スポーツとしてのライフルの魅力とは? 日本ライフル射撃協会の会長に聞く、「射撃のロマン」

マンガ・アニメ

2019/10/27

『ライフル・イズ・ビューティフル』 毎週日曜23:00~ TOKYO MXほかにて放送中
(C)サルミアッキ/集英社・千鳥高校射撃部

『ライフル・イズ・ビューティフル』著:サルミアッキ 集英社「となりのヤングジャンプ」 「ヤンジャン!」 「少年ジャンプ+」にて連載中 (C)サルミアッキ・集英社

最新5巻発売中
著者:サルミアッキ/発売元:集英社/価格:600円(税抜)
連載:https://tonarinoyj.jp/episode/13932016480028985966

 ビームライフル競技に打ち込む女子高生たちの青春を描くアニメ『ライフル・イズ・ビューティフル』の放送が始まった。一見とっつきにくそうに見えるビームライフル競技だが、女子高生のまったりとした日常とともに描かれると、なじみ深いものに見えてくる。本作のメインキャスト4人(Machico・熊田茜音・南早紀・八巻アンナ)も、アイドルユニット「ライフリング4」を結成、公益社団法人日本ライフル射撃協会公認の宣伝大使に就任するという展開も行われており、ビームライフル競技の周知へと協力しているところだ。

 そこで、ライフル射撃競技の普及と振興を担っている、公益社団法人日本ライフル射撃協会の松丸喜一郎会長に、『ライフル・イズ・ビューティフル』の感想やアニメ化の喜びなどを伺った。

(『ライフル・イズ・ビューティフル』は)ビームライフルやライフル射撃競技を詳しく、正確に描写している

――ビームライフル競技をモチーフにした『ライフル・イズ・ビューティフル』がアニメ化されました。漫画やアニメ化といった展開を、会長はどのように受け止めていらっしゃいますか。

松丸:大変ありがたいことだと思いました。ライフル射撃競技はまだ一般の方々に幅広くは知られていない競技です。選手たちも自衛隊の隊員や警察官だったのですが、こういう競技があるんだ、ということを広める媒体として、漫画とかアニメはとても大きな力になりますので、協会としても楽しみにしています。

――原作『ライフル・イズ・ビューティフル』をお読みになったり、キャストの方々とお会いになる(6月1日、アニメ公認のアイドルユニット「ライフリング4」が日本ライフル射撃協会の宣伝大使に就任)ことで、作品に触れられる機会も多くなったかと思われます。作品の印象はいかがですか?

松丸:ライフル射撃競技をとてもよく調べられているな、と感心しました。ビームライフルやライフル射撃競技を詳しく、正確に描写されているんです。原作ではこれからビームライフルからエアライフルに競技のフィールドを移そうとしていますが、このエアライフルには所持資格が必要でいろいろなハードルがある。そういった難しい部分を描写していただけることも、こちらとしてはありがたいと思っております。実際、ビームライフル競技に関わる選手のご両親が、「この『ライフル・イズ・ビューティフル』で子どもたちがやっている競技のことがよくわかった」とおっしゃっているケースもあると聞きました。

――作品に登場する小倉ひかりや渋沢泉水たちは、小学生時代からビームライフルの経験がある登場人物です。だいたい、何歳くらいから競技をはじめる方が多いのでしょうか。

松丸:日本ライフル射撃協会の会員として登録している方の中で、一番若い子は8歳になります。小学2~3年生ですね。最高齢は91歳。ビームライフル競技は体力をそれほど必要とはしませんが、銃器そのものは重量があるので、年少や高齢の方がそのまま持つと事故が起きかねません。そこで、銃を台に乗せて撃ったり、銃を吊るして撃つといった、いろいろなルールを作って、プロフェッショナルな選手と競い合えるような環境を提案しています。

――現在のライフル射撃競技の人口はどれくらいなのでしょうか。

松丸:日本で会員として登録されている人数は約7300人です。ただし、会員にならなくてもビームライフル競技はできますし、学校の部活動などで競技をしていらっしゃる方もいます。射撃部がある高校は110校くらい。そう考えると、おそらく潜在的にはその倍くらいの競技人口と言えるかと思います。なお、高校生のライフル射撃部の中で協会に登録している会員が2700人、小中学生の会員は330人です。5年前から小中学生大会を実施しているのですが、年々参加者が増えています。おそらく「ものを撃つ」という感覚は、人間本来の本能に近いものがあって、それが多くの人を惹きつけるのだと思っています。

射撃は、男性にも女性にも開かれたスポーツと言える

――ライフル射撃にはビームライフル射撃、ライフル射撃、クレー射撃があります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

松丸:ビームライフルは資格や免許などは必要なく、誰でも始めることができます。一方、ライフル射撃に使用するエアライフルは所持するために「銃砲所持許可」の申請が必要です。14歳からエアライフルを持つことができるのですが、エアライフルは人を傷つけてしまうこともあるので、自分をしっかりと律することができる倫理観も必要です。その上で、日本ライフル射撃協会の会員となり、講習会を受け、日本ライフル射撃協会や日本スポーツ協会からの推薦が必要です。ハードルが高いのは事実でして、この状況を少しでも改善できるように、議連を立ち上げるなどさまざまな働きかけをしているところです。やはり、ビームライフルからライフル競技を始めていただくことはこちらもありがたいことだし、射撃競技を楽しむという意味では十分に意味のあることなのですが、たとえば五輪種目の空気銃(エアライフル)などに挑んでいただいて、強い選手になって世界で活躍していただきたいという思いがあります。

――日本の選手は世界のライフル射撃競技でどれくらい活躍されているんでしょうか。

松丸:五輪では日本は射撃競技で6つのメダルを取っていて、ひとつはライフル射撃、もうひとつはクレー射撃です。残りの4つはピストル競技から出ているんです。エアピストルは500名しか持てないという法律があり、装薬拳銃、いわゆる火薬の銃弾を使うピストルは50人しか持てない。その少ない競技人口にもかかわらず、4つのメダルを取るというのは、日本人にとって驚異的に向いているということだと思います。どちらかというとピストルのほうが熟練度が必要な競技なので、これは驚異的な実績だととらえています。

――『ライフル・イズ・ビューティフル』は、主に女の子によるビームライフル競技を描いていますが、女性、男性によってルールの差はあるのでしょうか?

松丸:この競技は、筋力や体力を問わないスポーツです。銃をしっかりと定めて精神統一をして狙って撃つというものなので、男女の選手が同じ土俵で競い合うことができると考えています。IOC(国際オリンピック委員会)はこれまで女性が40発、男性が60発(10メートル・エアライフル)という弾数で競うルールを定めていました。しかし現在は女性も60発にルールが改正されました。ゆくゆくは男女で競い合うことができるのではないかと考えています。射撃は、男性にも女性にも開かれたスポーツと言えるでしょう。

やっぱり、銃にはロマンがある

――『ライフル・イズ・ビューティフル』では、千鳥高校に通う女子高生たちがビームライフルを上達するために、部活動を励む姿が描かれますが、実際にライフル射撃を上達するために欠かせないトレーニングとはどんなことでしょうか。

松丸:ライフル競技には精神力が重要なのですが、その精神力を鍛えることは、すぐには難しいことですよね。選手の多くは、日常から体幹を鍛える練習を積んでいるようです。走り込みをして体力、持久力を付けるのも大切です。基礎的なトレーニングが重要なのは、どんなスポーツにも共通だと思います。

――優れたライフル選手とは、どんなところが抜きんでていると思いますか?

松丸:射撃で一番大切なのは精神力になります。精神力の中でもとりわけ重要なものは、自分をコントロールする力ですね。「銃(の動き)を止める」という技術力も必要ですが、試合では大勢の観客が見守り、ライバルの選手と競い合うことになるわけです。そういうときに精神力が問われます。普段、慣れている射撃場で練習時には高得点を出せる人であっても、試合になると環境がまったく変わるんです。国によっては銅鑼を叩いて応援する人もいますからね。それでも平常心を乱さない、ゾーンに入り込める精神力のある選手や、最後の最後まであきらめない粘っこい性格の選手が強いと思いますね。銃が止まるまで何回も構え直せる選手は優れた成績を上げるだろうと考えています。

――会長がライフル競技と関わり始めたきっかけをお聞かせください。

松丸:私が学生のころは高校に射撃部がなかったので、大学から射撃を始めました。サッカーや野球では、年少のころから経験を積んでいる学生がいて、大学のころはできあがっている選手も多い。そういうスポーツでは、大学から始めるとすでに差がついてしまっているケースがあるわけですが、射撃はみんな初心者からスタートする。そこが私にとってはすごく取り組みやすい競技だったんです。その後、高校の射撃部の監督になって、関東大会を優勝に導いたことができて、協会と関わるようになりました。

――射撃部の監督も務められていた会長が、新入部員勧誘をするときに「ライフル射撃の魅力」を新入生に伝えるとしたら、どんなセールスポイントを挙げますか?

松丸:やっぱり、銃にはロマンがありますよね。「物に当てる」という行為は、人間の本能ですから。あと、高校や大学から始めたとしても、ほとんどの新入生が初心者なので、同じスタートラインから始められるスポーツなんだよ、と伝えたいですね。もっと多くの方に、射撃の面白さを知っていただきたいです。

――『ライフル・イズ・ビューティフル』がアニメ化されて、会長が楽しみにしていることはどんなところでしょうか。

松丸:私はこのアニメが放送されたあとの、多くの方の反響をぜひ聞いてみたい、見てみたい。まだライフル射撃競技は限られた方で楽しまれているスポーツなので、今回アニメで取り上げられることでメジャーデビューをしたような嬉しさがあります。ネガティブな反響であっても、ポジティブな反響であっても、皆さんからの反応を楽しみにしています。

取材・文=志田英邦

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