目指すのは、いつもみんなのそばにある、寄り添っていく音楽――諏訪ななかインタビュー

エンタメ

2020/4/22

『ラブライブ!サンシャイン!!』の松浦果南役、そしてAqoursのメンバーとして活躍する声優・諏訪ななかが、自身名義での音楽活動をスタートする。1stアルバムのタイトルは、『So Sweet Dolce』。その名の通り、甘いテイストの10曲が揃ったアルバムだが、それぞれに趣向を凝らしたサウンドと諏訪自身の歌声が融け合った、聴き応えのある1枚となっている。初めての作品なだけに、レコーディングの過程には手探りの部分もあったようだが、諏訪自身が実現したいと考えている音楽のビジョンや、歌を届けることで成し遂げたいと考えている目標は、とても明確だ。アルバム制作が佳境のタイミングで、話を聞いた。

誰かの頑張る力になれるのは、すごいことだな、と

――まずは、自身の名義で音楽活動をすることになったとき、そして最初にアルバムを出すことが決まったときに、どのように感じたかを教えてください。

諏訪:もともとアーティストデビューを目指してはいたわけではなく、声優を目指していたので、声優さんでアーティスト活動をしている人を見て、「アーティストデビューしてる人もいるんだなあ」って思ってるくらいの感覚でした。なので、「絶対にアーティストデビューするぞ!」っていう気概は持たずに声優になったのですが、Aqoursで活動してる中で、漠然と「いつかはアーティストデビューするのかな?」っていう感覚もあって、わたしもその時が来たのかな、と。「いつかはするかな?」くらいの気持ちはありました。

――今の話のとおり、本職は声優として活動をしている中で、歌とは、音楽とは、どういう存在だったんでしょう。

諏訪:わたしが目指していた時代の声優さんは、両立している人が少なかったんです。でも、実際に自分が声優になってからは、まわりがけっこうアーティストデビューしていたり、両立してる声優さんが多くなっているので、どちらかしかできないというわけでもなく、声優とアーティストを両立する道もあるのかなって思います。

――歌を歌うためにステージに立つのと、アフレコのスタジオでお芝居するのは、全然違うじゃないですか。音楽に関わることで、もともと声優としてイメージしていた活動以上に幅が広がったり、全然違う景色を見られたところはあると思うんですけど、ステージで歌うこと、そこで見た景色が与えてくれたものって何だと思いますか。

諏訪:普通に声優の仕事だけをしていたら、ファンの方の声って届きづらいじゃないですか。だけど、ライブだと、何かを介することなく直で反応がもらえるので、そこがやっぱり一番楽しいところかな、と思います。ライブでも、反応としては見られるんですけど、受け取ってくれた個人個人がどう思っているかまでは、さすがに察することはできないので、お手紙とかで「この曲が、こういうときに聴いていて力になりました」って言ってもらえたりすると、歌っていてよかったなって思います。

――自分の歌が誰かの力になることを実感できるとき、どういう気持ちになりますか。

諏訪:自分は普通に生きてるだけなのに(笑)、誰かの頑張る力になれるのは、すごいことだな、と。自分も、仕事に行くときに曲を聴いたりするので、通勤や通学のときに曲を聴いてくれたら嬉しいな、と思います。

――ひとりのリスナーとして音楽に触れてきて、こういうものを受け取ってきた、それこそ力を与えられた、みたいな経験はありますか。

諏訪:やっぱり、すごく疲れたときは、好きな曲を聴いたりして、気持ちを上げたりしますね。あとは、癒されたいときとか、寝るときにも音楽を聴いたりします。音楽はいろんなシーンで聴けるので、いろんなところに寄り添った曲があったらいいな、と思います。

――実際に音楽活動を始めることになって、アルバムを1枚作るにあたり、どんなイメージを持っていたんでしょうか。どのように制作に関わっていったのか、を聞きたいです。

諏訪:なりたいアーティスト像は、自分の中ではほんとに漠然としたものしかなくて。「絶対にこういう感じの曲を歌いたい!」みたいなイメージがあったわけではないんですけど、最初に曲をわりと多めに選んでもらった中から、自分で10曲を選ばせてもらいました。「この曲いいなあ」「ライブで歌ったら盛り上がりそうだなあ」って思いながら選んだのが、今回のアルバムの10曲です。

――すでに完成している楽曲を聴かせてもらったんですけど、『So Sweet Dolce』というアルバムのタイトルのとおり、甘いテイストの楽曲が揃ってますよね。

諏訪:そうですね。

――たとえば自分の見え方、「お客さんにはこう見えてるんじゃないかな」とか、そういうことも考えつつ、曲を選んでいった、という感じなんでしょうか。

諏訪:そうですね。お名前を出してしまうと、田村ゆかりさんみたいな系統が、やりたい方向です。

――非常に明確ですね。

諏訪:はい(笑)。しかも、同じ事務所なので。

――ライブも観に行ったことがあるんですか。

諏訪:あります!

――王国民?

諏訪:王国民ですね(笑)。

――(笑)目指すべきイメージがわりと明確にあった中で、歌を収録している過程で「自分にはこういう部分もがあるんだな」っていう気づき、あるいは「自分の歌のよさはこういうところなんじゃないか」っていう発見もあったりしましたか。

諏訪:やっぱり、今までレコーディングしてきたものはキャラクターとして歌っている曲しかなかったですけど、アーティストデビューする人はそこで「自分の歌って何?」っていう壁にぶち当たったりするのかなって思っていて。「キャラと自分の違いは何か?」みたいな。やっぱり、キャラクターのイメージは、すごく強かったりするので。だから、わたしもその壁にぶち当たるかなと思ってたんですけど、特にぶち当たることもなく(笑)。

――(笑)「自分の歌」はどういう姿をしてたんですか。

諏訪:キャラクターのときはそのキャラになろうと思って歌ってるので、「それを考えずに歌ったら、自分の歌じゃない?」って思いました。そこは、そんなに考え込まずにできました。

――なるほど。では、自分の歌に手応えを感じてる部分は?

諏訪:まだ手応えは感じてないですね(笑)。MVで1曲しか出していないので。もちろん、曲を聴いてはいますけど、自分の曲を聴いて「この曲、すごくいい」とは思わないです(笑)。「いいものであるといいなあ」という感覚ですね。照れがあるわけではないんですけど。この曲がどう受け取られるのかなって考えちゃいますね。

――選んだ曲をちゃんと形にできた感触はある。

諏訪:そうですね。やっぱり、最初のほうに録った曲は、自分の曲を歌うのが初めてなので、「これでいいのかな」感がけっこうありました。でもレコーディングの後半は、「こういう感じかな」っていう感覚が、ちょっとずつですけどつかめてきた感じです。やっぱり数を重ねることで、たとえば3曲だけだったらたどり着けなかったかもしれなくて、5曲くらい歌ってギリギリたどり着いたかな?くらいの感じだったので、アルバムが10曲あって、やっと形になってきたというか、だんだんつかめてきた感じです。自分で自分の歌がよくなってる、と評価をしているのではないですが……。

――アルバムというのは、歌う人が自分の色を出す、自分の世界観を表現するものだと思うんですけども、それが10曲並んでみて、どういう感覚がありますか。

諏訪:もともと歌手を目指すくらいに歌に自信があれば、10曲あっても全然乗り越えられると思うんですけど、10曲すべてが初披露の曲になるので、世に出てみないとわからない感じはありますね。ただ、あとから振り返ったときに、「諏訪ななかといえば、こういう感じだよね」って、みんなに伝わるようなアルバムになっていればいいな、と思います。

いつもみんなのそばにあるような、寄り添っていけるような音楽になりたい

――リード曲の“So Sweet”には、《新しいページをめくる歩み 願い込めた》という歌詞があって、まさに始まりを告げるにふさわしい曲であるし、歌っていてもいろんな感情が浮かんでくるんじゃないかな、と思うんですけど、この曲に触れたとき、どんなことを感じましたか。

諏訪:リード曲の候補が3曲あって、その中でこの“So Sweet”が選ばれたんですけど、やっぱり最初のアルバムのリード曲だけあって、始まりを感じさせるというか、自分のソロ活動の最初のページになるんじゃないかなっていう曲になっていると思います。歌う時点では、作詞をしていただいた方にはお会いしてなかったんですけど、歌詞の中で最初の一歩感を出していただいてるので。気持ち的にもすごく入る曲だと思います。

――最初に録るということは、「どうなるのかな?」という不安もあった中でのレコーディングだったんじゃないかと思うんですけども。

諏訪:しかも、すぐにイベントで歌う前提で録っている曲だったので、「完成音源どおりに歌えるかな?」って思ってました。イベントでは“So Sweet”だけ歌ったんですけど、お客さんの反応がすごくよくて、盛り上がっていただいて。披露してみて、温かく見守ってもらえているなって思いました。イベントで歌う前は「大丈夫かな?」って思いが強かったのですが、昼と夜にイベントをやって、夜はみんなが完全に覚えてくれて、盛り上がってくれたので、それはすごく嬉しかったですね。

――イベントで歌うことで実感した部分もあると思うんですけど、自分の歌を聴きにきてくれるお客さんはどういう存在ですか。

諏訪:ファンの方からは、「頑張る元気をもらってる」っていうお手紙をよくもらったりするんですけど。どちらかというと、わたしも支えてもらってるなって思います。

――その人たちに今言いたいこと、伝えたいことは?

諏訪:皆さんも、“So Sweet”の他にどんな曲がアルバムに含まれるのか、すごく楽しみにしていてくれてるので、皆さんが満足のいくような、「こんな曲もあるんだ」ってたくさん楽しんでもらえるようなアルバムにできたら、と思います。

――音楽活動はまだ始まったばかりで、これからライブもあるでしょうし、アルバムが出ていろんなリアクションが返ってくることで、気持ちの部分もどんどん変わってくるんじゃないかと思うんですけど、この先の諏訪ななかとしての音楽活動について、どんなイメージを持っていますか。

諏訪:いつもみんなのそばにあるような、いつでも聴いてもらえるような、寄り添っていけるような音楽になりたいなって思います。

――いい言葉ですね。そう思うのはなぜ?

諏訪:アルバムが出るのが春頃で、新生活の始まりじゃないですか。その時期に聴いた曲って、けっこう記憶に残っていく曲だと思うので、そういう思い出の1枚になれたらいいですね。

――では、音楽活動はもちろんですけど、表現者としてはこれからどういう存在になっていきたいと思いますか。

諏訪:漠然と、ですけど、「この人の声、聴いたことあるな」っていう存在になりたいですね。歌であっても、お芝居であっても、「この人の声知ってる」っていう声になりたいです。

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取材・文=清水大輔