『池袋ウエストゲートパーク』が生んだカリスマ、「キング」の夢の対談が実現! 内山昂輝×窪塚洋介インタビュー(前編)

アニメ

更新日:2020/10/9

池袋ウエストゲートパーク

池袋ウエストゲートパーク
『池袋ウエストゲートパーク』10月6日より、TOKYO MXほかにて毎週火曜24時30分より放送。Amazon Prime Videoにて毎週火曜 24:15頃~地上波先行・見放題独占配信 (C)石田衣良/文藝春秋/IWGP製作委員会

 10月6日からいよいよ放送がスタートするTVアニメ『池袋ウエストゲートパーク』。原作は1998年から現在まで続く石田衣良の同名小説で、東京・池袋を舞台にトラブルシューターの「マコト」が様々な事件を解決していくストリート系ハードボイルド・ストーリーだ。2000年にはドラマ化され大ヒット、中でもブッ飛んだ強烈なカリスマ「キング」を演じ、熱狂的な支持を集めたのが窪塚洋介だ。今回、そんな窪塚とアニメ版キングの声を担当する内山昂輝の対談が実現。20年の時を経てふたりのキングが出会った!

 

――『池袋ウエストゲートパーク』のファンにとっては堪らない「キング」の対談となりますが、アニメ化決定のニュースを初めて聞かれた時、出演が決まられた時の第一印象を訊かせてください。

advertisement

内山:今このタイミングでアニメ化するんだっていう、まず企画自体への驚きがありましたね。『池袋ウエストゲートパーク』は僕、子供の頃にドラマを親と一緒に観ていて。

窪塚:子供の頃(笑)。

内山:(笑)ええ。すごく印象的な作品だったので。あのドラマの原作がどんなアニメになるんだろうってワクワクしました。

窪塚:内山さんはおいくつなんですか?

内山:今、30歳です。

窪塚:30かあ……僕、今18なんですよ(笑)。

内山:(笑)あのドラマの時はおいくつだったんですか?

窪塚:あの時は20歳です。ちょっと若くなっちゃった(笑)。

――じゃあ、内山さんが10歳くらいの頃のドラマだったんですね。

内山:そうなりますね。

窪塚:時間の流れは怖いですね。もう20年前ですもんね。僕は16でデビューだったんで、『IWGP』をやらせていただいたのは5年目くらいで。

内山:僕も子役から始めたんです。

窪塚:じゃあ3歳とか?

内山:そうですね、まさに3歳から。それからずっと、同じ事務所にいます。

窪塚:うちの娘が今3歳なんで、じゃあ、もういけるってことですよね。

内山:十分狙えますね(笑)。

――窪塚さんはアニメ化にどのような感想を持たれましたか?

窪塚:『IWGP』は以前、舞台もやっていましたよね。あとドラマの再放送も何度かやっていたので、その流れで「ああ、アニメ化もするんだな」っていう。僕がドラマでやったアプローチの仕方というのが原作を無視したというか、全く別の形で演じさせてもらった役柄だったんですよね。だから今回のアニメではちゃんとした正統派のキングが、『IWGP』が観られるのかな、って思いました。

池袋ウエストゲートパーク

池袋ウエストゲートパーク

池袋ウエストゲートパーク

池袋ウエストゲートパーク

ドラマ版の「キング」は異色で異端。僕の生身では、あのラインでしかクリアできない役柄だった(窪塚)

――窪塚版のキングはすごく強烈で人気のあるキャラクターでしたが、影響は受けましたか?

内山:今回のアニメ版は原作のエピソードを基にしていて、なおかつ原作に沿ったキャラクター設定で、というのが既に決まっていたんです。もしもあの窪塚さんのキングのようなキャラクターを今回も求められたなら、またドラマを観て研究して臨んだと思いますけどね。

窪塚:僕も1話を観させてもらったんですけど、本当にもう、「ああ、これが原作の『IWGP』なんだな」っていう感じで。自分がどれだけ異色で異端だったのかを改めて思い知らされるっていう(笑)。

内山:(笑)当時って、どんな雰囲気で撮影をやっていたんですか? キャストの皆さんも、最初から原作とは少し雰囲気が違うということを踏まえて演じられていたのかなって。

窪塚:僕は実は、未だに原作を読んだことがないんですよね。で、そういう状態で初めて台本を読んだ時点で、「これはやばいな」ってなったんです。内山さんはもう演じているからわかると思いますけど、タカシ(キング)っていう男は寡黙で……何だったら裸に革ジャン、裸に毛皮のコートを着てるみたいなキャラクターなわけですよ。「いやいや、俺にはできないだろ」っていうのがまず正直な感想としてあったんです。これをそのままやってしまうと、実写の場合はあまりにもリアリティがなさすぎて、共演者の人たちにまで迷惑をかけてしまう、僕の芝居のせいでヤケドをさせてしまうんじゃないかって。でも、僕が実際に演じたみたいにブッ飛んだ感じのキャラクターにすれば、成立させることができるだろうという直感があって。で、堤(幸彦)監督との最初の顔合わせの時にそう提案したんです。でも堤さんは「いや、ダメダメ!」って(笑)。

内山:(笑)。

窪塚:「だって、原作はこうなんだから」って。でもそこで僕は食い下がって説得して……たぶん、2時間くらい押し問答したんですよ。「ダメ!」「いや!」「ダメ!」「いや!」みたいな。

内山:はははは!

窪塚:で、ついに根負けしてくれたんですよ、堤さんが。「ああもう、じゃあいいよ! その代わり君に全部責任があるからね」って。僕としても、むしろそっち側に責任を持たされるほうが、まだ勝率が高いって思ったんです。とにかく、ストレートに演じたらやばいっていうのは確信としてあったので。実写では、僕の生身では、あのラインでしかクリアできない役柄だったというか。

――じゃあ、あのキングの性格や造形は窪塚さん発信だったんですね。

窪塚:そうですね。で、演じていくうちにみんなが「面白いじゃん」ってなってくれて、徐々に周りの共演者も悪ノリしだして。

内山:へぇー!

窪塚:クドカン(宮藤官九郎)も悪ノリして、そういう脚本を書き始めてくれて……それでアイツ(キング)が生き始めたんです。

――監督との押し問答を、ハタチそこそこでやったというのはすごいですね。

内山:確かに……。

窪塚:生意気だったんです(笑)。最近ちょうど、『情熱大陸』(2001)の自分の動画を観たんですけど、今の僕の倍くらい生意気でしたね。今は人の話も聞けるし、「俺は監督のコマなんで何でも言ってください!」って(笑)。

内山:(笑)。

窪塚:やっぱりアニメとドラマ、声と実写ではアプローチが全く違うと思いますし。実写の怖さというか……もちろん声の怖さもあると思いますけど、あの時点での僕にとっては実写の怖さのほうが、監督やみんなに反抗することよりも怖かったんです。

――実写の怖さと声の怖さ、という点についてどう思いますか。

内山:やっぱりアニメならではの、アニメだからアリになることってありますよね。例えば漫画を実写化する難しさと、アニメ化する難しさは、少し種類が違うと思っていて、いわゆる漫画的なセリフ回しも、アニメだとそのままでもなじみやすいですし。

窪塚:実写は丸見えですからね。逃げようがないというか。例えば『IWGP』をやっていた当時の僕は今よりももっと細くて、胸板なんて少年ジャンプ2冊分くらいしかなかったんですけど(笑)、それで毛皮のコート着ててもおかしいでしょう、と。

内山:なるほど(笑)。

窪塚:説得力がないですよね。そいつがストリート・ギャングを束ねているって説明されても。だって……本物のギャングの方も何人かいたんですよ、撮影には。

内山:ええーっ!?

窪塚:その人たちが来るともう現場がシーン……! みたいな(笑)。

内山:それは……(笑)。

窪塚:で、その時に「ああ、良かった……!」って思ったんです。そういう人たちもいたリアルな現場で、原作通りのキングを演じていたら、絶対に嘘っぽくなっていたと思います。でも、今の自分が演じているこのブッ飛んだキングであれば、彼らを束ねている設定もアリに見えるんじゃないかって。そうしてあのキャラクターのツボがいったん入ってからは、もうNGがない、というか。台本に書いていないことをやろうが、噛もうが、何をしてもNGにならないっていう状態になっていたんで……スーパー・マリオのスターを獲った後みたいな無敵状態で(笑)。

内山:(笑)キングのああいう台詞回しって、どうやって思いつくんですか?台本を読んでパッと浮かぶ感じだったんでしょうか。

窪塚:あれは、アマギン(天草銀)っていう、僕が好きだった漫画(『ウダウダやってるヒマはねぇ!』)のキャラクターと、『キテレツ大百科』のコロ助を足したんですよ。

内山:なるほど。

窪塚:そうしたら、ああいう感じになったんです。アマギンってすごく魅力的な不良のキャラクターなんですけど、そいつだけだとちょっと堅いから、どうにか柔和にできないかって考えていたところでコロ助が出てきたんですね。だからセリフありきと言うよりも、キャラクターありきで作っていったというか。ちなみに髪型はスーパーサイヤ人です。だから3つのキャラクターが混ざってキングができたんですね。

内山:スーパーサイヤ人みたいな髪型にするっていうのもご自分で決めたんですよね。役者さんは普段どうやって髪型を決めるんですか?

窪塚:普段は髪を伸ばしておいています。長ければどんな髪型にも対応できますから。キングでスーパーサイヤ人にした時は大変でした。もう髪がボロボロで。だから全部撮影が終わってから坊主にしたんです。もう、無理!ってなって。

内山:そうやってキャラクター性が決まったらもう、台本を読んだらこういうフロウで、っていうのがすぐ見えてくる感じだったんですか?

窪塚:うんうん。

内山:映画『ピンポン』の話も訊いていいですか? 僕も『ピンポン』のアニメ版でスマイルの声をやらせてもらったんですけど。

窪塚:ああ、あれもアニメやってましたもんね。

内山:あの映画で窪塚さんが演じたペコも、やっぱりキングと同じような流れの役作りだったんですか?

窪塚:あれはでも、むしろ原作に忠実にやろうっていう思いでやったキャラクターでしたね。その日撮る部分の漫画を頭に叩き込んでやるっていう。僕にとっては松本大洋さんが描かれたペコの脳内変換があれだったんです。

内山:なるほど……。

池袋ウエストゲートパーク

絵があって、表情が決まっていて、セリフを言える長さもだいたい決まってるとなると、答えはもうこれしかないだろうって(内山)

――原作に忠実にやられたのは、『ピンポン』が漫画だったからというのも大きいですか?

窪塚:そうですね。

内山:小説は確かに、小説独特の言い回しというか書き言葉だからか、読者として読んでいる時にはあまり違和感がないかもしれませんけど、それをそのまま実写やアニメで自然な会話として成立させるとなると、なんか微妙なズレを感じることがあると思います。脚本家の方は、文章を自然なセリフに変換するということに力を注ぐんだとは思うんですけど。実際に口に出してみた時の、なんとも言えない違和感ってありますよね。その点は声優もですけど、役者さんも書かれたセリフをどうやってリアルな表現として成立させるか、みなさん難しいところなんじゃないかなって。

窪塚:うんうん。昔は僕も結構、現場でいきなりパン!って変えてしまうタイプの役者ではあったんですけど、ある時、『北の国から』の演出家の杉田成道さんとお仕事をさせていただいた時に、怒られたんです。「君は命を懸けて俳優をやってるのか」って。「脚本家も命を懸けて書いているんだから、その人が書いたセリフをそんなに簡単に変えたらダメだよ」って。それを言われてはっ……!っとなって。あともう一つ言われたのが「どんなセリフにも、絶対に言える言い方があるから」って。

内山:ああ、そうですよね。

窪塚:「だからそれを考えろ、それが君の役者としての肥やしにもなるから」って。その杉田さんの言葉にすごく胸を打たれたんです。それで僕も、セリフをなるべく変えないようにしなきゃって考えるようになって……でも、それでも今言ったようにどうしても変えなきゃいけない、変えたいっていう時はあるから、そういう時は現場でいきなり変えるんじゃなくて、前の段階で監督や共演者たちに自分の意見をシェアしてから変えるようになりましたね。

――声優さんの場合はどうですか? 台本にご自身の解釈を入れづらいという認識ですか?

内山:そういう意味ではオリジナリティを出すことは少ないかもしれないですね。アドリブなんて滅多にないし。あらかじめ映像があって、キャラクターの表情や立ち位置、動き方も決まっていて、セリフの長さもだいたい決まっているとなってくると、答えはもうこれしかないだろうって。

窪塚:うんうん。

内山:まあもちろん、その中での微妙な差異が、各声優のオリジナリティだろうし、キャスティングの意義なんだと思いますが、自由度は低いです。

窪塚:僕、一回だけ吹き替えをやったことがあるんですよ。

内山:どうでしたか?

窪塚:それがもう、本当に難しかったんです。内山さんも洋画の吹き替えってやりますか?

内山:はい。

窪塚:どうですか?吹き替えのほうが難しくないですか?

内山:吹き替えは……まあ、大前提として作品によって様々だし、いろんなスタイルや評価軸がありますけど、基本的には独特なノリと言うか、吹き替え芝居に合わせやすい声質とか発声、セリフの言い方がある気がしています。

窪塚:やっぱり吹き替え特有のテクニックがあるんですね。いや、ほんと難しかったんですよね。皆さんプロの声優さんって、本当にすごいんですね。皆さんのスキルたるや。何秒で入れて、この行まで言い終わらなきゃいけないって。

内山:その辺りは慣れの問題も大きいですけどね。ちなみに、アニメの声は興味ありますか?

窪塚:うん、アニメはちょっとやってみたいんですよね。娘がちょうどアニメを観始めている年頃っていうのものあって、「これ、お父さんの声だよ」っていうのをやってみたい(笑)。

内山:(笑)。

――同じ声優のお仕事でも実写吹き替えとアニメでは使うスキルが違うんですね。

内山:少し違うと思いますね。どう説明すべきか、難しいんですけど。たとえば、アニメの現場だったらこれは通用する、って僕が思っていることを吹き替えの現場でやっても、「それはダメ」って修正されることがあります。もちろん、どちらの世界でもご自分のスタイルをそのまま表現して、評価されている方も多々いらっしゃいますが。

窪塚:僕のやった実写吹き替えはテーマも難しかったとは思うんですけど、現場ではもはやテーマなんて一切考えられなくなってましたから。とにかく秒! 頭の中はそれでいっぱい。

内山:わかります(笑)。ほんとそこに左右されちゃう。いくらいい演技をしても原音と長さが違ったらダメですから。

窪塚:「気持ち、すごい入ってたのに今!」みたいな(笑)

内山:そうなんですよね……。その「秒」の問題を最初にクリアしないと何をやっても使えないセリフになってしまうので、そこは声のお芝居の面倒なところだなって思います。

【後編】『池袋ウエストゲートパーク』アニメ化記念、夢の「キング」対談・後編! 内山昂輝と窪塚洋介が語り合う、それぞれの声優観、役者観とは。

作品HPはこちら

取材・文=粉川しの  写真=北島明(SPUTNIK)
ヘアメイク=福島加奈子(内山)、橋本孝裕(窪塚)