マンネリコーデから脱出しない? いつもの服も「工夫」次第でおしゃれに変身!

暮らし

公開日:2016/8/2

『たった1枚のシャツでもパリジェンヌはおしゃれを楽しむ』(米澤よう子/KADOKAWA)

 クローゼットの整理をするたびに目につくアイテムがある。コットン素材の白シャツだ。使える定番アイテムとして雑誌などで取り上げられることが多いが、私のそれに限っては「クローゼットのこやし」である。決して嫌いなアイテムではないため処分することは考えていないし、誰かに譲るつもりもない。コットン素材ならではのシワ感は味があり、デニムと合わせるだけでも様になる。そんなシンプルな着こなしに憧れたことは何度もあるのだが、それに挑戦した回数は微々たるものだ。なぜ私は白いシャツを手に取らないのだろう。

 同じことを感じていた方にぜひ読んでいただきたいのが、『たった1枚のシャツでもパリジェンヌはおしゃれを楽しむ』(米澤よう子/KADOKAWA)である。パリジェンヌファッションをいつも徹底解説してくれている著者の本は、やわらかな線と色合いのイラスト、パリの日常を感じることのできるコラムが人気でシリーズ化となっている。

 本書は、春・夏・秋・冬と4つのテーマで構成されており、春の最初に取り上げられているのが白シャツで、私の「こやしアイテム」である。シンプルとはいえ、そのデザインはさまざまで肩・襟・ポケット・袖の形が、今の自分に合っているか確認することが重要なのだ。そのうえで合っていなければ、オーダーメイドのような1枚が見つかるまで検討を重ねる必要性があると著者はいう。なるほど、定番だから1枚買っておけば何年も着ることができるというのはちょっと違うのだ。自分にふさわしい「今年の白シャツ」が必要であり、それを着ることで何倍も魅力的な着こなしができるというわけだ。これは、すべてのシャツに対していえることだろう。

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 次にシャツの着かた、着こなし法にも注目したい。シャツを着たときに前ボタンをいくつか開けるのは誰もがしている。しかし襟元の着くずし方をもっと知れば、より魅力的に映るのだ。その6通りの方法を試す価値は十分にある。そして着こなしについては、日本とパリを比較してみよう。ニットとの重ね着を楽しむとき、パリジェンヌが選ぶニットは、首回りが大きく開いたものや深いVネックが多い。そして、その形に合わせて襟の形をつくるのがパリ流だ。対して浅めのクルーネックやVネックを選び、コンサバ風の着こなしを楽しむのが日本流ではないだろうか。またワンピースの上から羽織り、裾を前結びするスタイルをつくるときの着丈は、圧倒的にパリジェンヌの方が短く、それがバランスの良さを作っているといっても過言ではない。他にも黒タイを使いドレスアップさせるのもパリならではのエレガンスだ。

 そして、読み進めるうちに私の「こやし問題」が解決した。どうやら白シャツを手に取らない理由は「素材」にあったようだ。たとえばコットン素材ではなく、とろみ素材だったとしよう。生地に落ち感があるため、幅の広い私の肩が必要以上に強調されることがない。さらにニットを合わせても、もたつかないのでスッキリ重ね着することができる。これで着まわしの幅も広がるというわけだ。ということで各ページの着こなしイラストはじっくり見ていただきたい。文章にはないうれしい発見が隠れている場合があるからだ。

 タイトルを見ればシャツについての1冊と思いきや、シーズン別に使える定番アイテムが紹介されている。夏は主役になるワンピース、秋は着まわしのきくジャケット、冬はすっかり定着したあのアウターが取り上げられている。デザインの選び方はもちろん、技ありの着かたやコーデなど、マンネリ解消に役立つ情報が盛りだくさんだ。中でも型が流行遅れでも気にせず取り入れることや、巻くものに「ななめ」という変化球をつけるという考えはとても新鮮である。驚いたのは、ストールのように使う私たちの「アレ」がなんともいえない表情をつくり出すことだ。こんなものまで着こなしのひとつにしてしまうパリジェンヌってすごい! いや、偶然なのかもしれないがお手本にしたいと思わせる内容である。

 サラッと読める本ではあるが、一度読んだら再び最初のページに戻り、今度は穴が開くほどじっくり読む・見ることをおすすめしたい。それぞれの問題を解決するためにも、見落としは禁物である。なりきりパリジェンヌを目指して、新しい365日のコーデを楽しんでみてはいかがだろうか。

文=くみこ