『わかつきめぐみ迷宮探訪』収録の“ワケあり”コメディがついに単行本化!『古道具よろず屋日乗』には描き下ろしの「最終回」も収録

マンガ

更新日:2024/2/28

古道具よろず屋日乗
古道具よろず屋日乗』(わかつきめぐみ/白泉社)

 2024年2月20日(火)、ベテラン作家・わかつきめぐみの新刊『古道具よろず屋日乗』が発売された。

 1982年に『春咲きハプニング』でマンガ家デビューしたわかつき。それ以降も『月は東に日は西に』や『ぱすてると~ん通信』などの人気作を次々と生み出し、1990年代には『So What?』で「第21回星雲賞コミック部門」に輝いている。その繊細な絵柄や魅力溢れる作品世界は、これまで多くの人を魅了してきた。

 そんな“わかつきワールド”は、もちろん今作でも顕在だ。もともと『古道具よろず屋日乗』は2021年刊行の『わかつきめぐみ迷宮探訪』に掲載されていた作品だが、今回の単行本には本編に加え、描き下ろしの最終話が収録されているという。

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 物語の舞台となるのは、ワケありの品を預かる不思議な古道具屋。そこでは何かが憑いているいわくつきの品を預かり、その憑き物が落ちたら持ち主に返すという不思議な商売をしている。とはいえ古道具屋の二代目若旦那である冬耶(とうや)は、まだ先代から店を引き継いだばかり。いつも半端なことをしては、一代目から仕える気の強い女中・トメにどやされてしまう。

 たとえば第1話で冬耶のもとに預けられたのは、手のひらほどの小さな巾着。預かった後、巾着に何かのタネが入っていることに気づいた冬耶は、なんの気なしにタネをまいてしまう。翌日タネを植えた植木鉢からは、女性の姿をした謎の植物が生えていた――。

 いったい彼女は何者なのか、なぜ植物となって現れたのか。口の悪いトメにドヤされながらも、預かり物の「ワケ」を知ろうと四苦八苦していく。

 中でも特筆したいのが、冬耶とトメの関係性だろう。同作の舞台は明治が終わり、まだ雇われの女中たちが忙しく働いていた時代。一般的にトメのような住み込みの女中は主人に意見することはないのだが、冬耶とトメの場合は女中と旦那サマの立場が逆転している。

 トメは「旦那サマのアタマは飾りモノか!!」「言い訳する前にやれよ!」などと、冬耶に厳しい言葉をかける毎日。しかしときにその言葉が冬耶の心を動かし、思わぬ答えに導くことも。そんな2人のヘンテコな関係は、物語の面白さを引き立てる大事なエッセンスとなっている。

 ちなみにカバーイラストや、四季の植物のフレームもすべて描き下ろし。わかつきの繊細で優しい筆致を楽しみつつ、新米主人とスパルタ女中の奮闘劇を見届けてほしい。

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