混ぜるな危険!? 『うちの妻って…』福満しげゆき×『レズ風俗』永田カビ対談! 新連載で描くものとは?

マンガ・アニメ

2020/4/6

福満しげゆきさん、永田カビさん
(左)永田カビさん(右)福満しげゆきさん

 3月27日にオープンした双葉社のコミックサイト「webアクション」で、エッセイマンガ2巨頭の新連載がスタート!さらに、連載開始を記念して、ふたりの対談が実現。“自分”を描くことの苦悩や葛藤とは?

 自分の体験や内面を赤裸々に描く「私小説」ならぬ「私マンガ」の中でも、ひときわ〝ガチ度〟が高いのが、このおふたり。『僕の小規模な失敗』で青年時代の鬱屈を、『うちの妻ってどうでしょう?』では家庭生活を生々しく綴った福満しげゆきさん、『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』で話題をさらった永田カビさんが、コミックサイト「webアクション」の新オープンを機に初顔合わせ! 「なぜ我々は一番みっともない自分をさらけ出してまでマンガを描くのか」をテーマに、酒を酌み交わしつつ本音で語り合っていただきました!

――おふたりは初対面ですが、お互いの作品に対してどんな印象をお持ちですか?

福満 「pixiv」に投稿したマンガがきっかけで、ドンと売れた経緯を見ていましたので、すごい人が出てきたなと。僕なんかも昔はドーンと出てきた存在でしたが、だんだん下降線をたどっていって……。

永田 恐縮です。従兄が福満さんの大ファンで、今日のためにいろいろ聞いてきました。

――エッセイマンガ家対談と言いつつ、福満さんの「webアクション」新連載はストーリーマンガなんですよね。『ひとくい家族』という攻めた作品です。

福満 Webでは、ちょっと過激なほうが流行るじゃないですか。でも、自分のTwitterでは宣伝しませんよ! 絶対叩かれますから。

――この設定はどこから生まれたんですか?

福満 『万引き家族』という映画がありますよね。観てないんですけど、おそらく万引きはするけどいい家族なんだろうなと思って。その人食いバージョンがこのマンガです。いい家族なら、読者は人食いをも許せるだろうかという挑戦ですね。最終的にバトルに持っていけたらいいなと思います。

『ひとくい家族』
(c)福満しげゆき/双葉社

 

――永田さんの新連載は『迷走戦士・永田カビ』。「愛し愛されている人たちが実在する」という現実に、衝撃を受けたそうですが。

永田 両親や親戚を見て、「一定の年代になると人はいやいや結婚させられるもんなんだ」と思っていたんです。でも、実はそうではない人たちがいるらしいと気づいて「何だったんだ、私が今まで見ていた世界は」って。いろいろ模索しつつ、自分の中で結論が出るまでの過程を描くつもりです。

『迷走戦士・永田カビ』
(c)永田カビ/双葉社

 

福満 話の枕がうまいですよね。きちんと問題提起されていて、引き込まれました。

永田 前作のAmazonレビューを見たら、「この人誰?」って書かれていたんです。「いやいや、読んどいて『この人誰?』はないやろ」と思って。それで、とりあえず自己紹介から始めよう、と。

福満 雑な悪口って、けっこう傷つくんですよね……。

薄いエッセイ野郎が、浅瀬でパチャパチャしやがって!

福満 永田さんにお会いして、マンガの印象に近かったので驚きましたね。僕の場合、自分の顔をそのまま描くことはできなくて、キャラだから描けたというところがあります。僕はエッセイマンガの〝本当〟にこだわりますけど、キャラが嘘なんですよ。そこを突っ込まれたら返す言葉もないんです。

永田 私も似てないようにしたつもりですけど、似てますか……。私は福満さんの本を拝読して、リアリティとマンガ感のバランスがすごいなと思って。ノンフィクションですが、キャラが立っていてマンガとしてすごく面白いんですよね。

福満 いや、永田さんのほうが捨て身ですよ! デビューしたばかりの頃は、これまでに蓄積された鬱屈や情熱でマンガを描くじゃないですか。でもだんだん描き尽くしてきて、インスタグラマーがインスタに載せる写真のために出かけるように、自分からネタを迎えに行くことはないですか?

永田 ネタが枯渇してきたので、すでにそうなりつつあります。でも、描く内容は脚色はせずにありのままを描くようにしてますね。

福満 「女性は結婚して、子どもを持つもの」という風潮が残る中、永田さんは「これでもいいじゃねーか!」と新たな生き方を示していますよね。そういうスタイルを確立しつつあるんじゃないですか?

永田 その路線は、すでに他のエッセイマンガ家が描いているんですよ。そっちの評価が高いとヘコむので……。

福満 あ、意外とそこは気にするんですね。僕もそうですけど、やっぱり「負けるか!」という意地や根性が基盤になっているわけですか。僕はほかのエッセイマンガ家に対して、「全然甘い」と思うことが多いんですよ。永田さんは「こんな薄いエッセイ野郎が、浅瀬でパチャパチャしやがって!」と思うことはないですか?

永田 あります! 誰とは言えないですけど……。

福満 エッセイマンガ家は、自分よりも労力が軽いマンガ家を見ると恨んでしまうんですよね。「ずいぶん楽にやってるね、君。こっちは全力投球で肩ボロボロだよ!」みたいな。その点、永田さんには凄みがありますね。自分よりもガチ度が高い人に、初めて会いました。

永田 ありがとうございます。

福満 ここまでやらなきゃいけないのは、しんどいですよね。僕みたいにカネ目的になると考え方も変わりますけど、永田さんはそうじゃないから。この先もつらいと思いますよ。今はベールで覆ってますけど、永田さんが本来持っている野心や意地をオープンした先に、もう一段階なにかあるかもしれませんね。

永田 あー、なるほど。

福満 ぬるいところでマンガを描く人もいれば、入ったら死ぬ温度でやる人もいるじゃないですか。最初に後者を選んじゃうと、大変なんですよ! 温度を下げればワーワー言われるし、そこからもう一度温度を上げてももう読者はいないし。ま、それが僕なんですけど……。でも、僕もまだ終わったわけじゃありません。もう一花咲かせてやりますよ!

取材・文=野本由紀

 

『ひとくい家族』
『ひとくい家族』は、その名の通り人肉を食べる一家という凄い設定。

『ひとくい家族』福満しげゆき
「うちは貧乏で…ホントに貧乏で…もう…人の肉を食べてました」──。お父さんが失業してからというもの、日々の食事もままならない貧乏一家。食卓にのるのは、お父さんが獲ってくる人の肉。女子中学生・凛子は「こんな肉食べたくない」と抗うけれど……。禁断のストーリーギャグ、開幕!

 

『迷走戦士・永田カビ』
『迷走戦士・永田カビ』第1話では、友人の結婚式に衝撃を受けた永田さんがウェディングドレスに挑戦するが……。

『迷走戦士・永田カビ永田カビ
これまで「パートナー間の愛など存在しない」と信じ込んでいた永田さん。でも、結婚式で幸せそうに笑う友人やTwitterのほっこりエピソードを見ると、どうやら実在するようで……? 一人結婚式、マッチングアプリへの登録──愛し愛される関係に焦がれてもがく、迷走ジタバタコミック。

 

福満しげゆき
ふくみつ・しげゆき●1976年生まれ。97年、雑誌『ガロ』掲載「娘味」でデビュー。『僕の小規模な生活』『うちの妻ってどうでしょう?』『妻に恋する66の方法』などの実録マンガに加え、『就職難!! ゾンビ取りガール』などのストーリーマンガも人気。新刊『妻と僕の小規模な育児』1巻発売中。

永田カビ
ながた・かび●1987年生まれ。投稿サイト「pixiv」にアップしたレズビアン風俗体験マンガが閲覧数480万を超え、『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』として書籍化。他の著作に『一人交換日記』全2巻。新刊『現実逃避してたらボロボロになった話』発売中。

こんな連載が読めるのは……webアクション

双葉社「webアクション」では、おふたりに加えて押見修造、鮫島圓、若井ケン、梵辛、RENA、つゆきゆるこ、U-temo、さそうあきら、奥嶋ひろまさ、相原コージ、棚園正一、高橋聖一、瀬崎ナギサ、うぐいす祥子、荒巻美由希、佐久間薫などの新連載、新企画も続々スタート。毎週金曜正午更新。 https://comic-action.com