『らんま1/2』の乱馬役でもお馴染みの声優・山口勝平×茜親子が『宇宙なんちゃら こてつくん』で共演! オーディションから収録まで《インタビュー》

アニメ

公開日:2021/5/12

山口勝平・茜

 NHK Eテレにて毎週水曜日、好評放送中のアニメ『宇宙なんちゃら こてつくん』。続々とキャストが発表されるなか、主人公・こてつのじいちゃん役に山口勝平さん、こてつの友人・おたま役に勝平さんの実娘・茜さんが決定し、親子初共演が実現することでも話題を呼んだ。今回は放送を記念して、特別に親子対談を実施していただきました!

取材・文=立花もも 撮影=GENKI(IIZUMI OFFICE)

親子そろって大ファンだった原作WEBまんが。オーディション結果の連絡がきたときは、そろって……

山口勝平(以下、勝平) 僕はそもそも、にしむらゆうじさんの大ファンで、LINEスタンプも普段からめちゃくちゃ使ってるんですね。なので、なんとしてでも今回のアニメには関わりたいと思っていたから、じいちゃん役に決まったのは本当に嬉しかったんですけど……あの、実を言うと合格の電話をもらったとき、家で昼寝していまして。決まったときは、かなり夢うつつの状態だったんです(笑)。

(左)主人公・こてつ(右)じいちゃん

山口茜(以下、茜) そのとき、私も隣で寝ていて。お父さんに起こされて、おたま役に決まったのを教えてもらったんですけど、あんまりピンときてなかった(笑)。

勝平 いろんな意味で夢見心地だったね。2人そろってにしむらさんのファンで、アニメ化が決まる前から原作のWEBまんがも読んでいたし。

advertisement

 冷静になったら、ひえ~!っておののいちゃいました。私はどちらかといえば、せっかく大好きな作品のオーディションがあるなら受けてみたい、っていうダメもとの気分だったので。お父さんはかなり本気で役をとりにいっていたけど。

勝平 こてつ役は女性声優さんで進めたい、って要綱に書いてあったのに、どうしてもやりたくて申し込んじゃいましたからね。しかも、1人1役って言われていたのに、じいちゃん役と両方。茜にも、どうせならこてつ君を受ければ?って言ったんだけど。

 私は、最初からおたましか見えてなかった。おたまは宇宙食の開発にいつも一生懸命なんだけど、ちょっと抜けてるところがかわいいんですよね。

勝平 しっかりしているのか、ぼんやりしているのか、わからない。

 でも心根はすごくアツくて。その頑張りに触れていると、まわりの子たちがいつのまにか笑顔になってる。読んでいる私たちも、笑顔になれる。そういうところがすごく好きなんですよ。

勝平 にしむらさんの描くキャラクターはほんとどれもかわいいんですけど、僕はやっぱりこてつが大好き。じいちゃん役になって何が嬉しいって、これでなんの気兼ねもなくこてつを溺愛できること。今日もね、こてつ(のぬいぐるみ)と写真が撮れると聞いてやってきました。

 ちがう、ちがう! お仕事だから!

――こてつ君のどこがそんなにお好きですか?

勝平 全部! なんだけど、具体的にはどこだろうなあ。こてつって、ぐいぐい引っ張っていくタイプじゃないし、とびぬけて何かができるわけでもないんですよ。でも、自分にできることは何かを考えて、まわりの力を借りながら、実行にうつそうとする。そうやって一歩一歩、前に進んでいく姿に読んでいると肩入れしてしまうし、きっと誰もが、自分と似た部分を見つけられるんじゃないのかなと思います。あと、こてつの友達もみんなかわいくて、いい奴で。

 こんな友達ほしい!って思いますよね。意外とみんな、めざしているものが違うのもいい。同じ宇宙アカデミーの生徒だけど、こてつはパイロットになるために勉強していて、おたまは最高の宇宙食とは何かを常に追求している。目標は違う、だけど宇宙というひとつの夢に協力しながら近づいていく……っていう描かれ方が好きです。

勝平 個性バラバラのチームが努力して夢を叶えていく姿というのは、やっぱり、胸を揺さぶられますからね。読む人、観る人のどこかしらにきっと刺さる作品だと思います。

宇宙なんちゃら こてつくん

宇宙なんちゃら こてつくん

独特の言葉づかいで醸し出されるゆるさが、あったかくて優しい世界をつくりだす

 じいちゃんとか、校長先生とか、モツ煮屋の店長さんとか、こてつたちを見守る大人もいいですよね。みんな、優しい。

勝平 基本的に、優しい世界。校長先生のダジャレにはね、みんな、しらーっとなっちゃうけど(笑)。それもまた、いい。にしむらさんの作品って、スタンプもそうなんだけど、キャラクターたちが本当に表情豊かなんだよね。

 ときどき、ちょっぴり毒もあるんだけど、独特の言葉づかいがそれを緩和してくれる。誰も傷つけない表現だし、どこを切りとってもいやな気持ちにならないのがすごいなって思います。

勝平 言葉づかい、いいよねえ。『こてつくん』の44話で「秘密がな、 こう結社してんだよ、 けしゃって」っていうおたまのセリフがあるんだけど、「けしゃっ」て音がかわいいし楽しい。

第44話「歴史的」

 聞いたことのない音なのに、ほかのどんな言葉よりもしっくりくるから不思議。セリフだけじゃなくて、効果音とか吹き出しの外にある手書きのつぶやきとか、いろんな言葉でお話をゆるくかわいくコーティングしてくれる。

勝平 タイトルも、宇宙という壮大なテーマが「なんちゃら」という言葉によって、絶妙にゆるくなっている。こてつが「ちょっくら宇宙に行ってくる!」って言うと、「ほんとに行けるかも」と思わされてしまうんですよね。こてつだけじゃなく、僕たちにとっても、宇宙が身近に感じられるというか。

――原作WEBまんがでとくに好きなエピソードはありますか?

勝平 全部好きだけど、マラソン大会のときに描かれた、こてつとじいちゃんの思い出はよかった。マラソンが苦手なこてつのために、じいちゃんが自転車で並走しながら練習してくれるんだけど、熱血コーチ風に進んでいくのに、最後は「おわったらつけめん食おうな」とか言うの。けっきょくそれかい! っていう(笑)。あとは……茜はどれが好き?

第35話「マラソン」

 私は、文化祭のエピソード。おたまがモツ煮やさんとコラボした屋台を出すんだけど、アランくんっていうエリートの男の子が「世界一うまい料理はフレンチだ」ってバカにするんだよね。「宇宙食もフレンチだけあればいい」って。対してこてつは、おたまの料理をかばうだけじゃなくて、「フレンチはお楽しみに1食くらいでいい」って言う。それが、すごく優しいなあって。

第23話「おいしいのに」

――「フレンチなんて気取った料理はいらないよ!」じゃなくて。

 そう! たまには食べたい、ってところが素直でかわいいし、相手を否定しないあったかさがありますよね。

勝平 エピソード全体よりも、そういう小さな場面にグッとくるんですよね。あとはほんと、なにげないところ……セリフもないような場面で描かれるキャラクターたちの表情が絶妙なので、隅々まで読んでしまいます。

山口勝平・茜

同じスタジオで収録するプレッシャーは?

――お二人そろってそれほど好きな作品で初共演、というのは、かなり感慨深いものがあるのでは。

勝平 それはもう。ただ、同じスタジオにいるというのは不思議な気分ですし、嬉しさ半分、こそばゆさ半分ですね。じいちゃんとおたまの絡む場面はまだないので、一緒に収録したわけじゃないんですけど……やっぱり、見ているだけっていうのはすごく大変です。どんなに難しいセリフでも、自分がやるほうがどれほどラクか(笑)。

 私はあんまり、お父さんに見られているから恥ずかしいってこともなくて。私にとってはやっぱり「お父さん」なので、声優としての先輩って意識もほとんどないんですよ。友達とかに「アニメは観ないけど、山口勝平さんの名前は知ってるよ!」って言われることも多かったから、そういう意味ではすごい人なんだなって思うけど……。

勝平 そういう意味って(笑)。

 あとは、声優になってからの現場で「勝平さんの娘なの!?」って先輩方から驚かれつつ、親切にしていただくことも多いので、すごくいい人なんだなとも思いました。なんかえらそうな言い方になっちゃうけど(笑)。なんて言うんでしょう、現場でも好かれている人なんだってことをひしひし感じて、嬉しかった。

勝平 悪い意味で「あの勝平の娘かよ!」ってなったら、そりゃ、いやだよね。

 うん、嫌われてなくてよかった。でも、性別が違うせいもあるのかな。比べられることもほとんどなかったから。「意外と背が大きいんだね」っていうのはよく言われますけど。

勝平 身長は小学校の高学年くらいですでに抜かれていましたからね。

 父の娘であることが、プラスに働くことばかりなので、逆に気負わずにいられたのかなと思います。何事に対しても、父が頭ごなしに怒ることはないし、「やってみな?」って感じで見守ってくれますし。アドバイスが欲しいと思っても、「よかったよー」しか言ってくれない(笑)。

勝平 だってそれはさ、人によって感じ方が違うから。本人が「こうだ」と思った表現に対して、僕個人の意見を押しつけてもなあと思うんですよね。それは娘や息子に対してだけでなく、若い後輩たちに対しても同じ。言ってしまえば、無責任なんですよ。結果を出すのは僕じゃないし、その責任をこちらに委ねないでねっていう気持ちもある。ただ、この仕事はやっぱり、自分がどう感じてどう表現したいと思ったかがいちばん大事で、聞いて教えてもらうよりもまず自分で考える癖をつけなきゃいけないと思うから。

 私も、私なりに考えながら、表現を探していきたいと思います。とりあえず、おたまを演じるにあたっては頑張らなきゃいけないことだらけで。特定の方言じゃないんですけど、ちょっとした訛りのある設定なんですよね。にしむらさんがアフレコにいらっしゃったとき、直接、アドバイスもいただいたんですが、難しくて。

勝平 まあ、できることを一つひとつ積み重ねながら、にしむらさんの優しい世界観をつくりあげていきたいですね。新しいにしむらワールドを世に送り出すお手伝いができることが、僕は何より嬉しいので。このアニメを観て、宇宙飛行士になりたいって子供たちが出てきてくれたら、嬉しいなあ。

 全国放送、しかもEテレさんなので。WEBまんがの読者はどちらかというと大人のほうが多かったかもしれないけど、一人でも多くの子供たちが楽しんで、しかも宇宙に興味をもってくれたら最高だなと思います。

――ちなみに……。今回、キャストが発表された際に、『らんま1/2』で乱馬を演じていた勝平さんの娘さんが「あかね」だ! ということで沸いていましたが。

勝平 まあ、全然ちがう……というわけでもないんですけど。候補のひとつが「茜」で、『らんま1/2』もやっていたし縁のある名前じゃないかってことで、決めた理由のひとつっていう感じですね。ただ、ネット上であまりに沸いたんでびっくりしちゃいました。

 いやいや、注目はこてつのほうだからー!ってなったよね。

――そうですよね。作品の外の話なので迷ったのですが、ファンは気になるところでもあるので聞かせていただきました。ありがとうございます。

勝平 まあ、気になりますよね(笑)。

――では最後に、共演者としてお互いにメッセージがあれば。

勝平 いやあ……茜のほうがメインキャストで羨ましい! っていうのはありつつ(笑)、「まあ、頑張ってね~」。

 「は~い。頑張るね~」(笑)。

勝平 とりあえず僕は、NASAの方々の目に留まるまで、そしてじいちゃんのグッズが出るまで頑張りますので、みなさんどうぞよろしくお願いいたします!

あわせて読みたい