ヒール靴はもう卒業!? ロンドンの人気ファッションエディターが語る、フラットシューズの魅力

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公開日:2016/6/26


『フラットシューズ宣言』(ハンナ・ロシェル:著、mucco:訳/プレジデント社)

「おしゃれは足元から始まる」というように、履いている靴を見るだけで、その人のファッションスタイルやライフスタイルが見えてくるから不思議だ。今、町行く女性の足元を眺めていると、フラットシューズを履いている女性が圧倒的に多い。理由はひとつ、今のトレンドは「フラットシューズ」だからだ。

 では、一体どれぐらいの種類があるかご存じだろうか? 少なくとも48種類はあるということを教えてくれるのが、海外ファッション誌『InStyle』の看板編集者であるハンナ・ロシェル氏だ。今回ご紹介する『フラットシューズ宣言』(ハンナ・ロシェル:著、mucco:訳/プレジデント社)の著者である。彼女はタイトルから見て取れるように、ハイヒールとはキッパリ別れることを決心したひとりで、自らを「ハイヒールを履かないファッションエディター」と呼んでいる。

 ヒール靴に足が耐え切れず、膝を曲げて歩いてしまっている女性を見かけたことがあるだろう。慣れないヒール靴を無理して履くと、散々な結果になってしまうことも少なくない。重心が前に行くことでつま先に靴擦れができ、痛くて歩けなくなったり、マンホールの小さな穴にヒールが食い込んでしまい、抜けなくなり大焦りしたりすることだってある…私がそうだ。

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 さて、アンクルストラップからはじまる48の靴のストーリー。不思議なことに、読み進めていると「持つべき靴はフラットシューズだけで十分なのではないか」と思えてくる。見開き1ページの片側に著者が描いた靴、もう片側にその靴の特徴や歴史、自身の履き方のこだわりなどが簡潔に綴られており、読みやすく知識が身につく本でもある。ヒール靴は苦手だが美脚効果を狙い、無理をして履いている人が読むとハッとすることだろう。

 例えばフラットシューズの中にも、ハイヒールに負けないくらいの美脚効果が期待できる靴があるという。それが「バレエパンプス」だ。中でも英国ブランド「フレンチソール」のものが、ずば抜けて足を美しく見せるという。また、アンクルストラップは、ストラップが足首をさえぎるにもかかわらず、足を長く見せてくれる効果があるのだ。

 そして、仕事での大切なミーティングや、結婚式にも相応しいフラットシューズも紹介されている。そのひとつが「ポインティパンプス」だ。つま先の尖った、クールで美しいデザインのパンプスである。フォーマルな場には、マナーとしてヒールを選ぶべきとも言われているが、不慣れで不格好な歩き方をしてしまうぐらいなら、自分に合う上品なフラットシューズを履く方が、何十倍も素敵な振る舞いができるのではないかと思う。

 よく、男性はハイヒールを履く女性に弱いという話を聞く。女性の魅力度やプライドの高さは、ヒールの高さと正比例するのだとか。しかし、著者は言う。

女性は「攻め」のヒールを履かなければ美しくなれないというわけではありません。

 彼女にとって、フラットシューズは快適であり、スタイリッシュ、そしてWIN-WINの関係になれる大切なパートナーであるのだ。自分らしさを失くしてしまうハイヒールを選ぶより、女性としての魅力的がよりいっそう高まるに違いない。たとえまわりの女性がハイヒールを履いていても。

 他にも、スニーカーやサンダル、ブーツ、マニッシュ靴などが登場する。ウィングチップには、羽ばたくカモメの翼を想わせる穴飾りがあるのが特徴だ。しかし、他のマニッシュ靴にも同じようにあり、見分けが難しかったりするのだが、そこもわかりやすく解説してくれている。さらに、ソックスは合わせるべき? 合わせない方が良い? そんなちょっとしたおしゃれのコツも教えてくれるのがうれしい。

 靴の紹介の後には、靴のお手入れや履きならし方、保管方法についても触れている。革が固い靴はどのようにすれば柔らかくなるか、洗えない素材の白い靴は、何を塗布すればきれいになるか。また、靴を購入したときに付いてくる靴袋は、とっておくと便利だということなど、覚えておきたいことばかりだ。さすがだと思ったのが、靴擦れしたときに貼る絆創膏の選び方である。部位によってタイプを変えているのだ。そういえば、場所によっては貼ったそばから剥がれてくるときがある。

 デイリーからフォーマルに使えるフラットシューズ。これさえあれば、おしゃれに生きていける気がしてならない。ヒール靴はもう卒業すべき? それは、この本を読んでから決めることをおすすめします。

文=くみこ