社内起業は「ひらめき」より「理屈」が不可欠! リクルート時代に「All About」を起業したプロによる確実な“新規事業ノウハウ”とは?

仕事術

2016/11/15


『はじめての社内企業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ』(石川明/U-CAN)

 企業にとって「新規事業開発」は業績を拡大させるための大事なミッション。だが、もしあなたが、「明日から新規事業担当、やってくれ」と振られたらどうするだろう。普段からアイデアに満ちあふれチャンスを探っていたならいざしらず、おそらく大抵の人は「何から始めたらいいんだ!?」と戸惑うのではないだろうか。とはいえ、もしもその立場に立たされたら、なんとかしなくちゃならないのがサラリーマン…というわけで、いざというときのために転ばぬ先の杖ならぬ、転ばぬ先の「本」を全サラリーマンにお届けしよう。リクルート出身の新規事業エキスパート・石川明氏による『はじめての社内企業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ』(U-CAN)だ。

 なにしろ著者の石川氏は、リクルート在籍時代にバリバリ新規事業を立ち上げ、情報サイト「All About」を起業。独立して早稲田大学ビジネススクール研究センターの研究員ほかをつとめ、延べ27年間に「100社・1500案件・3000名」の新規事業開発プロセスを見てきたというプロ中のプロ。現在も「新規事業インキュベーター」として、多くの新規事業の卵が孵化する(=インキュベートする)ために伴走する日々という。

 石川氏は「新規事業開発」を、会社を通じて事業を起こす「社内起業」と位置づけ、「社会では独立起業する人(アントレプレナー)に注目が集まりがちだが、社内起業家(イントレプレナー)にこそ多くのチャンスがある」と鼓舞する。確かに会社の力を活用すれば、資金やノウハウなど独立起業では難しい規模のビジネスも可能で、何倍もの影響力を世の中に与えることができるかもしれない。もちろん自分自身の成長にも大いにチャンスになるわけで、サラリーマンとしては「(新規事業を)とりにいく!」くらいの勢いがあってもいいのかも(!?)。

 さて、肝心の本の中身だが、とにかく石川氏の新規事業のノウハウがみっちり詰まっており、豊富な具体例と共にその密度の濃さと内容の多彩さに驚かされる。必要な情報の取得方法からアイデアの発想法にはじまり、事業化の詳細な検討方法、果ては社内への効果的な根回しにいたるまで、ステップに応じて展開されるロジカルで説得力のある内容はとにかく実践的。興味深いのは、これらのノウハウが業種や規模にかかわらず有効ということだ。石川氏はコラムで「世の起業のほとんどは『ひらめき』から生まれるが、社内起業においては社内を納得させる『理屈』が不可欠。ロジカルに検討することで迷走を防ぎ、「自分の中に理屈」を携えることで、自信を持って進むことができる」と述べているが、「ないものをカタチにする」という共通のミッションにおいては、業種を問わずロジカルな思考法の実践が「肝」ということだろう。

 なお、こうしたビジネス書の場合、当事者になってみないと手に取られないことが多いものだが(本書の場合は新規事業担当者)、案外「企業人」としての自分にいまひとつ充足感が得られない人には刺激になる一冊かもしれない。現実との距離にジレンマを感じることもあろうが、極めてロジカルな方法論だけに、自分の思考を整理し前向きにチャレンジしていく気持ちを養うための「カンフル剤」に利用するのもアリ。実際、最終章の「プロ・識者が語る社内起業家の条件」は、広く「企業人」として求められるスキルが多く指摘されており、参考になるはずだ。

文=荒井理恵