フィジカルとバーチャルの狭間をたゆたう5人組。浅沼晋太郎が「学芸大青春」に惹かれた理由

アニメ

公開日:2020/11/18

浅沼晋太郎

2次元のキャラクターをまとっているが、彼らは“作り物”ではない。リアルに存在しながらも、あえて顔は見せない。CGキャラクターの姿で活動する、まったく新しい形のダンス&ボーカルグループ──。

そんな前代未聞のコンセプトを掲げる学芸大青春(ガクゲイダイジュネス)が、今じわじわと人気を広げている。2019年9月に1stシングル『JUNES』をデジタルリリースし、活動を開始した彼ら5人は、スマートフォンアプリ、3Dドラマ、ラジオ番組など多岐にわたる活動でたちまちファンを獲得。今年5月には有料配信ライブを開催し、約1,500名を魅了してみせた。さらに、9月には1stアルバム『HERE WE ARE !』を初のCDパッケージでリリース。11月28日には、5月のリベンジともいえる1stライブ「WHO WE ARE! Return!!」の開催を予定している。

そんな彼らのコンセプトに共鳴したのが、声優・浅沼晋太郎だ。『ヒプノシスマイク』などでボーイズユニットのキャラクターを演じてきただけでなく、演出家・脚本家として数々の舞台を手掛けてきた彼が、学芸大青春に惹かれた理由とは? 学芸大青春主演3Dドラマ『漂流兄弟』への出演も決まった浅沼に、2次元と3次元を行き来する彼らの新しさ、面白さについて話をうかがった。

本人たちが姿を見せていなくても、こんなに“ナマ感”を出せるのか!

──浅沼さんが学芸大青春に出会ったきっかけを教えてください。

浅沼:今年5月に、演出家の渡辺大聖さんから「今こういうライブの演出にかかわっているんです。よかったら見てください」とメールが届いたんです。以前からお仕事をご一緒してきた渡辺さんがライブプロデューサーを務めるとあって、興味を持って拝見したのが学芸大青春の配信ライブでした。それが彼らを知った最初ですね。

──どんなところに面白さを感じましたか?

浅沼:CGキャラクターのライブコンテンツは、これまでにも何度か見たことがありますし、僕自身も携わった経験があります。でも、これまで見てきたものは、あらかじめ声を収録していたところに後からCGキャラクターの動きをつけたものだったんですね。

でも、学芸大青春はリアルタイムでしゃべって、リアルタイムで動いている。なんて言うんだろう、“生きたMC”を目の当たりにしたんです。僕が見たのは配信ライブでしたが、もしお客さまを前にしたライブだったらコール&レスポンスもできていたかもしれない。僕があまりバーチャルYouTuberに明るくないせいかもしれないけれど、僕にとっては新鮮に感じられましたし、ちょっとした感動を覚えました。

何より、メンバー5人の会話が本当にリアルだったんです。僕が声優としてキャラクターを演じる時は、「台本に書かれたセリフをいかにして台本を感じさせずに聞かせるか」を意識します。でも、5人が繰り広げていたのは素の会話。画面を通しているとはいえ、今まさに目の前で彼らが話しているという感じが伝わってきたんですね。僕も演出家・脚本家として舞台を作っている人間なので、「配信でもここまでライブ感を出せるのか。しかも本人たちが姿を見せていなくても、こんなに“ナマ感”を出せるのか!」と驚きました。

──あらかじめ収録した音声か、リアルタイムで交わしている会話か、浅沼さんのようなプロではなく一般の人が聞いてもわかるくらい違いがあるのでしょうか。

浅沼:わかると思いますよ。5人の初々しさも手伝っているのかもしれませんが、「あ、今、素で笑ってるな」っていう感じ、あるじゃないですか。あとは、動きもそうです。CGキャラクターに動きをつけるとなれば、普通は無駄を省くと思うんですよ。

──というと?

浅沼:あらかじめキャラクターに動きをつける場合、例えば誰かふたりが話している時は残りの3人をあまり動かさないと思うんです。話しているふたりに、お客さまの視線を集中させたいですからね。でも、学芸大青春はリアルタイムで動くので、誰かがしゃべっている時でもほかのメンバーが余計な動きをするんです(笑)。無駄な動きがある分、彼らの存在がリアルに感じられました。「あ、彼らは生きているんだ」と感じさせるんです。

──彼らは、実在する人間でありながらキャラクターの姿をまとっています。そのコンセプトについては、どう感じましたか?

浅沼:姿を見せないGReeeeNやMAN WITH A MISSIONのような覆面アーティストに近いものを感じますね。でも、彼らは歌やダンス、演技に興味がある子たちですよね。「表に出たくならないのかな、顔を出したくならないのかな」と思っちゃいました。僕は本業が演出家なので、自分が前に出たいという欲はあまりないんですけど……(笑)。

浅沼晋太郎

『漂流兄弟』は、キャラクターがさらに別の役柄を演じるから難しいし面白い

──浅沼さんは、学芸大青春の3Dドラマ『漂流兄弟』Season2に声優として出演されることが決まっています。本編ナレーションを担当されるそうですが。

浅沼:まさか自分が出演することになるとは思ってもみませんでした。収録は学芸大青春と一緒ではなかったのですが、スタジオで一瞬だけ5人にお会いしました。でも、まさか挨拶すると思っていなかったので、あたふたしてしまって。スタジオが暗かったので、残念ながら顔もあまりよく見えず、「なんかカッコいい雰囲気の人たちが来た」ということしかその時はわかりませんでした(笑)。

──共演者なのに、一般の方々と同じくらいの距離感ですね(笑)。

浅沼:本当にそうなんです。「あ、ライブのMCで聞いた声だな。陽介君かな?」ぐらいの感じでした。今回の取材のスタッフに、彼らがドッキリで混ざっていてもわからないと思います(笑)。

──『漂流兄弟』は、バーチャル空間で撮影された3Dドラマであり、学芸大青春の5人が樹根洲(じゅねす)家の兄弟に扮するコメディです。台本を読み、このコンテンツにどんな面白さを感じましたか?

浅沼:学芸大青春のキャラクターデザインを手がけている冨士原良先生は、僕が声を担当している『A3!』(イケメン役者育成アプリ)でもキャラクター原案を担当されている方です。ですから、勝手な親近感を抱きましたね。しかも『A3!』と同じように、キャラクターがさらに役を演じるわけじゃないですか。例えば僕は茅ヶ崎至というキャラクターを演じていますが、『A3!』はその茅ヶ崎至がさらにランスロットやアリスの帽子屋を演じるというマトリョーシカのような入れ子構造になっているんです。

──学芸大青春で言えば、生身の相沢勇仁君がCGキャラクターの勇仁君になり、さらに『漂流兄弟』の樹根洲ユウを演じている。そういう点で共通していますね。

浅沼:そうなんです。「彼らも僕らと同じことをやるんだ」と思いました。デビュー間もないうちから、いきなりハードルの高いことにチャレンジするわけですから、「大変だな」と感じましたし、「幸せだろうな」とも感じました。絶対、難しいだろうと思うので。

──普通に役を演じるだけでなく、その先を考えなければいけないということですか?

浅沼:“先”というより“横”ですね。自分が演じているキャラクターの振り幅、声のトーンを踏まえたうえで、そのキャラがほかの役柄を演じるとどうなるか考えるので。例えば普段ゆったりしゃべるキャラクターが、早口の役柄を演じる時にはどうなるのか。キャラクターを踏まえたうえで、どう演じるべきか考えなければなりません。キャラクターソングを歌う時にも、「僕の地声ならここまで高いキーを出せるけれど、それだとキャラクターの声を保つことはできない」みたいなことがあるんです。それに近い気がします。

『漂流兄弟』に関しては、学芸大青春の5人に限りなく近い役柄が振り分けられているでしょうし、口調もそこまで素の彼らから離れてはいないと思いますけれど。でも、いきなりすごく難しいところに連れていかれたんだな、と思いました。僕が配信ライブで感動したMCの“ナマ感”を、今度は決められたセリフでどう自然に見せるのか。そこが彼らの頑張りどころではないかと思います。

浅沼晋太郎

テクノロジーだけでもアイデアだけでもない、“ナマ感”を高めるプラスαに期待したい

──いろいろと変わったことにチャレンジしている5人ですが、演出家目線で「こんなことしたら面白いんじゃないか」というアイデアはありますか?

浅沼:フラッシュアイデアですが、この5人で舞台をやったら面白そうですよね。正直、彼らなら何でもできるじゃないですか。僕らは生身の人間なので、殺陣のシーンでも体を真っ二つにすることはできません。でも、彼らなら実現可能ですよね。まあ、ファンのみなさんはそんなことを求めてはいないと思いますが(笑)。ほかには、空を飛んだり巨大化したりすることも、イリュージョンのように一瞬で姿を消すことも簡単にできます。簡単にできるからこそ驚きは弱まりますが、生身の人間と同等、あるいはそれ以上のインパクトを出せるような演出ができたら面白いでしょうね。ただ奇をてらうのではなく、僕ら生身にできないことをいかにインパクト強くできるかに焦点を当てて、舞台を作れたらすごいものができそうです。

あとは、ライバルキャラとして「都立大青春」を登場させるのはいかがでしょう(笑)。ちょっと憎めない、ポンコツな悪役がいたら面白いんじゃないかな。

──確かに、フィジカル面での制約が少ないのは大きな利点ですね。

浅沼:単純にうらやましいと感じるのは、早替えが簡単にできてしまうことです。彼らなら、1回転するだけで服が変わる演出もできるはず。僕ら生身の人間は、歌舞伎の引抜(ひきぬき)のように、上に着ている衣装をバッと取り去って服を着替えるくらいしかできません。それも、舞台上にスタッフさんに出てきていただき、手伝ってもらわないとできませんから。

場面転換も一瞬ですよね。僕が演出を考える時は、場面転換をどうするか何日も悩むことがあるんです。「着替えが間に合わないから、この人のセリフをもう少し伸ばすか」「このシーンを後にもってきて、出番がない間にゆっくり着替えてもらうか」と考えるのが大変で。その点、学芸大青春は無限の可能性が感じられますよね。

それに、役者は新型コロナウイルス感染症やインフルエンザにかかったら、稽古も舞台もしばらく休まなければなりませんよね。でも、彼らは万一そういう事態になっても、ものによっては「ごめん、君だけ家から出演してくれる?」ということもできそう。それはちょっとうらやましいですし、このご時世にもマッチしていると思います。

──CGキャラクターは、解像度を高めてリアルに近づけようとする傾向があります。でも、そうではないアプローチも考えられるということですね。

浅沼:高解像度のCGやキャラクターの滑らかな動きって、見ているほうはどんどん慣れていくんですよね。3Dアニメ映画も数年前に比べて格段に進化していますし、それを見慣れた観客は「もっともっと」とクオリティの向上を求めるようになります。そんな中で、一定水準のクオリティを満たさなくてはならないのは当たり前のこと。それに加えて“そこに生きている感”を表現するには、例えば僕が感動したライブのMCの“ナマっぽさ”のようなプラスαが必要だと思うんです。

視覚や聴覚以外のところでリアルを感じさせるような何かが存在すれば、人はそこに惹かれるでしょうし、クオリティの高いCGキャラクターに慣れた人でも、「これがあるから学芸大青春が好きなんだ」と感じると思うんですよね。それは、バーチャルお話会のように彼らの存在を身近に感じられるようなものかもしれないし、もしかしたらファンの方々の想像力に助けられて成り立つものかもしれません。テクノロジーだけでもアイデアだけでもない、プラスαに期待したいですね。

──彼らは生身の人間でもあるので、2次元と3次元を行き来できますよね。そのうえで、どういったアプローチをすると、より魅力が伝わると思いますか?

浅沼:活動が広がれば、「君たちイケメンなんだから、もっと表に出ればいいのに」という声も増えてくると思うんですよ。でも、「そうじゃないんだよ。このビジュアルでやるのがいいんだよ」という確固たるものをどこかで出せたらいいですよね。MAN WITH A MISSIONだって、今ではもう「あの狼の姿だからいいんだよ」となっているじゃないですか。同じように、CGキャラクターの姿だからできることを突き詰めてもいいのかもしれません。

──「3次元の彼らを見たい。でも見られない」というもどかしさも、人気の一因になっているように感じます。

浅沼:想像で補完するからこそ、彼らの魅力が引き立つという部分もあるのかもしれません。声の仕事も、かつてはそうでしたよね。以前は、顔を出さない裏方に近いお仕事でした。でも、今や顔を出してのイベントやライブは当たり前。人によっては、ドラマやバラエティ番組にも出演しています。声優のあり方がどんどん変わりつつある中、学芸大青春はさらに次の先駆けになる可能性も大いにあるんじゃないかと感じています。

僕はこれまで20年以上にわたって脚本家・演出家として活動してきたので、やっぱり「生身の人間がお客さまの前でお芝居をする」という表現が終わってほしくはないんですよ。CGキャラクターが生身の人間にとって代わるのではなく、それぞれの良さを発揮してほしいと願っています。僕自身、大学で映像を勉強してきたので、映像とリアルな舞台、どちらの良さも経験しているつもりです。ナマの舞台の力を信じているからこそ、学芸大青春にはフィジカルとバーチャル、どちらの良さも活かしたコンテンツになってほしいですね。

──いろいろと可能性が感じられますね。

浅沼:2.5次元の舞台が生まれた時も、新しいジャンルだと思いました。僕も何度か演出させていただきましたが、やっぱりオリジナルの舞台とはまったく別の、新しいコンテンツとして捉えています。

それと同じように、学芸大青春も新たなジャンルの先駆けになったら面白いだろうなと思うんです。彼ら自身も、歌って踊れる方々ですよね。そこにテクノロジーをかけ合わせたら、とんでもないアクションシーンも作れるはず。さらに、プラスαを加えればとてつもなく新しい存在になれる。2次元と3次元を行き来する彼らならではの表現に期待したいです。

学芸大青春 1st LIVE『WHO WE ARE ! Return!!』
■日時:11 月 28 日(土) 17:00 開場 18:00 開演

Official HP https://gjunes.com/
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Official YouTube https://www.youtube.com/c/GAKUGEIDAIJUNES/

取材・文=野本由起 写真=中野敬久
スタイリング=ヨシダミホ ヘアメイク=ito
衣装=シャツ¥26,000(ato)/Sian PR