8周年の『アイドルマスター シンデレラガールズ』、それぞれの想い④(渋谷凛編):福原綾香インタビュー

マンガ・アニメ

2019/11/7

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

『アイドルマスター シンデレラガールズ』のプロジェクトが始動したのは、2011年。今年でまる8年を迎える『シンデレラガールズ』は現在、東名阪の3都市で、それぞれ「Comical Pops!」「Funky Dancing!」「Growing Rock!」と異なるテーマを掲げたライブツアーを行っている。9月に開催された幕張公演では、ステージ上でパフォーマンスを繰り広げるアイドル(=キャスト)と、彼女たちを見守り、支え、盛り上げるプロデューサー(=ファン)が気持ちを通い合わせる光景を目撃し、改めて『シンデレラガールズ』のライブや楽曲が生み出す引力を実感した。今回も、7周年を機に実現した昨年の特集に続いて、自身が演じるアイドルとの信頼関係や、ライブへの想いを、3都市のライブのいずれかに出演するキャストに、熱く語ってもらった。第4回は、幕張・名古屋・大阪の3公演に出演する、渋谷凛役・福原綾香のインタビューをお届けする。

絶対に損はさせたくないし、来てよかったって思わせないといけない、という気持ちがある

――幕張公演の2日目を観させてもらったんですけど、とても楽しくて充実感のあるステージでした。福原さんにとっては、どんなライブでしたか。

福原:幕張公演のタイトルが『Comical Pops!』で、ちょっとお笑いやミニコントもある愉快な感じのステージ構成だったんですけれども、私が歌った曲も、今まで凛としては歌ってこなかった明るくて楽しい、かわいらしいさや元気のある曲が多くて。凛の新しい一面というか、まだスポットが当たってなかった彼女のコミカルな部分、クールに見えるけれども心はすごく開いていて、サービス精神があるところを発揮する時間だったと思います。

――今までとは違う一面を見せるのは、チャレンジングな体験だったんでしょうか。

福原:そうですね。挑戦という意味では、いろいろなことに挑戦したステージでしたね。

――幕張公演には27人が出演していて、これまでずっと一緒にステージに出てきた大橋彩香さんや原紗友里さんが隣にいない中で、福原さんが中心に立ってライブを進めていた印象があって。幕張公演における自分の役割を、どう位置づけてたんですか。

福原:「センターだね」とは言われてたんですけど、シンデレラガールズには明確なセンターはいなくて、「あなたの瞳の真ん中に映る人がセンターですよ」という気持ちを持っていて。その中で、大橋さんや原さんや私は場数を踏んできているので、MCのときに皆さんの空気を感じ取ってつないでいく役割は大事かな、と思っていました。今、プロデューサーさんがどんな状態にあるのか――アップテンポな曲が続いたからちょっと休みましょう、とか、今すごく感動してるだろうからちょっとトーンを落としてゆっくりMCを進めよう、とか。プロデューサーさんと過ごしてきた時間が多いからこそ、MCのときに、プロデューサーさんとコミュニケーションが取りやすいのも自分たちだと思っているので、その部分は課せられた役割としてあったと思います。みんなを活かす感じに映っていたら成功だな、と思ってます。

――ライブに初めて出る人、まだステージに立つ経験が多くはない人を引き立てようとする感じは伝わってきました。彼女たちの精神的な後押しをしてあげる意識もあったんですか。

福原:そのステージが初だったのが、天野聡美ちゃんと久川姉妹のふたり(長江里加/立花日菜)だったんですけど、みんなすごい練習量をこなしていて。リハのあとも粘って、「もう一回やらせてください」ってやっていたので、「もうこの子たちはできるだろう」と思ってました。天野聡美ちゃんは事務所の後輩でもあるので、本人の希望で「もう一回やらせてください」って練習しているときに、モニターで見てたんですけど、それが完璧だったので、「今、この完璧さを出しちゃっていいのか!?」って思って(笑)、山本希望さんと一緒に「めっちゃよかったよ」って言葉をかけたりしてました。久川姉妹も、彼女たちはすごく強い子だし、ライブに出始めた頃の自分より度胸もあるので、立派だなって思います。みんな年下ですけど、私はすごくリスペクトしてます。

――シンデレラガールズには明確なリーダーやセンターはいないけど、皆さんの話を聞いていると、自然とフォローしあう空気は確実にありますよね。

福原:そうですね。今までもそういう感じでした。みんなでカバーし合って、補い合ってきた歴史があるので、「フォローしてあげよう!」と意識しなくても、自然と新しく入ってきた子たちを気にかけたり、ナチュラルにできていると思います。

――『アイドルマスター シンデレラガールズ』が始まって8年の間に、ものすごく成長を遂げてきたじゃないですか。今、プロジェクト全体について福原さんはどんな印象を持っていますか。

福原:『シンデレラガールズ』っていうお姫さまの名前が入ったタイトルなのに、全力でおふざけをするときがあって(笑)、本当に振り幅が広いコンテンツだな、と思います。最初は、面白い要素がほんのちょっと垣間見えるくらいだったんですけど、ライブに出るメンバーが増えるにしたがって、バラエティ要素も膨らんできて。でも、カッコよさやかわいい部分も決して薄まることがないので、王道の部分とおふざけの部分が、どっちもかなり味濃いめになってきたと思います(笑)。

――(笑)バラエティ要素はシンデレラガールズのライブを支える大きな要素だと思うんですけど、人に笑ってもらうことは難しい、とも言いますよね。

福原:難しいですね。だから、おふざけパートにもみんな本当にガチなんですよね。幕張公演だと、三宅麻理恵さんの「チョベリグってなに?」って言われたあとの、間(ま)の使い方とか(笑)。ひとつひとつにかける執念とエネルギーがみんなものすごいので、結果として人の心に響くものになるんだろうな、と思います。面白く見せたいっていう強い気持ちがみんなに感じられるんですよ。気合いと根性と、お互いにダメ出ししたり、アドバイスをし合って磨き合ってきた感じです。

――とはいえ、最初からすべて思い通りにはできなかった部分もあると思うんですけど、頑張って壁を突き抜けるから面白いところまで到達できたのだとして、そういうときに支えてくれたものは何ですか。

福原:私の場合は、やっぱりライブに足を運んでくれる熱量、ずっと好きでいてくれるパワーですね。プロデューサーさんがせっかく来てくれたからにはっていう気持ちが、すごく大きいです。絶対に損はさせたくないし、来てよかったって思わせないといけない、という気持ちがあるので。なので、「ちょっと上手くいかないかも?」って思ったときでも、「いや、そんな弱気なことは言っちゃいけない」って思う、心の支えになってます。それは、いつも心に留めていますね。

(渋谷凛は)強烈な魅力を持った子だと最初から思っていたけど、やっぱり最強だなっていつも思う

――渋谷凛と出会って、長い時間が経ちましたよね。出会ったときの印象と、ここまで7、8年一緒に過ごしてきて、印象が変わった部分について教えてください。

福原:渋谷凛は、王道クールっぽい見た目とセリフの感じが皆さんの印象にあると思うんですけど、ど真ん中のクールかと思いきや、8年一緒に歩んでみると、意外と人のことが好きだし、人のことをよく見ているし、サービス精神もあるし、たまに大人をからかうところもあったりするんですよ。印象的だったのは、凛が水着姿で浮いている絵のカードで、プロデューサーを波打ち際でちょっとからかって「いいよ。波を越えてきて」っていうセリフがあるんですけど、すっごい大人っぽくて、でも物腰は少女で、そこに絶妙な魅力を感じたんですね。大人っぽくて、まわりを見ていて、でも可能な範囲でわがままを言う、大人な部分と少女な部分のバランスが黄金比率みたいな子だな、と徐々に理解してきました。これからも、変わらず絶妙なバランスで演じさせていただきたいな、と思ってます。

――そのバランス、もはやアイドルとして最強の属性を備えた人物じゃないですか(笑)。

福原:そうなんですよね(笑)。しかも、絶妙なバランスで成立してるので。ほんと年月を重ねていくにしたがって、恐ろしい子だなあ、と思います(笑)。強烈な魅力を持った子だと最初から思っていたけど、やっぱり最強だなっていつも思います。森久保乃々ちゃんとか、インディヴィジュアルズに姉さん的な感じでちょろっといいことを言って去る、みたいな描写もあるんですけど、最近はお姉さん属性も身につけてきてます(笑)。まだ魅力的になるのか、と。

――「渋谷凛はこういう子なんだ」って思っても、どんどんそのイメージが更新されていく。

福原:そうですね。しかもそれが、「あっ、そうなの?」ってガッカリするんじゃなくて、「こう来たか」っていう感じなのが、より嬉しいです。

――それだけ強烈な魅力を持った人物を担当していると、福原さん自身も自分のこういうところが変わった、成長した、新しい一面が見つかった、と感じることがあるんじゃないですか。

福原:私自身は、一本気と真面目だけが取り柄みたいな感じなので、器用なタイプではないと思ってるんですけど、だからこそ自分がやらなければいけないものを選んで、不得手なものは得意な人に任せて、代わりに自分はこれをやる、という役割分担をして、個々を生かすことを近年意識するようになってきました。なんでもかんでも背負わなくていいんだなって気づいたんですけど、それは『シンデレラガールズ』でいろいろなライブをやらせていただいたからだと思います。

――一本気であると自覚をしているということは、抱え込みがちな時期もあった、と。

福原:そういう時期もありました。でも、それで得することはないので、逆に自分の気質を活かしてパフォーマンスを突き詰めたり、その他のバラエティ的なものはアドバイスをもらって、「ありがとう」って言ってそこでまた成立させて。いろんな人の力を得てステージに立っていても、全然恥ずかしいことじゃないんだな、と思うんですよ。そんな時期もあったから、きっと今があるんだと思います。

――それこそ渋谷凛は、わりとなんでもスマートにこなしそうなイメージがあるじゃないですか。そこに近づかないといけない、という意識もあったんじゃないですか。

福原:確かに、それはあるかもですね。アイドルたちが洗練されていて魅力的で、それに対して自分たちはどうしても人間なので、完璧にそこに当てはまるようにするのは無理も生じてくる瞬間もあって。それをちゃんと受け入れるというか。

――結果的に『シンデレラガールズ』にはたくさんのキャストがいて、それぞれの個性もあって補完し合えるから、無理しなくてもいい、という境地に至れた部分もあるんでしょうか。

福原:そうですね。みんなで補い合って。自然とリズムをつかんでる感じです。自然とバトンを渡してる感じは、ものすごく居心地がいいですね。なんだろう、部活みたいだけどみんな仲よしで、上も下もそんなに気にしなくていい感じがあって。すごく意識の高いサークルというか(笑)。

――(笑)一方で、自分が演じてる子が一番かわいい、一番輝かせたいっていう気持ちもあると思うんですけど、競争意識のようなものは持ってるんですか。

福原:なんか、「やるじゃん」みたいな感じ(笑)。「負けないから」というより、相手の出してきたものを否定せず、むしろ肯定して「いいじゃ~ん。負けないよ」みたいな感じです。特に5thライブのツアーのときにその流れを感じたんですけど、「前回公演の人たちには負けないよ、最高にしようね」っていう気持ちで、各地域のライブをつないでいって。それはピリピリした感じではなくて、背筋が伸びるような緊張感と、リスペクトし合う感じがベースとしてあるんですね。すごくカラッとしてるというか、スポーツ漫画のような(笑)、爽やかな意識はお互いに持ってると思います。

――なるほど。ちなみに、おそらく一番多くステージに一緒に立っているであろう大橋さんや原さんって、福原さんにとってはどういう存在なんですか。

福原:すごく心強いというか、一緒にいるといっぱい酸素が吸えるというか(笑)。3人で熱い話をすることはあんまりないんですけど、それでもやっぱり同じことを考えていたり、自然と息が合ったり。多くを語らなくてもお互いが考えていることを分かち合える存在です。自然と出会うべくして出会ってきた人たちというか、バランスのいい3人が集まっているので、わりと運命的なつながりは感じますね。久々に会っても、久々感がないんですよね。この関係がずっと続いていくんだろうなって自然と思えるふたりです。

――渋谷凛の話に戻るんですけど、演じている福原さんだけが知っている渋谷凛のここがかわいい、個々が素敵、と思う一面って、どういうところですか。

福原:なんだろう、やっぱりなんだかんだイタズラ好きとなところですかね。人をおちょくるとか、上から目線で意地悪をするわけじゃなくて、こう、クイクイって弄るのがすごく好きなタイプに見えるんですけど、私は彼女のそういう部分が好きです。15歳であれだけプロデューサーとかを弄るのも、精神が相当成熟してないとできないことだと思うので(笑)。

――(笑)人間力が高い。

福原:人間力がすっごく高いんです。だから、歳相応のまっすぐさを歌った曲は“ガールズ・イン・ザ・フロンティア”や“Never say never”、“Anemone Star”とかも大好きな曲なんですけど、もうちょっと翻弄するような曲も歌ってほしいなあ、と思ったりします。プロデューサーの皆さんは「凛ちゃんがそんな大人に!?」ってなるかもしれないですけど、彼女の精神年齢は相当高いと思うので。人をちょっと惑わせたりすることも全然できる子だと思います。女性人気もすごく高くて、女性プロデューサーさんからのお手紙もたくさんいただくんですけど、女性プロデューサーの方もグッと心をつかまれるような曲が歌えたらいいですね。やっぱりあのビジュアルには、女の子は憧れずにはいられないと思います。細身でロングヘアーで、美人系で。同性からも憧れられるというか、近くにいたら仲良くできそうだな、年上の先輩にいたら憧れちゃうな、という想像がしやすい子なんだと思います。

――福原さんの中で、個人的に思い入れが強い楽曲は何ですか?

福原:『SS3A』で披露した、“S(mile)ING!”の凛カバーは、すごく気持ちも入ったし、いい感じでできた印象があります。カバー曲や、誰かひとりが欠けてるときのユニット曲とか、間奏のところで何かを言うとしたら、「〇〇ちゃんに届け」が多いんですよ。でも、凛が“S(mile)ING!”を歌うときに、果たして「卯月に届けって思って歌うかなあ」と思ったんですね。凛は、たぶん目の前にいる人に歌を届けようとする子なので。だから、曲中のセリフで「私にも見えた気がするよ、卯月が見た景色」って言わせていただいて。そのとき、私が何も言っていないのに、そのセリフを言ったときだけ、青かった照明がパッとピンクになって。自分が出したいものと、スタッフさんが汲んでくれてるものがきれいに一致して、パズルがカチッとハマった感じがあったので。そういった意味ではすごく意味のあるステージでした。

――これから開催される名古屋、大阪公演では、『Comical Pops!』と異なるテーマのステージになるわけですけど、どんなライブにしたいと考えてますか。

福原:11月の名古屋は『Funky Dancing!』で、もちろん私たちも踊るんですけど、プロデューサーさんたちも踊りたくなっちゃうような、「俺も『シンデレラガールズ』だ!」くらいの気持ちになってしまうようなライブにできたらいいですね(笑)。大阪の『Growing Rock!』は、凛とロックってすごく親和性が高いと思うので、『Comical Pops!』では新たな一面にスポットを当てたんですけど、今度はより自分にフィットした魅力を出しながら、生き生きしてる凛をお届けできたら、と思います。

――ではラスト、ここまで一緒に歩んできた渋谷凛に、今かけたい言葉はなんですか。

福原:今まで、私もいろんな一面を引き出そうとしてきたけれども、まだまだ凛には計り知れない魅力がきっとあるはずだと思っていて。なので、私が凛にかける言葉としては、「もっと見せてくれよ」ですね。プロデューサーさんの目に止まるように私も頑張るから、もっと君のことを私に教えてくれ、と思います。

取材・文=清水大輔