【劇場公開中!】陽気なトラブルメーカー役を射止めた「決め手」とは?――特集『BURN THE WITCH』②:土屋神葉インタビュー

アニメ

公開日:2020/10/3

BURN THE WITCH
『BURN THE WITCH』10月2日より、全国35館にて2週間限定イベント上映、「Amazon Prime Video」「ひかりTV」にて同日独占配信開始 (C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会

 ふたりの魔女が空を舞い、ドラゴンを追う! 全世界での累計発行部数が1億2,000万部を記録したマンガ『BLEACH』。その傑作を生みだした久保帯人が満を持して世に放つ新作が――魔女とドラゴンの物語『BURN THE WITCH』(以下『BTW』だ。また本作は、週刊少年ジャンプで2020年に全4話でシリーズ連載され、10月からは劇場版中編アニメとして全国の映画館でイベント上映されるというビッグプロジェクトでもある。

 ガールズグループ「セシルは2度死ぬ(セシル・ダイ・トゥワイス)」のリーダーを務めるニニー・スパンコールと、女子高生の新橋のえるは、裏の世界「リバース・ロンドン」で魔女としてドラゴンと相対している。そんな彼女たちを事件に巻き込む、本作におけるトラブルメーカーが、「ドラゴン憑き」の学生、バルゴ・パークスだ。彼はドラゴンを呼び寄せる体質になってしまい、リバース・ロンドンの街にドラゴンを集めてしまう。バルゴを演じるのは、声優・土屋神葉。はたして彼はどのようにバルゴを演じたのだろうか。久保帯人が同席して行われたアフレコ現場について、話を聞いた。

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ロンドンに行ったことが、本作の収録の役に立った

――『BURN THE WITCH』は、『BLEACH』を手掛けた久保帯人先生の新作です。久保先生の作品に、どんな印象をお持ちになっていましたか。

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土屋 僕が小学生くらいのときに『BLEACH』がアニメで放送されていて、その原作が週刊少年ジャンプで連載されているのも知っていました。ただ、そのときはまだ、自分が声優として活動するとは思ってもいなかったし、自分と接点があるとも思っていなかったんです。だから今回、新作に関わることができて驚きましたね。

――『BTW』には、魔女や魔法使い、ドラゴンが登場します。こういったファンタジー作品はお好きですか?

土屋 昔から『ゲド戦記』や『ハリー・ポッター』のようなファンタジーものが大好きで。読書をするときは、ほとんどファンタジーものを読んでいたんです。だから、こういう世界観が大好きでした。オーディション後に、読み切りの『BTW』(2018年8月、ジャンプ50周年記念号に発表)を購入して、この作品の世界観にワクワクしていました。

――物語の主な舞台は「リバース・ロンドン」という現実のロンドンの裏側の世界です。こういった作品の設定には、どのような印象がありましたか?

土屋 実際のロンドンに、一度だけ行ったことがあるんです。姉(土屋太鳳)がロンドンで演劇の公演をしたことがあって(2018年、演劇『プルートゥ』欧州公演ツアー)、それを観に行ったでんですね。今回の作品に参加することが決まったときに「ロンドンに行っておいて良かった!」と思いました。その滞在時、一日だけひとりきりで行動したことがあって。4時間くらいかけて北のほうを回ったんです。そのときに感じたロンドンの空気感は、今回の収録でとても役に立ちました。

――土屋さんが演じられたバルゴ・パークスというキャラクターの印象はいかがでしたか?

土屋 表裏がなくて、好きなものは好きで、ぼーっとしている(笑)。現実に一緒にいたら、イライラする人がいるかもしれないけど、絶対に嫌いになれない人、だと思います。

――バルゴはドラゴンを呼び寄せてしまう体質「ドラゴン憑き」なのに、あまり深刻に考えていない、かなりマイペースなキャラクターですよね。

土屋 いい意味で、彼は空気を読まないんですよね。主人公たちがピンチなときって、作品の空気がどんよりと沈みがちですけど、この作品では、バルゴのすっとんきょうなセリフが一発入ることによって、作品全体が重くなりすぎないんです。彼には、ある種の底知れない「何か」があるんですよね。

――彼は「ドラゴン憑き」になってしまったことで、どんどん大きな事件に巻き込まれていく。そして、彼にはどうやら秘密の力があるらしい……。こういう巻き込まれ型のキャラクターは、作品によっては「主人公」になることもあります。でも、この『BTW』では、そんな「主人公キャラ」バルゴが、「本当の主人公キャラ」のニニー・スパンコールと新橋のえるに救われていく。とても面白い構造ですね。

土屋 そうですね。たぶん、彼は強いんです。だから、心のどこかに余裕がある。状況的にはかなりのピンチなのに、全然関係ないことに感心していたりする。そういうところに、バルゴの底知れない魅力があります。

――そんなバルゴのお芝居はどのように組み立てていったのでしょうか。

土屋 バルゴは「風のような男の子」だな、と感じていて。流れに身を任せるタイプだったので、収録のときもまわりの役者さんの醸し出す雰囲気に身を任せていたんです。だから、深く考えすぎることもなく、楽しみながら収録することができましたね。台本はト書き(シーンの説明文)が面白くて。台本を読んでいると、クスッと笑っちゃう感じがあったんです。僕の名前は神葉(シンバ)というんですが、その名前にまつわる作品のネタがト書きに書かれていて……。

――つまり、『ライオン・キング』的なト書きがあったということですね。

土屋 そうなんです!(笑)。最初、このト書きを読んだとき、収録後にスタッフの方に伺ったんです。そうしたら、台本はオーディションの前にできていたので偶然だと言われて。そんなところにも運命のめぐりあわせを感じていました。

――収録はいかがでしたか?

土屋 とても丁寧に収録をさせていただきました。新型コロナウィルスの感染拡大防止もあって、スタジオに入るキャストは数人に限定して収録を行っていたんですが、ひとつひとつのシーンをスタッフのみなさんとディスカッションしながら収録できたので、本当に丁寧に心を込めて収録をしたなという印象があります。収録で最も印象的だったのは、原作の久保帯人先生が収録現場に一日中いてくださったことです。とても愛のある原作者さんなんだなと感じました。

――久保先生と直接お話をする機会はありましたか?

土屋 トイレに並んでいるときに、久保先生とご一緒しました(笑)。久保先生がイメージしていたバルゴの声は、ちょっと中性的だったそうなんです。「バルゴの声を聴いて、こんなに合うと思わなかった」「想像通りの声で収録できて嬉しい」と言ってくださいました。こんなことを原作者さんに言っていただいたことがなかったので、僕もすごく嬉しくて。収録後にも「音響監督さんと会話するときの声もバルゴっぽくって面白かったです」というようなお話を聞けましたし、すごく幸せな現場でした。

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ニニーとのえるから選ぶのは正直厳しいんですけど……僕はのえるさんを選びます。理由は直感です!

――この作品の主人公である魔女のニニーとのえるについては、どんな印象をおもちですか?

土屋 キャラクターも魅力的なんですけど、声を当てている田野アサミさん(ニニー役)と、山田唯菜さん(のえる役)がキャラクターそのまんまな感じがあるんです。おふたりを見ているだけで、すんなりと「ああ、こういうキャラクターなんだ!」と伝わってきました。

――バルゴは、のえるにご執心のようですが……。

土屋 ええ、大好きです! バルゴは、大好きな気持ちをありえないくらい表に出すんです。のえるのおっぱいの魅力について力説をするシーンがあるんですけど……監督(川野達朗)から「バルゴ役に土屋さんをお願いしたのは、オーディションのときに『おっぱい』の言い方が色っぽくなかったから」とおっしゃってくれたんです。その部分は意識して、バルゴを演じていました。

――「おっぱい」が良かったから、バルゴ役に選ばれたわけですね。

土屋 そうです。なんだか、誤解を招きそうな発言ですが……(笑)。

――(笑)土屋さんご自身としては、ニニーとのえる、どっちが推しですか。

土屋 この質問は悩みますね。どっちも魅力的なんですよね。勝気なところがあるニニーと、ツンデレなのえる。どっちの女性も素晴らしいことは間違いないです。だから、このふたりから選ぶのは正直厳しいんですけど……僕はのえるさんを選びます。理由は直感です!

――直感ですか!?

土屋 のえるさんはマンガ版で部屋着のシーンがあったんです。あの部屋着姿は素敵でしたね。

――まだまだ謎の多い『BTW』の世界ですが、気になるキャラクターは誰ですか。

土屋 気になるキャラクターはたくさんいます。とくに各部署の長官が集まる「トップ・オブ・ホーンズ」がむちゃくちゃ気になります。中でも戦術隊(サーベルズ)長官のサリバン・スクワイアですね。冷徹な女性キャラクターはカッコいいと思います。僕はクールなキャラクターが大好きなんですが、そういうキャラクターを演じたことがないんですよね。いつの日か、ああいうクールな雰囲気のあるキャラクターを担当したいと思っています。あと、気になるキャラクターは……チーフです。カッコよすぎます。今後の物語があるとしたら、どこでその謎が明かされることになるのか……。とにかく、今後が楽しみなキャラクターですね。

――観客のみなさんに、映像面で楽しみにしてほしいところは、どんなところですか?

土屋 アクションシーンがたくさんあるので、ぜひそこを楽しんでほしいです。魔女たちはそれぞれドラゴンで飛んでいるので、その躍動感を存分にスクリーンで味わっていただきたいです。この作品に登場するドラゴンはすごく魅力的で、美しくて恐ろしいドラゴンと気色が悪いドラゴンがいるんですが、スタイリッシュなドラゴンたちもぜひ楽しんでください。

――『BTW』はまだまだ謎の多い作品です。今後、どんなところに期待していますか?

土屋 実は、この作品は『BLEACH』との関連性があるんじゃないかと想像しているんですよね。きっと『BLEACH』ファンの方が『BTW』をご覧になると、世界観の考察が膨らむんじゃないかと思います。

――バルゴの今後も楽しみです。

土屋 バルゴは作品により深く関わっていきそうな役柄なので、僕も今後の動きが楽しみです。

――最後に『BTW』に参加した感想をお聞かせください。

土屋 キャストのひとりとして週刊少年ジャンプに名前を載せていただいたり、自分が担当しているキャラクターがマンガで動いているのを見ると、感慨深いですね。声優という道を進んできて良かったと、光栄に思っています。視聴者とスタッフのみなさんの期待に見合うように、今後も頑張っていきたいと思います。

取材・文=志田英邦

作品HPはこちら


土屋神葉(つちや・しんば)
声優。劇団ひまわり所属。『ハイキュー!!』でTVアニメ初出演。代表作に『ボールルームへようこそ』(富士田多々良役)、『ハイキュー!!』シリーズ(五色工役)、『アンジェリーク・ルミナライズ』(ユエ役)。長姉は土屋炎伽(チアリーダー、ミス・ジャパン2019グランプリ)、次姉は土屋太鳳(女優)。

近々では、木ノ下歌舞伎『糸井版・摂州合邦辻』“俊徳丸”役として、出演を控えている。
(10月22日~26日・東京:あうるすぽっと、11月2日~3日・京都:ロームシアター京都)

土屋神葉Instagram:https://www.instagram.com/simbatsuchiya_official/?hl=ja
土屋神葉マネージャーTwitter: https://twitter.com/simbatsuchiyamg

BURN THE WITCH

『BURN THE WITCH』Blu-ray コレクターズエディション(初回限定生産)
上映劇場では、10月2日(金)の上映当日より先行販売。
A-on STORE、プレミアムバンダイ内A-on STORE支店では、12月24日(木)より発売。
価格:10,000円(税込)