明確なビジョンと強き意志を携えて、いざ夢の舞台へ――富田美憂インタビュー

エンタメ

2019/11/12

 11月15日に20歳の誕生日を迎える声優・富田美憂。若くして多くのアニメ作品にメインキャストとして出演し、幅広く活動を行っているが、自身名義での音楽活動は、彼女にとって念願のひとつだった。その一歩目が、11月13日リリースの1stシングル『Present Moment』だ。初めて表題曲を聴いたとき、「意志の強さを感じさせる歌声だな」と思ったのだが、実際に話を聞くと、そのビジョンは驚くほど明快で、彼女自身も自覚するほどに強い意志を持った表現者だった。1stシングルの時点で、自らの気持ちを言葉にして、歌に乗せていくその姿はとても頼もしく映るし、今後が楽しみである。「自分の理想や目標を叶えていただいた」という手応え十分の1枚について、話を聞かせてもらった。

アーティスト活動も、声優としても、「こうなりたい!」というビジョンが、明確に自分の中にある

──1stシングル『Present Moment』を聴かせてもらいました。一言で言うと、めちゃくちゃ歌がいいなあ、と思って。まずは、今回の1stシングル全体について今感じていることを話してもらえますか。

富田:「アーティストの富田美憂はこうだぞ」って、この1枚をもって言えるようなシングルになったと思います。2曲とも、意志の強さや、将来について一歩一歩頑張っていくこと、未来がコンセプトになっているんですけど、すごく対照的な2曲になっていて。今まで歌ったことがない感じの曲なので、新しい富田美憂としての歌を、今までのファンの方や、これを機にわたしを知ってくださる方、いろんな人に聴いていただける素敵な1枚になっていると思います。

──制作について、富田さん自身はどんな関わり方をしているんですか。

富田:楽曲についてももちろんですが、ジャケットの衣装デザインにも関わらせていただいたりしました。小さい頃からずっと、「歌手としてデビューしたいな」という夢を持っていたので、アーティストとして「こういう服が着たい」「こういう曲を歌いたい」というビジョンがたくさんあって。今回、それを実現していただいて、自分の理想や目標を一緒に叶えていただいたと思います。

──音楽活動を始めるにあたって、「こうなれたらいいな」というイメージがあったとして、それはどういうものだったんですか?

富田:さわやかでありつつも、かわいいだけじゃなくて、その中にあるカッコよさや、意志の強さみたいなものが自分の持ち味、個性なのかなと思っていて。衣装もそうですし、曲や歌声を通して、自分らしさがCDの盤すべてに出たらいいな、と思いました。アーティストとして、歌で誰かの背中を押したり、落ち込んでるときに元気が出るお手伝いができたら、という目標があって。人の心を歌によって動かすことができるアーティストさんって、すごいですよね。わたしも、歌によって元気を与えられたり、背中を押すお手伝いができるようになりたいなって。ちょっと抽象的な表現になってしまうんですけど――。

──むしろ、だいぶ具体的かと(笑)。

富田:ほんとですか?(笑)

──話を聞いていて、ものすごく心の準備ができている人だな、と思いますよ。

富田:やっぱり、声優さんになりたい、歌手としてデビューしたい、というふたつの夢をずっと持っていたので。小さいときから妄想をしていて、「こういう曲を歌ってデビューして、こういうところでライブができるようになったら、このタイミングでトロッコに乗って――」みたいな(笑)。そういうプランを立てるのが、すごく好きです。歌をお仕事にしたい、お芝居をやりたい、と思い始めたのは10歳頃で、わたしが小学生のときは水樹奈々さんや宮野真守さんのように、声優の方がたくさんメディアに出ていて、その方たちに憧れて夢になりました。

──なるほど。さっきの話で面白いなあ、と思ったのが、「意志の強さが自分らしさ」と言い切れるところで。そう信じられる背景について話してもらえますか。

富田:小さい頃から、「自分はこうありたい」というイメージがありました。アーティスト活動も、声優としても、「こうなりたい!」というビジョンが、明確に自分の中にあるんです。それに対して頑張りたいと思いますし、そういう人間になるために何を頑張って、こんな経験をしていきたい、というビジョンがあるから、言えるのかなって思います。

──実際、歌を聴いて真っ先に思い浮かぶのは「意志の強さ」だったんですよ。だから、1stシングルにして歌にそれが思い切り出てる、というか。

富田:はい。日々の経験や、思っていることって、絶対お芝居や歌に出ると思っていて。わたし自身、ちょっと頑固なところがあるんですけど、レコーディングでは、自分のやりたい歌い方をすごく尊重していただきました。のびのび、自由にレコーディングすることができました。

──レコーディングしている時点で、「これはいい曲になる」という感触も持てていた?

富田:持てていたと思います。というのも、アニメ作品に紐づいた形でユニット活動をさせていただいてはいるので、そこでついた自信とか、その活動を通して見つけた自分の強みを事前に知ることができました。今までの作品で学んできた経験が、今回のソロデビューにすごく役立っていると、常々感じます。

──ちょっと話がさかのぼるんですけど、歌手としてデビューしたいという夢を長年持ち続けてきて、実際にそうなったとき、どう思ったんですか。

富田:最初はシンプルに、「ドッキリ?」って(笑)。夢の夢の話だったんですよ。もう、アーティストになりたすぎて。だから最初に聞いたときは、嬉しすぎて、信じられなかったし、実際にいろいろなお話を聞くまで、あまり信じてなかった、というか(笑)。だから、アーティストデビューするぞっていう自覚も、じわじわと湧いてきた感じです。

 まだアーティストとしては生まれたての状態ですけど、決まったときに感じた「嬉しい!」の気持ちだけではなくて、最近は毎日課題が見つかっていたりもするので、日々勉強だな、もっと貪欲に頑張らなきゃって思いますね。埼玉出身なので、さいたまスーパーアリーナでライブをする夢があるんですけど、そのためにも、これからライブやイベントのひとつひとつを経験するごとに課題を見つけながら、その課題をゆっくりでもいいので一個ずつ達成していきたいです。

──「今の自分にはできないこと」が目の前に来たとき、どう感じます? ここまでの話を聞いてると、逆に燃えるタイプの人なのかな、と思うんですけど。

富田:そうですね。小さい頃はすごく消極的で、マイナス思考すぎるくらい、自分に自信がなくて。できないことを目の当たりにすると「もうイヤだ!」ってなりがちだったんですけど。ユニット活動(Kleissis。『アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実』から生まれたボーカルユニット)で指導していただいたダンスやボイトレの先生が、「どこの現場に行っても通用するように」っていうレッスンをしてくださって。今では、すごく難しい振りも踊ることができています。ユニット活動を通して、できないことができるようになっていくことをダイレクトに感じられたのは大きいです。壁を乗り越えたらさらにもう一個壁がある、みたいなところもありますけど、それを乗り越えることにやりがいを感じますし、楽しいです。

今回の曲を通して、強さと同時に自分の弱さも表現できた

──最初に、人の背中を押す、心を動かす存在になりたい、という話があったじゃないですか。そういう想いを持つに至ったルーツの部分について教えてもらえますか。

富田:小さい頃から、キャラクターが歌ったりするアニメが好きで。『うたの☆プリンスさまっ♪』がすごく好きだったんですけど、『うたプリ』のヒロインの女の子になりたいのではなくて、歌ってる男の子側に憧れてました。歌の力で人を元気にしたり、1回のライブで観た人の人生を変えてしまえたりするのはすごいなあって、子どもながらに思っていて。原点は、そこかもしれないです。それと、Kleissisでライブをしたときに、歌っている途中に、目の前で泣いてくださった方がいて、それがすごく印象に残っています。こちらが熱量を持ってライブをすると、お客さんもその分の熱量を返してくれるので、それがすごく気持ちよくて。そのときに、人の心を動かせるってこういうことなんだなあ、と思いました。

──今回のシングルの表題曲“Present Moment”は、「今、この時点」「現時点」というような意味の言葉だと思うんですけど、曲のタイトルを受け取ったときにどんなことを感じましたか。

富田:今回、『放課後さいころ倶楽部』というTVアニメのタイアップでもありつつ、今のわたしだからこそ歌える歌を歌いたい、と思いました。アーティストとしては新人で、初々しさや、まだ完成しきれていない感じが逆に聴く人に響いてくれるんじゃないかな、と思うので。変にうまく歌おうとするのではなくて、歌詞の通りに感情をわーっとぶつけて、いい意味でちょっと荒々しく、エモーショナルな感じで表現ができたら、曲のタイトルともリンクするんじゃないかと。今のわたしにできる、ベストが出せたと思います。歌詞は、「未来に向けて頑張っていく」がコンセプトになってるんですけど、焦りすぎずに一歩一歩頑張っていれば、きっとそれが実って、大きな成功ができるんだっていうことを、伝えられたらいいな、と思っています。

──歌詞の中に、《思うだけで叶いそうだ 君といれば》という言葉が出てくるじゃないですか。この《君》って、何だと思いますか。

富田:友達、家族、いろんなことに当てはまると思います。抽象的な表現になっちゃうんですけど、MVの中で、過去の自分が未来の自分を夢見て、未来の自分の絵を描くシーンがあるんです。《君》っていう歌詞でありつつ、自分が夢見てる自分、という解釈もできると思っていて。過去の自分は、声優になる前。未来が今に近い感じなのかなって思います。

──1stシングルは、ある意味これまでの集大成でもあって、きっと何年か後にこの曲を歌うときも、今の気持ちを思い出せるものになるんじゃないかと思うんですけど、未来の富田さんにとって、この曲はどんな存在になっていると想像してますか。

富田:原点だなって思います。今までやってきた声優の活動と一緒で、アーティストとしても、初心を忘れちゃいけないな、と思うので。たぶん、何年か経っても、デビュー当時の初心でいる自分を思い出せる曲なのではと思います。

──もうひとつ、歌詞の中で《一人じゃない》というフレーズも印象的だったんですけど、この言葉からはどんなイメージを受け取ったんでしょう。

富田:わたしは、ファンの方をイメージしました。アーティストデビューというスタートラインに立たせてくれたのも、ファンの方の力だと思っていて。実際にお手紙をいただいたりすることによって、わたし自身も救われてる部分がたくさんあります。もともと、わたしは自分の声がイヤだったんですけど、ファンの方が受け入れてくれたから、今では声が自分の長所になっていますし、こうして歌を歌うこともできているし。皆さんに感謝を伝えたいという部分では、「ひとりじゃない」と感じることが多々あるので、この気持ちを皆さんに向けて発信していきたいなって思います。

──2曲目の“Ageha Twilight”も、とてもいい曲ですよね。表題曲が今の自分の気持ちを表現するものだったとして、“Ageha Twilight”はどういう楽曲だと考えてますか。

富田:“Ageha Twilight”は、作詞の坂井竜二さんがおっしゃってくださったんですけど、わたしがソロデビューするにあたっての決意を、蝶の成長とリンクさせて歌詞を作っていただいてるんですね。生まれて、蛹になって、蝶になって、羽ばたいていく過程と、自分が夢を見つけて、実際に叶えるにあたっての決意を書いてくださっていて。今の自分と重なる部分が多いので、すごく共感できる歌詞です。

──ここまで話を聞いてると、自分らしさを明確に認識している人なんだなあ、と思うんですけど。1stシングルの制作を経て、見えてきた自分の人物像は、どんな姿をしていましたか。

富田:今まで、家では弱音を吐いたりすることもあったんですけど、それを表に出すことはあまりなくて、自分が悔しいって思う気持ち、「もっとこうなれたらいいのに」って思う気持ちを発信することがなかったんです。ある意味今回の曲を通して、強さと同時に自分の弱さも表現できたんじゃないかなって思います。そういう意味では、わたしの人となりを知っていただける1枚です。“Ageha Twilight”の歌詞にもあるんですけど、目標に向かってひたむきに頑張っていく中で、新しいチャレンジをすることへの不安が生まれることもあるけど、やっぱりそれを出しちゃいけないって思うんです。そういうことが今回表現できたことで、歌がちょっとエモーショナルな感じになっているところもあると思います。

──不安を感じることはある?

富田:いっぱいあります! ライブの前とか、絶対に緊張しますし(笑)。些細なことでも、「これで合ってるのかな?」と思ってしまうんですけど、結果的には自分のやりたいことをやるのが一番だなって思います。

──1stシングルのリリースを楽しみにしている、期待している人たちがいると思うんですけど、その人たちにどのように応えていきたいと思いますか。

富田:まず、最初の大きいイベントとして、誕生日にお台場でフリーライブをやらせていただくんですけど、「アーティスト・富田美憂」として衣装を着て歌うのが初めてのイベントで。昔から応援してくださってるファンの方は、親のような目で見てくださっているんですが(笑)、最近は同世代くらいの女の子もお手紙をくれたりします。ここまで応援してくれてありがとう、という感謝の気持ちも伝えたいですし、これからアーティスト活動をしていく上で、「よろしくね!」っていう気持ちを、ステージを通して表現できたらいいな、と思います。

──その気持ちを持って活動を続けていくために、どんな自分でいられたらいいと思いますか。

富田:自分はこうありたい、というビジョンを持っていることが、一番大切になると思います。ずっと持っていた「人の心を動かせるようなアーティストになりたい」っていう目標は、ブレずに持っていたいですね。

取材・文=清水大輔