「あなたのためを思って」SNSでよく見かける“アドバイス型マウンティング”が厄介な理由とは?

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更新日:2021/7/2

 こんにちは。臨床心理士/公認心理師の白目みさえと申します。平日は精神科でカウンセラー業務をしながら、SNSなどで漫画の連載をさせていただいております。皆さんは、日頃SNSを使っていてお困りのこと、ストレスを感じることがありませんか? 本稿では臨床心理士の視点から、「SNSでのマウンティング」について私の思いをお伝えできればと思います。

マウンティングってなに?

マウンティング

 マウンティングとは、わかりやすく言うと「自分を上げて、他人を下げる行為」です。

 SNSでも見かけませんか? たとえばちょっとした夫の愚痴をツイートすると、

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「そんな夫を選んだあなたが悪い(私は選ばないけどね)」
「私の夫はとっても優しいよ(私は幸せで良かった)」
「夫に○○してあげたらいいのに(私ならもっとかしこくやるけど)」

 といった「知らない人から」の突然のマウンティング。

 すべて「あなたは愚か、私はそんなことしない」と優位に立とうとしていることが伝わってきますね。

 そういうことが言える間柄ならなんら問題はないのです。私も子どもに対して「そんなことしちゃダメだよ。こうしようね」と教えることはあります。でもそれは子どもが愚かで私が賢者というわけではありません。子どもに対して「教える」という責任を負っている親だから教えているのです。

 また仲の良い友達に対してオタクな知識をガーッと披露してしまうこともありますが、それは一時的にそんなことをやってしまっても許される仲だから。でも、SNSでマウンティングをしてくる人は大体「知らない人」なわけで。こちらが教え諭して欲しいと頼んだわけでもなければ、相手がこちらを育てる責任を負っているわけでもない。マウンティングをする人はなぜ見知らぬ人に急に上から目線で物申すのでしょうか。

マウンティングをする理由

 マウンティングをする理由はただひとつ。「自分に自信がないから」です。

 人と比べて自分が優位に立っていないと不安なのでマウンティングをします。つまり劣等感の高い人、普通にしていると周りの人よりも劣っていると感じている人がマウンティングをするのです。

 周りから見れば満たされているように見えていてもそれはあまり関係ありません。その人自身がいつも自分のことを「下」だと認識しているので、周りがみんな「上」に見えています。だからこそ、誰かにマウンティングして「自分よりも下のひとがいる」と安心しようとするのです。

マウンティングの種類

 ひとくちにマウンティングと言っても種類があります。SNSでよく見かけるものを筆者なりに分類してみました。いろいろなケースがあると思いますが、私が特に気になったのは以下のタイプです。

1 自虐風自慢型

 自分はこんな目に遭ってるの…と自虐しているように見せかけて自慢をするタイプです。たとえば「キラキラしたワーママでいいな♪うちは夫が稼ぎすぎてて働けないので羨ましい…」のように、さも自分が夫に束縛されてつらいと嘆いている風を装っていますが、本当に伝えたいのは「夫がお金持ち」という点です。本当に働けなくて苦しんでいるのであれば、聞かれてもいないのに「夫が稼ぎすぎてるから」を言う必要はありませんよね。「いいなあ」と言われているのにまったく羨ましがられている気がしないという場合はこちらのタイプかもしれません。

2 自己中心型

 いわゆる会話泥棒ですね。「今私が話していたでしょうが!」と言いたくなるやつです。共感したり相手の話題に関連させて「私もこんなことがあった!」と言うのではなく、「私の方が大変!」「私はもっとすごいことしてるけどね!」と、コメント欄で張り合ってくるタイプのマウンティングです。この手のタイプは自分以外の誰かが注目されている状況を見つけるとどこからともなく湧いてくるのですが、そのセンサーの敏感さには目を見張るものがあります。

3 自称サバ子型

「自称サバ子」サバサバ女子タイプは「サバサバ」と「無神経」を履き違えていらっしゃるので、「何を言ってもいい」と無双モードになっており、心ない一言をなんのためらいもなくお届けしてくれます。素材本来の味を楽しんで欲しいと産地直送ばりにそのままの形でやってくるのです。頼んでもいないのに。知り合いならある程度許されるかもしれませんが、大体見知らぬ人に産地直送してしまうので、「うちの親なのかなってくらい偉そうなあなたはどちら様?」となるのです。

4 訂正大好き先生型

「字間違ってる」「日本語の使い方おかしい」などのミスを逐一指摘してくるタイプです。肝心の結論で真逆のことを書いているなど、本筋に関わるところであれば指摘するのはむしろ優しさだと思いますが、「今この流れの中でそれそこまで大事?」と思えるような本筋とはなんら関係のないところでも、逐一鬼の首をとったかのようにコメント欄で「あなたは間違ってる!」と言うのは、優しさではなくマウンティング目的と言えるでしょう。この場合指摘をされた側が「明らかに間違っている」ので、最も簡単にマウンティングができる方法ですね。

 一言で「マウンティング」と言ってもあれこれ種類があリます。でも私が最も厄介だと思っているのはこちらです。

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