毎週更新! みんなで語る『バック・アロウ』特集③――エルシャ役・小澤亜李インタビュー

アニメ

更新日:2021/2/5

バック・アロウ
TVアニメ『バック・アロウ』 TOKYO MXほかにて毎週金曜24:00より放送中 (C)谷口悟朗・中島かずき・ANIPLEX/バック・アロウ製作委員会

 信念が世界を変える! 壁に囲まれた世界リンガリンドに、謎の男バック・アロウが落ちてきた。壁の外から来たというその男をめぐり、リンガリンドの人々が動きはじめる――。『コードギアス 反逆のルルーシュ』を手掛けた谷口悟朗監督、『プロメア』や『キルラキル』の脚本を手掛け劇団☆新感線の座付き作家としても知られる脚本家・中島かずき、『サクラ大戦』シリーズや『ONE PIECE』の楽曲を手掛ける田中公平が組む、オリジナルTVアニメ作品『バック・アロウ』が放送中だ。

 信念が具現化する巨大メカ・ブライハイトを駆使して、壁の外へ帰ろうとするバック・アロウ。その彼をめぐってリンガリンドの国々は、さまざまな策謀をめぐらしていく。ものすごいテンポ感とともに、壮大な世界が紡がれていく「物語とアニメの快楽」に満ちた、この作品が描こうとしているものは――? オリジナルアニメ作品ならではの「先が読めない面白さ」を伝えるべく、『バック・アロウ』のスタッフ&メインキャストのインタビューを、毎週更新でお届けしていきたい。

 第3回はエッジャ村の村長の娘・エルシャ・リーン役の小澤亜李に話を聞いた。機装顕現してブライハイトになり、エッジャ村を導いていく存在になっていくエルシャを、どのように演じたのだろうか。谷口監督作品でヒロインを演じたこともある彼女が、この作品に懸けている想いを語ってくれた。

advertisement

中島脚本で口上ができたことが、役者としてすごく嬉しかった

――『バック・アロウ』はオリジナルアニメ作品です。最初にこの作品と出会ったときは、どんなところに興味をお持ちでしたか。

小澤:オーディションのときに資料で世界観の設定とキャラクターの説明をいただいたのですが、やはり「信念で戦う」というところに大きなインパクトを感じました。

――小澤さんは、谷口悟朗作品にどんな印象をお持ちでしたか。

小澤:谷口さんの作品では、『アクティヴレイド -機動強襲室第八係-』(花咲里あさみ役)でメインをやらせていただいたことがありました。そのあと『ID-0』(ファルザ役)で動物を演じたり、いくつかの作品に参加させていただいたことがあります。谷口さんの作品はもちろん原作ものもあるけれど、私はオリジナル作品でご一緒させていただいていることが多いです。役者目線で言うと、やっぱりキャラクターを演じていて、とっても面白いんです。個性もあるけれど、人間くささがしっかり描かれていて。ほかのキャラクターも、素敵なんだけど、どこかにダメ人間の一面があるんです。フィクションではあるのですが、どこかに「こういう人がいるよね」と思えるキャラクターがいて。作品にひとりはヤバいヤツがいます(笑)。役者として演じたくなるキャラクターがたくさんいますし、作品にテーマがしっかりありつつ、監督のユニークさが光っていて、唯一無二の作品だなと思っています。

――中島かずきさんの脚本の作品に出演するのは初めてですよね。台本をご覧になっていかがでしたか。

小澤:中島さんが書いた劇団☆新感線の舞台は、何度か拝見したことがあったんです。キャッチーだし、二次元と三次元の合間にあるようなお芝居で、すごくエンタテインメントな作品を作る人だという印象がありました。今回は、アニメに落とし込まれてはいるのですけど、舞台のときに感じたものと同じで、パワフルさがあって、スピード感がすごいです。私はあまり戦闘シーンが多い作品や、戦闘シーンに携わる経験が少ないのですが、今回は戦闘前の口上ができたことが、役者としてすごく嬉しかったですね。口上は自分が想像していた以上にエネルギーが必要なんだなと思いましたし、これまで口上を演じてこられた先輩方のすごさを何倍も感じました。

――谷口監督は収録前にメインキャストを集めてみなさんに作品の説明をする機会を設けたそうですが、小澤さんもその説明会には参加したんですか?

小澤:そうですね。基本的な説明は資料でいただいているのですが、谷口監督はその紙面では伝わらないことを、言葉としてかみ砕いて説明してくださるんです。今回はキャラクターもオリジナルなので、収録をするにあたり注意すべきことをお話してくださいました。

――どんなお話があったのでしょうか? 印象に残っていることをお聞かせください。

小澤:「今回は大人も観るだろうから、絵の芝居と声の芝居が統一されていなくても良い、ふたつの感情が混在していても良い」という話があったんです。「アニメの絵でキャラクターが泣いているように描かれていても、もしかしたら明るい芝居を要求する可能性もある。絵と合わなくて、不思議だと思うかもしれないけれど、そういう指示もあると思うのでディレクションに従っていただければ」という話がありましたね。

――絵と芝居が合わなくても、ふたつの感情を混在させていい。すごいディレクションだと思うのですが、小澤さんはどのように受け止めましたか。

小澤:人間って、考えていることはひとつじゃないですよね。もちろん感情と表情が一致する時もあると思うし、一致させる芝居が正しいことも多いんですけど、ふたつの感情を入れるという奥行きを作るのはすごいなと思いました。見ている人が受け取ってくれるという信頼があるからできることだと思いますし、ミスに受け取られるかもしらないからこそ挑戦的だなと思いました。

――谷口監督から小澤さん自身に何かリクエストはあったんですか?

小澤:私は別作品では動物役をやっていたのですが、今回は人間役に昇格しているんです(笑)。「ダメだったら動物に戻すから、頑張ってください」と谷口さんから言われました(笑)。

――キャストのみなさんは、ストーリーの先の展開は伏せられていたんですよね?

小澤:そうですね。ストーリーは事前に教えてもらうということがなくて、各話ごとに台本をいただいてストーリーをたどっていく感じだったので、驚くような展開がある人もいました。

バック・アロウ

バック・アロウ

バック・アロウ

バック・アロウ

最終話まで収録をしても、まだ謎が多い世界観に惹かれる

――エルシャ・リーンは、バック・アロウが落ちてきたエッジャ村の村長の孫娘です。彼女にどんな印象をおもちでしたか。

小澤:台本をいただいたときに、エルシャの言葉尻の強さを字面から感じていましたし、彼女のキャラクターのビジュアルも釣り目がちで立ち姿も堂々としているので、とても強くて引っ張っていく女の子という印象があったんです。でも、現場でテスト収録をしたときに「あまり相手を責めないでください。人に優しく、愛を持って」という指示をいただいて。見た目はかなり攻めた感じになっているんですけど、すごく優しい等身大の女の子なんだと思いました。今回、年齢の概念がないので、年上や年下というのは何とも言えないですけど、村で助け合って生きているから、誰に対しても優しいんだろう、なと考えていました。

――エルシャはエッジャ村の人たちをまとめる存在でもありますよね。

小澤:エルシャは親友のアタリーと絡むシーンが多いんですが、中島さんの大きな芝居の印象と対照的に、声を張らずに繊細で、すごく近い距離感で、相手を思いやる芝居も多くあったので、とても振り幅の大きいキャラクターだなと。繊細なディレクションも多くいただいたので、とても良い経験をさせてもらったなと思っています。

――この記事が出るころにはオンエアが始まっていますが、ストーリーにはどんな印象を抱いていますか?

小澤:第1話からキャラクターがたくさん出てきて、嵐のようだなという印象でした。私は関係者向けの試写会で拝見したんですが、本当におもしろくて体感時間では1話が15分くらいに感じました。展開もスピーディだし、お芝居のテンションも高い。これを一週間に1話ずつオンエアするのは、次を観たくて我慢できなくなるんじゃないかと思いましたね。

――空からバック・アロウが落ちてきて、エッジャ村の人たちはいきなり食べようとする。すごい世界ですよね。

小澤:そうなんですよね(笑)。びっくりしたのが、この世界にはレトルト食品があるんですよね。最終話まで収録をしてみても、まだ謎が多い世界観なんです。

――エッジャ村の人たちは、荒野でツノトカゲを捕まえて食べているようですしね。

小澤:リンガリンドは壁に囲まれていても広いので、それぞれの国は独自の文化を持っているんですよね。エッジャ村は辺境の土地なので、独自の食文化なのかもしれませんけど、そういうところも面白いと思いました。

――そんなエッジャ村に落ちてくるバック・アロウという人物の印象はいかがでしたか。

小澤:アロウは強くてまっすぐで、カッコいいんです。「信念はない」と言いながらも、ブレることなく突き進んでいくキャラクターなので、やはり作品のタイトルを背負っているような存在感がありましたね。物語を動かすような原動力を感じました。生まれたての子ども的なまっすぐさもありつつ、言っていることに納得させられてしまうような一面もあるな、と思いました。

――信念が巨大メカとして具現化する「ブライハイト」がある世界観にはどんな印象をお持ちでしたか。

小澤:ブライハイトにはそれぞれ信念に合わせてかたちが違って、女性にはかわいくてキレイなタイプと、スレンダーなタイプがあるんです。エルシャのブライハイト〈シャドウ〉は、スレンダーな感じで、船に刺さりやすそうなかたちをしている(笑)。ブライハイトのデザインをしていただいた天神(英貴)さんにもお話を伺ったのですが、信念という目に見えないものをかたちにするうえで、玩具になったときにもちゃんと刺さることを想定されたうえでデザインしているとおっしゃっていたので、これからどんなデザインのブライハイトが出てくるのか、ぜひ楽しみにしてほしいです。

――『バック・アロウ』には、たくさんの登場人物がいます。エッジャ村の人々、レッカ凱帝国の人々などで気になる人物、楽しい人物はいますか?

小澤:レッカ凱帝国のゼツ凱帝(ゼツ・ダイダン)が怖いんですよね。武力こそが誉れの国を率いる人ですからね。すごく静かにしゃべっているキャラクターなんですが、その人が怒ったらどんなふうになるんだろうと、気になっていました。あと、シュウ・ビが好きですね。あのキャラクターの雰囲気で杉田(智和)さんが演じるというのが、最初はイメージできなかったんですけど、第1話を収録したときに、あのつかみどころのないキャラクターの感じを杉田さんが見事に演じていらして、さすがだなと。普通の人間のリアクションじゃなくて、コミカルなんですよ。何を考えているのかわからないのに、憎めないところもあってとても魅力的です。

――アフレコはいかがでしたか。

小澤:私は、こういうエネルギッシュな現場に参加する機会があまりなかったので、自分にとっても大事な時間になりました。収録中はすごく集中しているので、収録前にお腹を膨らませて現場に入っても、終わるころにはお腹が空いていました(笑)。たぶん現場では私が一番新人なので、とても勉強になることが多かったです。中島さんとも初めてでしたが、コミュニケーションをすごく取ってくださる方で。私もパワフルなシーンに心配があったので、そういうシーンがあったときに中島さんが「良かったよ」と言ってくださって、とても安心できました。コロナ禍で一緒に収録ができなかったときも、収録後にオンラインで集まれる人で集まって、作品のお話をたくさんできて良かったです。中島さんが毎回、洲崎(綾)さん(アタリー・アリエル役)をいじるので(笑)、すごく楽しい雰囲気で、収録がバラバラになったときもチームワークを深めることができました。

――『バック・アロウ』の中盤以降のストーリーで楽しみにしていることをお聞かせください。

小澤:谷口さんから「あなたは変だから」とよく言われていて、谷口さんの作品では変なキャラクターを担当することが多かったのですが(笑)、今回はそれとは全然違っていて。視聴者の目線に近いポジションのキャラクターを担当できて嬉しいな、と思っています。普通の人間と小さな村が世界中の猛者たちと渡り合っていく物語を、一緒に楽しんでもらいたいです。

――小澤さんのインタビューの次回は、ビット・ナミタル役の小野賢章さんのインタビューになります。小野さんへのメッセージをお聞かせください。

小澤:賢章さんのコミカルなお芝居は、私は今回初めて拝見したんですが、完成したアニメを観てビットが本当にかわいらしいなと思いました。あのかわいらしい感じは、まさに賢章さんの力だと思います。話を聞いたら、賢章さんはビットの演技をするときに、3パターンくらい用意して収録に臨まれたそうなんです。アロウの存在感に負けない、ビットのお芝居もぜひ、注目してほしいです。

『バック・アロウ』特集 第4回(小野賢章インタビュー)は1月23日配信予定です。

TVアニメ『バック・アロウ』公式サイト

取材・文=志田英邦