桜井玲香「私とは正反対の女性」ミュージカル『GHOST』モリーを演じる思いとは？ 《インタビュー》

本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』4月号からの転載です

　ミュージカルで魅力的なのはヒーローだけじゃない!　ヒロインから超有名犬の役まで、2021年東宝注目作品に出演するキャストにお話をうかがいました。

　キャプテンとして乃木坂46を引っ張ってきた桜井さんがグループを卒業したのは、2019年9月のことだった。たったひとりで新たなスタートを切り、掲げた目標は「俳優になること」。そんな桜井さんが、3月5日から始まったミュージカル『GHOST』でヒロインのモリー役に抜擢された。

「18年に上演された際、観劇された方たちから『すごく良かったよ！』と評判を聞いていたんです。でもどうしても都合がつかず、観に行けなくて、とても悔しい思いをしました。だから、再演するときは絶対に観に行こうと決めていたんです。それがまさか、出演する側になるとは想像もしていなかったので、お話をいただいたときはビックリしました」

　原作は1990年に公開され、世界中で大ヒットした映画『ゴースト／ニューヨークの幻』だ。

「初めて映画版を観たときは、ちょっと怖かったんです。ラブストーリーなのにサスペンスの要素も強いし、ホラーが苦手なのでどうしよう……と思いながら観ました（笑）。でも、あっという間に引き込まれて。切ないしハラハラするし、とにかくストーリー展開が早い。気づけば終わっているような、それくらい夢中になる作品でした」

　演じるモリーは、桜井さん曰く「私とは正反対の女性」だという。

「男性と対等に向き合っていて、自立している。とても芯が強い女性。でも、私はどちらかというと気弱で、たとえばキャリアのある役者さんの前に立つと緊張してしまうところがある。きっとモリーだったら、どんな人の前にいても堂々とできるはず。それを表現するためには、自分の気弱な部分や自信を持てないところを押し殺す必要があると感じています。同時に、今回は再演ということもあって、前回から続投されるキャストも多いので、未経験者の自分がそのなかに入って食らいついていけるのかも不安ですが、浦井健治さん、森公美子さんなど、過去に共演させていただいた方々もいらっしゃるので、少しだけホッとしています」

　話題作への出演によって、得られるものも多いだろう。

「これまで、ちょっとキャラの濃い役柄を演じることが多かったのですが、モリーは一番ナチュラルな女性だと思います。だからこそ難しいとも思うのですが、演じきったら成長できるかもしれない。それに原作ファンの方に、桜井玲香を知っていただく機会だとも思うので、できるだけ多くの方に私を知ってもらえたらうれしいです」

　そして、ミュージカルにあまり触れたことがない人に対し、こんなメッセージを贈る。

「音楽は素晴らしい力を持っています。ミュージカルは話している途中で突然歌いだすので、人によっては違和感を覚えるかもしれませんが、だんだんとそれが癖になる。衣装も舞台美術もきらびやかですし、キャストも日々進化していく。新型コロナウイルスの影響もあってなかなか劇場に足を運びにくいとは思いますが、少しでも興味があったら、観に来ていただきたいです。自分を信じて、明日から強く生きていこうというメッセージが込められた作品になっていると思います」

取材・文：五十嵐 大　写真：山口宏之
ヘアメイク：田村直子　スタイリング：風戸ますみ