10年以上の共演歴を持つふたりは、互いの芝居に何を見たのか――『ホリミヤ』戸松 遥×内山昂輝対談

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公開日:2021/1/10

ホリミヤ
TVアニメ『ホリミヤ』 TOKYO MXほかにて毎週土曜24:30より放送中 (C)HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・「ホリミヤ」製作委員会

 ついに放送がスタートしたTVアニメ『ホリミヤ』。原作マンガの『ホリミヤ』は、WEBコミック『堀さんと宮村くん』から作画を新たにリメイクされた作品だ。メインキャラクターの堀と宮村を中心に、魅力的な登場人物たちの掛け合いと青春模様が楽しい映像作品に仕上がっている。ぜひ、たくさんの方に、この作品に触れてほしいと思う。ダ・ヴィンチニュースでは、先行して配信したコミック『ホリミヤ』の試し読み&原作者対談に続き、メインキャストたちの対談・座談会や監督の言葉を通して、TV『ホリミヤ』の楽しさをお届けしていきたい。

 キャスト対談の第1回に登場してもらったのは、堀 京子役・戸松 遥&宮村伊澄役・内山昂輝。10年以上前から共演歴があるふたりならではの、息の合ったトークを披露してくれた。このふたりが演じるのなら、『ホリミヤ』は、きっとこれからどんどん面白くなっていく――そんな期待を抱かせてくれる対談になった。

戸松さんのお芝居は昔から完成されていたし、ずっと一線を走っている人のイメージ(内山)

――おふたりは原作のコミックに触れて、どういう印象を持ちましたか?

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戸松:1ページ目を開いた瞬間から世界観に引き込んでくれる、魅力がある作品だなあ、と思いました。恋愛的な要素にドキドキしたりキュンキュンさせてもらったり、それぞれの登場人物のちょっと重い過去も含めて、ひとりひとりのキャラクターを掘り下げているところに共感できました。あと、個人的に中高が女子校だったので、こういう青春を送りたかったなって(笑)。いろんな感情にさせてくれるし、たくさんのことを考えさせてくれる作品だな、と思います。

内山:ベタな話ですけど、自分の高校時代のことをいろいろ思い出しましたね。各種行事の様子が描かれるシーンはどれも懐かしく感じたし、いろんな登場人物が出てきて個性豊かで面白い上に、男性キャラクターも女性キャラクターも等しく描かれていて、どちらかの目線から見た世界だけではなく、それぞれを深く掘り下げていくのが興味深かったです。

――堀と宮村は、第一印象でどういう人物なのかはわりとつかみやすかったんじゃないかと思うんですけど、演じていくうちにどんな発見がありましたか。

戸松:堀さんはいい意味で裏表がない子で、そこがすごく彼女のいい部分だし、カラッとしてサバサバしていて、誰とでも分け隔てなく接するところが、宮村と距離を近づける機会のひとつにもなっていると思います。逆に宮村は、話が進んでいくごとに、一体この人はどこまで見せてくれるんだろうっていう興味がどんどん湧いてくるタイプで。そこは、読んでいてもどんどん続きが気になりますね。

内山:アフレコが全部終わって振り返ってみると、宮村という人が世界に対して今までになかった一歩を踏み出す物語なんだなあ、という風に思っています。堀さんとあまり親しくなかった序盤から、ふとしたきっかけで出会い、家に通うようになって、仲良くなって、その交流を通して彼はいろんな表情を見せてくれました。全編を通して、なだらかな変化をしていったな、と感じています。

――宮村は変化していくけど、どう変化するか宮村自身は知らないわけじゃないですか。変わっていく彼を演じる上で大事にしたポイントは何でしたか。

内山:まずはやっぱり、高校生の子であるっていうことですかね。けっこうその年代の子たちって、「学校が世界の全部」みたいにとらえがちで、そこで問題が起こると「もう人生終わったあ」って思っちゃうけど、大人の視点から見ると「卒業しちゃえば、全く会わない人とかいるし」っていうことも分かる。そういう視点や考え方の違いというか、高校生のキャラクターが見てる景色を自分のセリフで表現できればなあと考えていました。

――まさに、中高生はその日学校であったことが世界のすべてだったりしますからね。「誰々に○○って言われた~」みたいな。

戸松:ほんとにそう(笑)。

内山:しんどいですよね。俺も中学の頃、あの科目がイヤだからこの曜日嫌い、みたいなのありましたよ。

戸松:あったあった。

内山:でしょ? そういう彼らの世界は、今はちょっと他人事だけど、そうではなくてリアル!今!みたいな瑞々しい感じが、作品から感じられるといいな、と思っています。

――以前、他作品の対談に出てもらったとき、まさに内山さんはその話をしてましたよね。高校生だったときからだいぶ時間が経ってる高校生を演じることの難しさ。逆に、そこには演じ手として楽しさもあると思うんですけど、おふたりはどう感じてましたか。

戸松:やっぱり、役者として楽しいところって、リアルの自分だったら経験できなかった出来事を、役を通してまた体験させてもらえることなんですよね。それこそ、人じゃないものを演じるときもありますし(笑)。高校生の役を大人になってからも演じることも、実際の自分はもう戻ることはできないけれども、たとえば自分の人生経験を活かしてできる役もあったりします。特に堀さんは、高校生ですけど高校生を超えた貫録を持ってるタイプの子だったりするので(笑)、今の自分だから演じられる部分もあるのかな、と。わたしがもし17歳だったとしたら、たぶんその貫録は出せなかったと思いますし。

――確かに、家事をバキバキこなす女子高生は理解できなかったかも(笑)。

戸松:そうそう(笑)。意外と、もしほんとにリアルタイムだったらできなかったのかも、と思うこともあるので、そのときそのときのご縁や、今の自分だから演じられるのだろうと思うようにしています。

内山:たとえば5年前とか10年前とか、高校生にもうちょっと近い年齢の時期は、普段の自分ならどういう言葉遣いをするかな、どういう表情の変化があるかなって自分自身のリアルをたぐり寄せて、それをセリフに絡ませるような感じで表現すると、本物っぽさとか生々しさをキャラクターに加えられるんじゃないかな、と思っていました。でも、今30になって、たとえばTikTokとかに一切興味を持てない自分がいて(笑)。『ホリミヤ』自体は2020年代を描いているわけではないし、リアルさがアニメにどれくらい必要かという問題もあるんですけど、以前まで使っていた手法がもう使えなくなってきたなと思っています。

――おふたりはわりと共演の機会は多いんですか。

内山:どうなんでしょう。でも、なんか昔から知っています。

戸松:そう。

内山:10代の姿も知っているし、20代前半でも仕事しているし、要所要所で共演して、会うとけっこうしゃべることも多かったし。

戸松:うん。それこそ成人してからは――。

内山:そう、お酒飲んだりすることもあったし。

戸松:でもそう思うと、ガッツリ掛け合うパートナーの役はそんなにないよね。1作品くらい?

内山:確かに。

戸松:某ロボットアニメではふられたしね、わたし。

内山:そうね。闇堕ちっぽいムードもあった。

戸松:なんか、うっちーの役にふられる役が多いです(笑)。『屍鬼』でもふられたし。

――それこそ、その某ロボットアニメは10年以上前だったりするわけですけど、お互いのお芝居や現場での居方はずっと見てきたわけですよね。改めて『ホリミヤ』でガッツリ掛け合ってみて、どういう印象がありましたか。

戸松:うっちーは、昔より話すようになったと思います(笑)。

内山:(笑)どういうこと?

戸松:そりゃあ芝居でしゃべらなかったらヤバいけど(笑)。10代のときは、もっと無口なイメージがあったんですけど、けっこう満遍なく他の人にも話しかけている姿を見たりして、「なんか大人になったなあ」って思いました(笑)。

――昔はそうじゃなかった?

戸松:全然!

内山:(笑)。

――孤高の存在だったんですね(笑)。

戸松:そうそう、孤高の存在からすごく変わってましたね(笑)。

内山:(笑)戸松さんは、あまり変わらないですね。まあ、多少落ち着いた部分はあるのかもしれないですけど、印象は変わらないです。ずっと陽気な人っていうイメージ(笑)。

戸松:ずっと陽気な人が、そのまま大人になっちゃった(笑)。

内山:戸松さんのお仕事は昔から完成されていたし、ずっと一線を走っていらっしゃるイメージです。女性声優と男性声優のキャリアの積み重ね方には違う部分があるのかな、とよく思っていて、それぞれに難しさはあると思うんですけど、そんな中でもずっと走り続けているという意味で、力がある方だと思いますし、実際に一緒にお仕事をしていてもやりやすいですし……うん、いい人だと思っています。

戸松:いい人?(笑)。いい人だと思ってくれてるの?

内山:そうそう。

戸松:ありがとう。

――おふたりはリアルに高校生だった頃から高校生を演じてきてますよね。最前線で戦い続けるために必要なこと、大事なことってなんですか。

戸松:なんだろうなあ……なんだろう? わたしは今まで、何をしてきたんだ(笑)。

内山:(笑)自分に関しては、最前線の人だとは思えないですね。でも、変わったところとしては、やっぱりコミュニケーションを重要視するようになったことですかね。キャスティングでも収録でもそうですけど、「なんでそうなったんだろう」がすごく気になる。だから、シチュエーションにもよりますけど、ただ指示を受けてやってみるだけじゃなくて、「どういう感じがほしいですか」って、より話し合うようになったかもしれないです。

戸松:ちょっとわかるかも、それ。

内山:仕事がスムーズに進む・進まないって、コミュニケーションのシステムに原因があるんじゃないかと思うんですよ。そこで「なんで?」と思って――こう、世界を解明したいんです(笑)。

戸松:(笑)すごいねえ。思ったより壮大だ。

内山:「なんで俺はここにいるんだろう」「なんでこうなってるんだろう」とか。

戸松:それ、最終的に宇宙に行くよ。

内山:(笑)世界が知りたいね。世界というか、社会の仕組みというか。

戸松:今、話を聞いていて、わたしも「自分で正解を見つけるのはやめよう」って考えている部分はすごくあるな、と思いました。それを判断するのはわたしじゃないし、それこそ監督や演出さん、制作チームの方がOKかどうかを決めることだから。たとえば自分の中でいいものが出せた!ってドヤ顔で調子に乗っていたとしても(笑)、判断するスタッフさんたちに「もう1回ください」って言われたら、「なんでですか!」とは思わないですし。お芝居の出し方に関して、正解を決めるのは自分じゃないと思っているので、自分が「今のでよかったのかな?」と思ったとしても、監督さんたちが「OKです」って言ってくださったら「そうなんだ」って思うし、そう思いながらやってきたところはあります。で、今うっちーが――世界にひとり、だっけ? ごめん。

内山:バカにしてるでしょ?(笑)。世界を解き明かしたい。その仕組みを知りたいわけよ。

戸松:勝手にひとりにしちゃってごめん(笑)。でも、話を聞いていて、「ああ~、確かに」って思いました。だから、それこそキャラクターの説明も、役者が話していることだけが全部正しいとは思っていなくて。それこそ原作があるものだったら先生が考えたものが正解だし、オリジナル作品だったら、やっぱりいろいろな方たちが関わって、そのキャラクターを作り上げているので、「この子はこうです」っていう固定概念みたいなものを――持たなすぎるのはどうかと思うんですけど、持ち過ぎることは絶対にやめようって思っています。いい意味で8割くらいというか、ちょっと余力を残しておかないと、変化だったり、「こうしてください」って指導があったときに変えられなくなっちゃうので、そこはいい意味で余裕を持たせて臨もう、と思っています。

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一期一会のお芝居、その瞬間にしか出なかったお芝居を、視聴者の方にも感じてもらえたら嬉しい(戸松)

――戸松さんが出してきた堀像に内山さんが感じること、内山さんが出してきた宮村像に戸松さんが感じたこと、お互いの演技について「おっ、そうくる」みたいなエピソードがあれば教えてください。

戸松:それこそ宮村はいろんな一面があるので、家で準備しているときも、どれくらいのエネルギー感でぶつけてくるのか想像がつかないことがあったし、現場に行って知ることは多かったです。そういう意味では、見せる面が広い宮村は毎回のテストが楽しみでもあり、自分が作っていった堀さんも、まったく違うものになったりすることが多かったと思います。

――宮村を相手にすると、堀は対応力を問われますよね。

戸松:そうなんですよ。パッと見は、堀さんのほうが振り回しているように見えるんですけど、意外と宮村にも翻弄されている部分はあると思います。普通にストレートに「好きだよ」って伝えるのも、堀さんは恥ずかしがるタイプなんですけど、宮村はストレートに「好きだよ」って伝えてくれたりするので、そうやって翻弄される部分は、お芝居をしていても楽しかったです。

内山:戸松さんは、まずキャラクターに合っていますよね。それがやはり大事だし、パッと無理なく自然に発した感じの声が、堀さんにピッタリ合っていて。なので……とっても良い。しかもとても生き生きとした雰囲気で、大変素晴らしいんじゃないかな、と思いました。

戸松:(笑)ありがとうございます。

内山:なんか、他の人が思い浮かばないというか。

戸松:おおっ。唯一無二的な?

内山:そうそう。

――最上級の褒め言葉ですね。

戸松:いやあ、ほんとにそうですね。わたしの好きな言葉は「唯一無二」なので、嬉しいです。「ここがよかったよ」って言われるのももちろん嬉しいですけど、「代わりがいない」って言われるのが役者としては嬉しいことですね。

内山:替えが利かないって、大事だと思いますよ。

――唯一無二であることを続けてきた結果、今もやり続けられるっていう。

戸松:わあっ、嬉しい。そうだといいなあ(笑)。

――内山さんが言語化してくれましたね。

戸松:もっと言ってね、機会があるときに。

内山:言う言う。

戸松:よろしくね。

内山:うん。

――(笑)。

戸松:いや、面白いなあと思いました。わたし、逆にうっちーが演じていることに最後まで気づかないことが多いんです、好きな作品があって、原作も読んでるんですけど、ラストのほうでうっちーがやってることに気づいたときは感動しましたね。

内山:なんですか。

戸松:他作品なので伏せますが、クレジット見たら「うっちーじゃ~ん」って(笑)。

内山:ずいぶん前じゃない?

戸松:そうそう。でも、わたしが観たのは半年くらい前なの。

内山:自粛期間?

戸松:そう。原作でもすごく好きなお話だったんですけど、最後の最後で、そのキャラクターが退場する2話くらい前にうっちーだと気づいて。

内山:エンドロールをずっと飛ばしてたんだね。

戸松:そう、エンドロール見てなかったの。「誰々さんだ」と思って見ちゃうと、「誰々さんだ」になっちゃうから。

内山:あー、確かに。

戸松:すごく感動しました。

内山:ありがとうございます。

――何年も前から共演し続けてきて、今回メインキャストを一緒に担当したお互いへのメッセージをお願いします。

戸松:ふたりともいい大人になって、このタイミングでふたりとも高校生の役で、こうやってペアの役ができたのは、いい機会でした。自分自身も堀さんを通して、もう一回青春というか、自分がリアルで経験できなかった青春を体験することができたと思います。すごくいい映像ができたと思っていますし、アフレコも、本番の勢いそのままに、それほどリテイクもなく使ってくださっているところも多いと思うので、一期一会のお芝居というか、その瞬間にしか出なかったお芝居を、視聴者の方にも感じてもらえたら嬉しいです。で、うっちーには、なんだろうな……今度、飲もう。

内山:そうだね(笑)。

戸松:会話が「元気?」とか「寝てる?」とか、健康の話がメインになってきたのが、寂しいような気もしつつ(笑)。

内山:戸松さんとは、今回のお仕事も大変楽しくやらせていただきましたし、すごくお仕事もやりやすいです。替えの利かない人であり続けることは難しいことですけど、戸松さんはそういう人だと思いますし、これからもそうあり続けてくれたらいいな、と思います。あと、何かあるかな……。

戸松:そんなにわたしのことを話したことない、考えたことないよね、きっと。

内山:いやいや、人についてはよく考えていますよ、「この人ってこういう特徴があるなあ」とか。

――世界の答えを知るには、まず人からですね。

戸松:あっ、深い。

内山:うん、けっこう考えますよ。なんだろうな、そうね……もう特にないかなあ。

戸松:ないんかいっ(笑)。考えるって言った直後にないんかい。

内山:じゃあ10年後、40になったときに――『あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。)』でさ、10年後になんとかって歌があったじゃない。あの10年後、もうすぐだよね。

戸松:そうだよ。今年だったかな?

内山:なんかそういうところで、時が経つのは早いなあ、と思うんですよね。

戸松:よく知ってるね。

内山:いや、ほら、俺『ここさけ(心が叫びたがってるんだ。)』出てたから。

戸松:そっか。『ここさけ』はもうちょっと先だもんね。

内山:だから、今から10年後また仕事を一緒にしていたら面白いな、と思いますけど。でも、わかんないもんね、人生。今や10年後の世界はどうなっているのかなあって普通に思いますし。

戸松:(笑)結局そういう壮大な話になる。いいじゃん、「40年後も、共演しようね」みたいな。

内山:いや、そんなリアリティのない話はちょっと。

戸松:(笑)。

内山:戸松さん、たとえば一生豪遊して暮らせるくらいのお金があったら、仕事する?

戸松:するする。

内山:豪遊だよ?

戸松:でも豪遊もする。

内山:豪遊して、もう何にもしなくていいですって言われても?

戸松:ドバイの石油王みたいなことでしょ? そうなったとしても、豪遊はするけど、仕事もする。うっちーは仕事しないでしょ?

内山:いや、俺、そういう身分になってみたいの。そういうときに自分は何するのかなって興味がある。

戸松:それを想像することが楽しいってこと?

内山:そうそう。そういう状況を、10年後につくれていたらいいな。基本的に、なんもしなくていいわけよ。

戸松:豪遊してみれば?

内山:豪遊してもなあ~。

戸松:じゃあ、家買いなよ。

内山:家、いいね。

戸松:うん。そういう大きい買い物をしよう、10年後はもう40だし。

内山:ということで、まずは『ホリミヤ』をみなさん観てください!

戸松:全然きれいに締まらなかったよ、最後(笑)。

内山:(笑)『ホリミヤ』、ぜひよろしくお願いします!

TVアニメ『ホリミヤ』公式サイト

取材・文=清水大輔