古田一紀「演技を楽しむためにうまくなりたいって気持ちが一番」【声優図鑑】

アニメ

更新日:2021/3/22

古田一紀

キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第261回目に登場するのは、『遊☆戯☆王SEVENS』の霧島ロア役、『ディズニー ツイステッドワンダーランド』のカリム・アルアジーム役などを演じる古田一紀さんです。

『ミュージカル・テニスの王子様 3rdシーズン』の越前リョーマ役など舞台を中心に活動した後、声優の仕事をきちんと学ぶために転向を決意した古田さん。2017年から本格的に声優の道へと進み、すでに注目作品にいくつも出演しています。演技を上達させるために、まずは「現場でリラックスすること」が今の目標であり、25歳の抱負だそうですが…。

——舞台など顔出しのお仕事を続行しながらではなく、声優に“転向”されたと。それだけ声優という仕事に魅力を感じたということでしょうか。

古田:声だけで役や世界観を作り込める声優さんの演技のすごさに感動したのもありますし、「一つの役を自分が最初に演じたい」っていう気持ちもあって。原作のある作品で最初に作られる映像作品はアニメが多いので、その役を最初に演じることを一番できそうなのが、声優なのかなと思いました。

——TVアニメ『遊☆戯☆王SEVENS』(2020年〜)の霧島ロア役では、早速その願いが叶っています。

古田:はい。「こう演じたい」という気持ちからスタートできるのって最初に演じる人の特権で。そう思いながら演じたものが、世の中に出ていくのはうれしいです。それに、もともと『遊☆戯☆王』が好きで。小さい頃からずっとカードを集めていたし、自分が出演するようになってからまた集め始めました。もともとフィギュアとかアニメグッズを集めるのが好きで、まさに今ハマっているのが『遊☆戯☆王』。しかもロアのカードは強い。デュエルで自分が演じているキャラクターのカードを使うのは不思議な感じがしますけど(笑)。

——子どもの頃から『遊☆戯☆王』のファンだと。では、出演が決まった時の感想は?

古田:この上なく幸せでした。ロアは、自分が演じていなかったとしても一番好きだった役。13話ではスペシャルエンディングテーマ『ミニスケープ』も歌わせてもらいました。

——ロアは人気バンドのリーダーで、デュエルにも強いキャラクター。ロアのどんなところが好きなんですか?

古田:努力しているところですね。もともとスター性があったわけではなく、ロアの人気はそれまでの努力に支えられているんです。しかも、努力してきた姿を見せることはなく、当然のごとく振るまっているのがとても魅力的です。一人称が「俺様」って…そういうところも好きです(笑)。

古田一紀

——ゲーム『ディズニー ツイステッドワンダーランド』(2020年〜)のカリム・アルアジーム役も、今の古田さんを代表するような役ですが。

古田:友だちに「どんな仕事してるの?」って聞かれた時に、「ツイステ」で通じるので、素直にうれしいです。名刺代わりというか。ストーリーもめちゃくちゃ楽しいですからね。先が予想できなくて次は何がくるんだろうって気になるし、人間のダークなところまでを描いているじゃないですか。個人的にもそういうお話が好きなんです。

——カリム役は演じてみてどうですか?

古田:普段、役を演じる時にあんまり自分を重ねないんですけど、性格でいったら真逆です。カリムは、簡単な言葉でまとめると明るくて大らか。僕は卑屈なほうなので(笑)。だからこそ演じやすいです。役に自分が混じらないんですよ。

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——そうなんですね。そして『フットサルボーイズ!!!!!』(南雲竜役)ですが、実際にキャスト本人がフットボールの試合にも挑戦するという興味深いコンテンツですね。

古田:キャラクターありきの作品ですけど、キャスト仲間と一緒に練習するのが今すごく楽しいんですよ。チームに所属するのが『テニミュ』ぶりなので。仕事とはいえ、大人になってから時間を合わせて集まることってあんまりないじゃないですか。試合前は、公式の練習以外にも夜の公園に集まったりして。それが楽しくて、今いちばん頑張ってることの一つかもしれないです。

——古田さんが所属する恒陽学園高校のチームはどんな感じですか?

古田:コロナ禍になる前は練習の後にみんなでご飯食べて、『遊☆戯☆王』やって。ホームみたいな感じです。せっかく関わっている作品だからうまくなりたいし、やらないという選択肢がない。試合の結果がストーリーにも反映されるみたいだから、やっぱり勝ちたいです。

古田一紀

——古田さんはスポーツ万能ですから。

古田:高校でバスケ部でしたけど、足でボールを扱ったことがないし、フットサルって難しいんです。今もできないことばっかり。でもスポーツって毎日練習しないと難しいと思うから、信じられないくらい台本を抱えている時以外は、一人でも公園で練習してます。サボったら必ず表に出るし、自分もできない感覚があるとイヤだし。お芝居と同じで、できないことって楽しくない。楽しむためにうまくなりたいって気持ちが一番にあります。

——今演じているのはオーディションで受かった役が多いと思いますが、舞台などのオーディションと違うところも?

古田:自分の体が出ない分、一つの役を演じる役者の年齢層が広いんです。すごい先輩たちと同じ役を争うことがあるから、それはハードルが高いです(笑)。だから、声優として役を得るのは本当に難しいなと思います。今演じている役はどれも、受からない、受からない、受からない…の積み重ねでようやく受かった役ばっかりです。

——受けるオーディションの数も増えましたか?

古田:じつは舞台ではほとんどオーディションを受けてなくて。だから、声優になってから、「この役がやりたい!」と思うのに選ばれないのは、悲しいなと思いました。こういう感じの痛みだったな…ってタレント活動を始めた頃を思い出しました。

古田一紀

「完全なオフ」って一生ないでしょうね

——では、お休みの過ごし方を教えてください。

古田:ほんっとに疲れている日は小説を読みます。今読んでいるのは『天使の囀り』っていうホラー小説。めっちゃ面白いです。ホラーが好きで、怖いんですけど楽しめるタイプ。

——「これだけは見ないほうがいい」っていうホラー作品を挙げるなら?

古田:『残穢』。小説も読みましたけど、あれは怖い。海外の作品に関してはホラーしか観ないような感じで、最近だと『ミッドサマー』が面白かったです。ただ、グロいジャンルは苦手。『ソウ』のシリーズとか、痛そうなのはめちゃくちゃ怖いです。

——最近のお休みはフットサルも忙しそうですが。

古田:そうですね。結局、休みの日も習い事やルーティンワークを入れているし、レギュラーの台本を抱えているから、何もしなくていい日ってなかなかないですね。今日はオフ!って決めない限り。プレッシャーは常にあるけど、何もすることがないよりはいいかな。たぶん「完全なオフ」って一生ないんでしょうね。

——それでもイヤじゃない、ということですか?

古田:休むのは自由だけど、その時に他の誰かが努力していると思うと奮い立ちます。そんなことでは、実力の差が一生縮まらないだろうから。何もできなかった日はひどく気持ちが落ち込むので、だったら何かしていたほうが精神的にもラクです。

——声優さんとプライベートで会うことは?

古田:声優同士だと仕事仲間の延長という感じがして。プライベートで遊ぶ相手は、学生の頃の友だちが多いです。教職をしている友だちとか。違う業界の友だちと話していると視野も広がるし。でも、フットサルのメンバーとは休日にも時間が合えば会います。

——誰が声を掛けることが多いんですか?

古田:俺です! 本当にありがたいですよね。みんな遊んでくれて、たまに涙が出そうになります(笑)。

古田一紀

舞台を含め、今までの経験を演技に活かしたい

——声優のお仕事がどんどん増えて。これからの展望はありますか?

古田:先のことはわからないけど、今目指しているのは演じる時にリラックスできるようになること。ある程度の緊張は必要だけど、過度にはいらないと思うんですよ。緊張すると周りの声が聞こえなくなるし、自分の声も動かなくなるので。これは25歳の抱負でもあります。そのために何ができるのか考えたんですけど、やっぱり練習と経験あるのみ。成功体験を増やしたいですね。それから、現場に誰も知り合いがいないと余計に緊張しちゃうから、関わったことのある人を増やして、自分が演技しやすい環境を整えていきたいです。

——古田さんにとって、リラックスすることがいい演技につながるんですね。

古田:そうですね。自分のできる演技を100%楽しみながらできるようになりたいので、そのためにまずリラックスできるようにならないと。たぶんあと20年くらいかかるんじゃないですか? 40年かな。いつかは、マイクの前で喋っているだけっていう、息をするように演技ができる声優になりたいです。

——声優になって良かったと思うことは?

古田:まずはやっぱり『遊☆戯☆王』に出られたこと。ロアというキャラクターを見ていると、「やっぱり素敵だな」と思えて。舞台を続けながらでは、ここまで自分で満足できるような表現をするのは難しかったと思います。まだまだですけど。もちろん、監督さんがいてスタッフさんがいて、ディレクションに沿って役作りをさせていただく仕事だし、お芝居する相手や観てくださる方の意見もありますけど。

——今まで舞台でやってきたことが活かされることもありますか?

古田:演技って、その人が何を経験してきたのかが大事だと思うんです。演技が面白い人って、普段も面白いから。自分はどこにでもいるような声だからこそ、違いを出すためには普段何をしているかが大事だと思っていて。技術はまだ未熟だけど、他の人とは違うバックボーンが、自分のコントロールできないところで演技に反映されているのかも。それは武器にしていきたいなと。舞台に立っていたことは、いい経験になっていると思います。引き続き、毎日するべきことをしてがんばりますので、これからも見ていてください!

——古田さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】古田一紀さんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

古田一紀

古田一紀

古田一紀(ふるた・かずき)マウスプロモーション所属

古田一紀(ふるた・かずき)Twitter

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=麻布たぬ、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト