくらい家事をマスターできたのはどうしてだと思いますか?

野々村:それは、愛情ですよ。家事には愛情しかない。私だって面倒だなと思うことはあるし、もともと几帳面なタイプではないので、もしも独身だったら毎日掃除なんてしないですよ。でも、夫や子どもたちのことを考えると、なるべくキレイなおうちをキープしていたいし、美味しいものも食べさせてあげたい。不便さを感じずに、居心地のいい空間にしてあげたい。その根底にあるのは、愛情なんです。

――それを知ると、夫婦関係も円満になりそうですね。

野々村:そう! 「うちの嫁、いつも掃除してるけどキレイ好きなんだなぁ」じゃないねん! おうちをキレイにしてるのは、夫のためなんですから。なのに、「そこまでやらんでもいいのに」とか言われると、腹立つんですよ。あんたのために頑張っとんねん、って(笑)。

 だから、妻が家事を頑張っている姿を見たら、「自分のためにしてくれているんだ」と認識して、さらに「一緒にやろう」と動いてもらいたい。すると、妻も助かるし、なによりうれしいですよね。

 家事をリスト化して共有したことで、うちは揉め事がなくなりました。喧嘩の原因って、家事をひとりで負担することへのストレスだったんですよ。それが爆発して、ぶつけてしまう。だから、いまはとても夫婦円満です。それを見てる子どもたちにとってもいい影響がありますよね。夫婦円満であれば、家庭も円満。家族みんなの幸せは、お母さんがニコニコしているかどうかに左右されるんですから。

 もしも、いま夫婦関係でギクシャクしている人は、まず家事の分担について見直してもらいたいと思います。いつの間にか「妻が家事をする」のが当たり前になってしまっている可能性がある。でも、決してそうではなくて、お互いに思いやることが大切。そのためにも、一度、家事をリスト化することをオススメしたいですね。

――ぼく自身も含め、周囲の男性陣と本書を読み込んでみようと思います。

野々村:ほんまやで! なんでもやってくれる妖精さんなんていないんやから!

取材・文=五十嵐 大 写真=内海裕之