【劇場公開中!】飄々としながら底知れない男、チーフ。歴戦のベテランに『BTW』の魅力を聞く――特集『BURN THE WITCH』③:平田広明インタビュー

アニメ

公開日:2020/10/4

BURN THE WITCH
『BURN THE WITCH』10月2日より、全国35館にて2週間限定イベント上映、「Amazon Prime Video」「ひかりTV」にて同日独占配信開始 (C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会

 ふたりの魔女が空を舞い、ドラゴンを追う! 全世界での累計発行部数が1億2,000万部を記録したマンガ『BLEACH』。その傑作を生みだした久保帯人が満を持して世に放つ新作が――魔女とドラゴンの物語『BURN THE WITCH』(以下『BTW』だ。また本作は、週刊少年ジャンプで2020年に全4話でシリーズ連載され、10月からは劇場版中編アニメとして全国の映画館でイベント上映されるというビッグプロジェクトでもある。

 ガールズグループ「セシルは2度死ぬ(セシル・ダイ・トゥワイス)」のリーダーを務めるニニー・スパンコールと、女子高生の新橋のえるは、裏の世界「リバース・ロンドン」で魔女としてドラゴンと相対している。そんな魔女たちを従える笛吹き隊(バイパーズ)のリーダーを務める人物がチーフ。昼行燈な性格で、部下のニニーからも言われたい放題な彼は、いったい何者なのか? チーフを演じるのは、ベテラン声優・平田広明。彼はこの作品で、コメディリリーフとして作品の楽しいカラーを作り上げている。

BURN THE WITCH

BURN THE WITCH

BURN THE WITCH

チーフは、登場から思いっきりギャグでくだけているキャラ

――本作『BTW』は、現代のイギリスの裏側にあるリバース・ロンドンで魔法使いと魔女とドラゴンと戦うモダンファンタジー作品です。作品の印象をお聞かせください。

advertisement

平田 まず、設定が面白かったです。みんながどこかで思っていることだと思うんですけど、魔法使いってイギリスのロンドンに似合うんですよね。『ハリーポッター』も『ファンタスティック・ビースト』も「魔法使いとロンドン」の物語ですしね。「リバース・ロンドン」という設定を聞いて「そうだよな、やっぱりイギリスだよな」って思いました。作品の中には、今どきの魔女が出てきますが、独特な街並みにすっと溶け込んでいますね。

――そんな中で、チーフはかなりコミカルなキャラクターとして登場します。

平田 登場から思いっきりギャグでくだけていましたよね。

――チーフというキャラクターの印象をお聞かせください。

平田 最近は僕の年齢的にもキャラクター的にも、チーフのようなおじさんの役どころをいただくことが多いんです。熱血なおじさんはあまりないんですけど。中でも、チーフは特にくだけきっているキャラクターでした。今回の作品の最後にちょっと「アレ? もしかすると?」というところもあるんですが、基本的に今回のアニメでは一切、彼のシリアスなところは出てきません。ある事件が起きたときに「これはやべえぞ」というセリフをひとこと言うんですが、そこもそれほどシリアスじゃない。おそらく彼は童話竜(メルヒェンズ)が出てきたことに動じないくらいの経験があるんでしょうね。短いシーンですが、すごく重要なシーンだな、と思っていました。まあ、彼がこれまでどんな苦労をしてきたのか、どんな気持ちで普段はひょうひょうとしているのかは今はまだわからりませんが、先のことはあまり深く考えず、今回はギャグを楽しみながらやらせていただきました。

――チーフは、魔女のニニー・スパンコールと新橋のえるが所属する、笛吹き隊(パイパーズ)の上司です。ニニーとのえるからの、チーフへの当たりも強いようですが……。

平田 とてもにぎやかな部署ですよね。ひとりはチャキチャキしていて、ひとりはノソノソっとして大人しめ。互いにピーチクパーチク反発しながら、寄り添っていくという関係なんでしょうが、あくまでチーフの目線で見ると、今のところはふたりに手を焼いている感じはないです。現状のふたりはチーフの想定内。反発しそうなことを言うと、案の定ふたりが食ってかかってくる。それをかわしたり、なだめすかしながら、上手いこと付き合っていますよね。親御さん目線といいますか、良い立ち位置で彼女たちを見守っている感じがあります。

BURN THE WITCH

BURN THE WITCH

BURN THE WITCH

ニニーちゃんものえるちゃんも、今後が楽しみ

――今回の作品は、久保帯人先生の原案をもとに久保先生自身によるマンガ版と、スタジオコロリドのスタッフが制作するアニメが同時進行で制作が進むという特殊なスタイルの作品です。チーフの役作りをするために、手掛かりにしたものは何でしたか?

平田 台本とリハV(リハーサル用の映像)をいただいた時点(収録時)では、完成した映像ではなかったのですが、キャラクターの表情はしっかりと描かれていましたし、チーフはしっかりとギャグをやっていたので、やりやすかったです。自分が何をしなきゃいけないのか、制作側からのメッセージが映像に入っていたので、あとはまわりのキャラクターとのやりとりに重点を置いて作っていきました。ニニーたちがどうツッコんでくるのか、どうリアクションをするのか。ニニーたちとのやりとりはこの部署で何度も繰り返されているやりとりなのか。たとえばひじでわざと書類を倒されたら、「ああ、こういうことって、これまでにも何度もあったんだな」とわかってくる。しかも、音響監督が昔からお世話になっている三好(慶一郎)さんだったので、彼から出されるサジェスチョンもわかりやすいが。お互いに腹の内がわかっていたので、収録は迷うことなく進めることができましたよ。

――三好音響監督からのサジェスチョンには、どんなものがありましたか。

平田 何かを言われたわけではないんですけどね。「平田さん、ここの発音が甘かったらもう一回」なんて初歩的なやりとりをしていただけです。付き合いが長いと、音響監督さんが僕のクセとか弱点を知っていてくれるので、そのクセを上手く扱ってくれて、シーンに活かしてくれる。弱点の部分は注意してくれる。弱点のところを指摘されると「ああ、また出ちゃった、そこ?」と、こちらもみなまで語らずともわかるんです。彼の目指しているところがすぐにわかるし、僕が作ってきた芝居を向こうもわかってくれる。そうやってお互いがわかりあっていると、すり合わせも早いですよね。

――じゃあ、平田さんがチーフを演じるうえで、今回のキーマンのひとりは三好音響監督だったということですね。

平田 ただ、三好さんが音響監督をしている作品では、今回のチーフほどギャグのおっさんを演じたことはなかったんです。だから、「どうして僕に?」という別の疑問は生まれましたけどね。ただ、新しいキャラクターに挑むのは、楽しいものでした。

――完成したアニメ版をご覧になった感想をお聞かせください。

平田 テンポが良いです。まず久保先生がお作りになった設定がしっかりとしているし、映像が小気味良かったです。個人的には、タイトルロールが入るタイミングが好きすごく練り込まれているように思います。あと、ニニーちゃんとのえるちゃんが会話の途中で急にギャグ顔になるところがかわいいんですよね。『ハイスクール!奇面組』で急に二頭身になるときみたいな……いや、たとえが古いな! バルゴは見ていると腹が立つし(笑)、ニニーちゃんとのえるちゃんはかわいい。小気味良い映像の中で、キャラクターたちがしっかりと性格が描かれているので、どの目線で見ても楽しい。この作品に無駄なキャラクターはいませんから。それぞれのキャラクターに、それぞれ見どころがあると思います。

――やっぱりバルゴは腹が立ちますか?

平田 そりゃ腹が立つでしょう(笑)。「お前のためにみんなが大変なことになっているのに」って。しかも、本人はその大変な状況をほとんど自覚してない。彼みたいな男のまわりにいる人間にはなりたくないですね……でも、彼みたいになれるものなら、なってみたいかな。

――ははは。バルゴのお気楽な感じは、ちょっと憧れるところもありますね。ニニーとのえるだったら、平田さんはどちらが好みですか?

平田 うーん、のえるちゃんはまだわからないところがありますね。ミステリアスなところがあって、そこが魅力的なところなんでしょうけど。チーフ目線でいくと、会話をしていて面白いのはニニーちゃんかな。ちゃんとツッコんでくれるから。ストレートなイジワルもしてくるし。返しやすいですよね。ニニーちゃんものえるちゃんも、今後が楽しみです。

――今回のアニメ版は、久保先生によるマンガ版のシリーズ連載のあと、劇場でイベント上映されるという作品になりました。こういった試みについては、どんな印象をお持ちですか?

平田 面白いですよね。原作版もアニメ版も、今回のエピソードは、壮大なストーリーのアバン(幕前芝居)のような内容になっているので、この先も続くと良いな、と思っています。特にチーフは、この先を描いてもらわないと何者かわからない。かといってチーフが活躍しても華がないので、このままギャグキャラとして終わっていくのも、彼らしくて楽しいかもしれない。チーフがこれからどうなるのかは、これからのストーリー次第です。まずは、久保先生の作品のファンのみならず、今回のアニメを楽しんでもらえると嬉しいです。

取材・文=志田英邦

作品HPはこちら

平田広明(ひらた・ひろあき)
声優。ひらたプロダクションジャパン所属。『ONE PIECE』サンジ役、『パイレーツ・オブ・カリビアン』ジャック・スパロウ役、『宇宙兄弟』南波六太役などを担当する。

BURN THE WITCH

『BURN THE WITCH』Blu-ray コレクターズエディション(初回限定生産)
上映劇場では、10月2日(金)の上映当日より先行販売。
A-on STORE、プレミアムバンダイ内A-on STORE支店では、12月24日(木)より発売。
価格:10,000円(税込)