橘龍丸「憧れの先輩のように、いつかは背中を追いかけてもらえる役者に」【声優図鑑】

アニメ部

2019/12/9

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キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第232回目に登場するのは、『歌舞伎町シャーロック』小林寅太郎役や、サンリオ発のお笑いコンテンツ『Warahibi!』でま・み・む・メルシーズのYU役を演じる橘龍丸さん。大衆演劇出身という経歴をもつ橘さんは、ゲームをしていても演者視点で考えることがあるぐらい芝居が大好きだという。

――橘さんは大衆演劇をやられていたのですね。

橘:そうなんです。僕が10歳の時に父が劇団を旗揚げして、そこからずっと旅巡業をしながら芝居をやってきました。大衆演劇って、家族や座員を引き連れて1ヶ月ごとに各地を転々とするんですよ。

――必然的に転校を繰り返すことになると思うのですが、学校生活はどんな感じだったのですか?

橘:昼公演が12時ぐらいに始まってしまうので、その前には帰ってきて化粧をして準備しなきゃいけないんです。だから、3限まで受けて帰ってくるような日がザラにあって。勉強はついていけなかったですし、青春時代のようなものはなかったですね……。

――父親が旗揚げしたということは、演劇や舞台は自分自身の希望ではなく?

橘:舞台の道に行く気はさらさらなくて、やりたかったのは声優なんです。実は幼稚園ぐらいから声優を意識していました。

――本当に小さい頃からなんですね。意識したのは何がきっかけで?

橘:『らんま1/2』です。ビデオの本編後にあった山口勝平さん(早乙女乱馬役)のインタビューを見て、こういうお仕事があるんだと衝撃を受けました。子供の頃はかなりピュアだったので、アニメのキャラクターも存在すると思っていました(笑)。

――ピュアな橘少年にとって、そのキャラを演じる人がいるのは衝撃だったわけですね。

橘:そうなんです。驚いたのと同時に、僕でもアニメの中の技が撃てるんだと思ったら、「将来は僕も声優になりたい!」って(笑)。ただ、それを口にする間もなく父が旗揚げしたので、舞台からのスタートになりました。遠回りしたかもしれませんが、僕の人生ではこれが最短ルートだったのかもと思っています。

――声優においても舞台の経験は糧になりますし、全然遠回りじゃないと思いますよ。

橘:それはすごく感じます。舞台をやっていたからこそマイク前でもやれることが、最初のお仕事からあって。舞台経験を活かした発声や見せ方、絵を想像することはやりやすいなと思いました。自分がもし舞台でこれをやるならどういう動きをするかを考えて、芝居を作ったりすることもあるので。もちろん100%できるわけではないですけど、自分の引き出しからプラスαを演技にのせる感じですね。

――念願の声優になり、10月からは『歌舞伎町シャーロック』に小林寅太郎役として出演されています。役が決まった時はどうでしたか?

橘:雄叫びをあげました(笑)。小林寅太郎は、見た目はいかついけど意外と若くて20歳なんですよ。であれば、可能性はなきにしもあらずだなと思って。受かった後に音響監督の長崎(行男)さんに、なぜ選んでいただけたか聞いてみたら、「面白かったから」と言われました(笑)。

――そんなキャラの役作りはどのように?

橘:変に凝り固まらずにやってみようと思って。やり過ぎた時もありましたけど、長崎さんは寛大といいますか、「面白かったら全然OK」と言ってくださる方なので、その期待に応えようと全力でやりました。終わった後に「ここはこうした方がよかったな」「ああした方がよかったかな」というのはありましたけど、やっぱり楽しかったですね。

――共演者はすごい方が揃っていますよね。演技も立ち居振る舞いも勉強になったと思いますが、特にすごいと感じたエピソードはありますか?

橘:『歌舞伎町シャーロック』って、シャーロックが落語をしながら事件を解いていく物語なんです。落語を声優がやるとどうなるんだろうと思っていたんですけど、鳥肌が立ちましたね。(落語での)役の切り返しが早くて。勝手なイメージで、一つの作品の中で同じ人が2つの役を演じる時は、片方の役を収録した後にもう片方の役をやると思っていたんです。でも、小西さん(シャーロック・ホームズ役の小西克幸さん)は全部通して一発OKをガンガン出していたんですよ。

――それはすごいですね!

橘:ある日の収録で、小西さんが長崎さんとディスカッションしていて。「じゃあ、これでいこう」となったら芝居が一気に変わったんです。演じた小西さんが「うん、これだね」と言った瞬間に、長崎さんも「これだね」って。お互いがリンクしている感覚はゾクゾクしましたね。僕にはまだ到達できない領域ですけど、こういう役者にならなきゃという思いをすごく抱きました。

――そして、サンリオさんによる次世代お笑いエンタメ企画『Warahibi!(わらひび!)』では、「ま・み・む・メルシーズ」のYUを演じています。

橘:この作品は芸人さんがネタを書いてくださって、それをそのまま僕らがやっているんです。役としての色をプラスしてはいますが、ほぼ芸人さんの間でやって欲しいと言われているので、普通のアフレコとはまた違った感覚ですね。

――なかなかの意欲作ですよね。ネタをやるのは大変でしたか?

橘:大変でした。ネタって、芝居の間や人間の間とは違うじゃないですか。でも、それを成立させるのがお笑いで、テンポや間が独特なんです。そういう意味で、すごくいい経験をさせていただいています。(芸人の)うしろシティさんも声優として参加されているので、いつか一緒にお芝居できるのが楽しみです。

――お笑いや芸人さんは結構好きなのですか?

橘:僕、芸人さんのことを本当にリスペクトしているんです。笑いって難しいじゃないですか。しかも、芸人さんってお芝居をやらせたら味があって格好いいなって。笑いもできて周りに気を使えて、お芝居もできて、なんでもできるな方たちですよね。

――話を聞いていると、お芝居に対する真っ直ぐな気持ちをすごく感じます。

橘:楽しいんですよ、お芝居が。僕にはこれしかできないと思うからこそ、これで食べていくためにはもっと努力しなきゃいけないなと思っています。

――そんな橘さんですが、お仕事を離れてプライベートではどんな生活を送っているのですか?

橘:出不精なので、基本は映画を見ているかアニメを見ているかゲームをしていますね(笑)。ゲームをしていても、たまに「なるほど。こういう動きもあるな」「僕ならこうしたいな」「この引き出しは僕にはなかったな」と役者視点になっちゃうことがあって。それが心地いい瞬間だったりもします。

――完全に「趣味:芝居」という感じですね。

橘:そう言っている時もありました(笑)。大好きな芝居でご飯を食べていてごめんなさい……という気持ちもありますけど、それでいいのかなと思います。それを突き詰めていったらプロフェッショナルになると思うので。

――映画だけでなくドラマなども見るのですか?

橘:最近見るようになりました。『あなたの番です』は見ていましたね。僕は結構、作品を見終わった後に世間の反応を見るのが好きなんです。「このシーンはこう受け取る人もいるんだ」と思うことも、勉強になるじゃないですか。あと、海外ドラマでは『ウォーキング・デッド』とか『ゲーム・オブ・スローンズ』をよく見ますね。

――では、アニメで心に残っている作品を挙げるなら?

橘:1番は『らんま1/2』なんですけど、『コードギアス』シリーズもハマりました。ストーリーもどんでん返しが多くて、どんどん引き込まれました。

――『コードギアス』といえば、ルルーシュ役の福山潤さんと面識は?

橘:まだ直接はないんですよ。でも、『コードギアス』は僕の声優熱を奮い立たせてくれた作品なんです。福山さんみたいな熱い芝居がしたいなと思わせてくれました。

――熱い芝居を期待しています。最後に、今後目指したい声優像をお聞かせ下さい。

橘:最初に夢見たのはやっぱり山口勝平さんです。そして、今の事務所に所属することになって、浪川さん(社長の浪川大輔さん)にいろいろお話を聞かせていただき、現場も見させていただきました。本当にリスペクトしかないです。声優というだけでなく人間としてすごく素敵で、浪川さんのような人間になりたいと思いますね。

――橘さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】橘龍丸さんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

橘龍丸

橘 龍丸(たちばな・たつまる) ステイラック所属

橘 龍丸(たちばな・たつまる) Twitter

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=千葉研一、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト