所要時間のないToDoリストなんて意味がない! 仕事の速い人と遅い人の違いとは?

ビジネス

公開日:2016/5/3


『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』(理央 周/日本実業出版社)

 トヨタ系列の日系企業を皮切りに、フィリップモリスやマスターカードなど10社での経験を経て、現在はコンサルタント、大学教授、著者という「三足のわらじ」を履く理央周(りおう めぐる)氏。知人たちからよく「いったいいつ寝ているのですか?」と聞かれるのだとか。仕事だけでも十分に忙しいはずなのに、料理や映画鑑賞といった趣味もおおいに楽しむ姿をSNSなどで発信しているので、「いったいどこに時間があるんだろう?」と不思議がられるそうです。

 一方で多くのビジネスパーソンは、「毎日残業でタクシー帰りもしばしば」「仕事に追われ自分の時間がとれない」「周囲の人より長時間働いているのに思ったような成果が出ない」といった悩みを抱えています。

 いったい、どこが違うのでしょうか?

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「なにをやめて、なにをやるか」を考えて時間を使うことが、現状を変えるための最短ルートとなるのです。したがって時間を有効に使うには「やるべきことを明確にする」ことから始めなければなりません。
『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』「はじめに」より

 どうやら、限られた時間を有効に使って仕事もプライベートも存分に楽しむためには「やめなければならないこと」があるようです。理央氏の著書『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』から、そのヒントをいくつかもらいましょう。

期限と所要時間のないToDoリストをやめる

 多くのタスクをこなすビジネスパーソンにToDoリストは必須。ほとんどの人がそれぞれのやり方で、やるべきことや予定を書き留めていることでしょう。

 しかし、「やるべきこと」しか書いていないToDoリストでは不十分です。少なくとも書いておきたいのは、その仕事の締め切りや期限。さらに「仕事の速い人」は、所要時間を見積もって一緒に書いているそう。たとえば、「10日締切、資料最終チェック(30分)」というようにです。

 それぞれのToDoの所要時間を見積もっておけば、仕事全体のボリューム感を把握できます。それが一日の中で予備的な時間を確保することにもつながり、突発的に入ってくる仕事にも対応できるようになります。また、実際に費やした時間と照らし合わせることで次の仕事にも活かすことができます。

机やPCのデスクトップに不要なモノを置くのをやめる

 デスクが散らかっていていいことはありません。モノ探しに時間がとられるし、上司に求められた資料がすぐに出てこなければ信頼度も下がります。それに、仕事に没頭しているときに必要な道具、書類などが見当たらないと、集中力が一気に途切れてしまいます。

 散らかっていれば「片づけなければいけない」と思うのが普通ですが、「実はそれは間違っている」と理央氏。散らかるのは、そもそもムダなものが多いからだ、というのです。

 この状態を解消するには、ドラッカーが説く「体系的な廃棄」をあてはめてみるのが有効だそう。それは、次の3つのプロセスで行われます。

■ドラッカーの「体系的な廃棄」3つのプロセス
(1)今、あるものを「ない」と仮定します
(2)そして、今からでもそのものを手に入れられるかどうかを考えます
(3)仮に「手に入れなくてもいい」と判断したら、そのモノは即刻廃棄します

このドラッカーの考え方は、経営組織や営業手法、あるいはサービスや商品等について、ムダな贅肉を削ぎ落として環境に順応するための方法ですが、理央氏は、デスク上のムダなモノもこのプロセスにのっとって「廃棄」することをすすめています。「整理」するのではなく。

仕事を「やりっぱなし」にするのをやめる

「仕事が速い人」は振り返りの時間をとっています。PDCAサイクルでいえば、C=Check(検証)、A=Action(改善)に当たります。

 私たちは忙しいことを理由に、つい、この振り返りを怠ってしまいます。その結果、次の仕事のスピードと成果に、「仕事が速い人」と大きな差がついてしまうのです。どうすれば無理なく振り返りを実行できるのでしょうか。

「仕事にかかった時間やスケジュールを、毎日振り返る必要はないと私は考えています」と理央氏。年間や月間といった大きな単位から、徐々に小さな単位に分けていく方法をすすめています。

 まず、年末や年度末に、年間プランの適切さや売上目標の達成度合いについて振り返ることから始めましょう。その次に、毎月下旬には月間のスケジュールや目標が適正だったかどうかを確認します。スケジュールに無理があったり滞ったことがあれば、その原因を探り、次月のプランを決めるときに改善します。

 たとえば、月間の残業時間はいい指標になります。働き過ぎた時間をロスタイムと考え、そのロスの原因を考えるのです。資料の修正のための残業が多かったとしたら、次月は、修正が出ないように確認を徹底しながら作成する、といった具合です。そしてできれば、土曜日にはその週の振り返りと次週の準備をします。

 こうした振り返りを繰り返していけば、自分の思い通りに物事を進めたり、成功したことを再現する力がついてくるでしょう。

 また理央氏は、プロ野球の名監督・野村克也氏の「勝ちに不思議な勝ちあり 負けに不思議な負けなし」という言葉を紹介していますが、これについて「『不思議な勝ち』ほどしっかり分析をしなくてはならないと言っているのだと私は理解しています」と述べています。

 うまくいったからといって「よかったよかった!」と満足していては次につながらない。その要因を分析してうまくいった理由がわかれば、よりよい次の打ち手がわかり、さらなる成功につながる、ということでしょう。

 理央氏が10社におよぶビジネスパーソンとしての経験のなかで学んだことは、仕事には、こなすことが目的の「作業」と、価値を生み出すことが目的の「価業」の2つがあるということだそうです。

 もうひとつ、理央氏の言葉を紹介しましょう。

仕事の遅い人は、「作業」に追われ、仕事をしたつもりになっていることが多いと言えます。一方、仕事の速い人は、「作業」をどんどん効率化して時間を短縮し、そのぶん、成果につながる「価業」を充実させる時間の使い方をしているのです。
「はじめに」より

 有限な時間のなかで、価値を生む仕事=「価業」の充実こそ目指すべきこと。本書にはそのためのヒントが詰まっています。

文=日本実業出版社