自分の健康は自分で守る!! プロの患者になるために学ぶ、「登録販売者」という仕事

暮らし

2016/11/15

『現場で使える 新人登録販売者便利帖』(仲宗根 恵/翔泳社)

 来年2017年から2021年までの各1年間、ドラッグストアーなどの店頭で購入するOTC薬(一般用医薬品)の費用の一部が特定の条件のもと、総所得金額等から控除されるようになる。これは、国の医療費負担を削減するために、国民一人ひとりが健康の増進と疾病の予防に努める「セルフメディケーション」の一環であるのだが、それはつまり自身の健康に責任を持つ「プロの患者」にならなければいけないということ。しかし、プロの患者になるための教本などそうはなく、何か参考になる本をと探しているおり見つけたのが、『現場で使える 新人登録販売者便利帖』(仲宗根 恵/翔泳社)である。

「登録販売者」は職業名に薬が入っていないからか、薬剤師と比べてその存在を知らないという人も多いだろう。登録販売者はOTC薬の販売に携わる国家資格で、今やOTC薬はドラッグストアーのみならずスーパーや家電量販店などでも扱っている店舗があり、薬剤師が不在で登録販売者だけが勤務しているという業態も珍しくない。本書は、その登録販売者の講師である著者が新人向けに書いたものだが、そんな専門書を取り上げてみたのは、登録販売者の役割がセルフメディケーションにおいて重要になっていくと思ったからだ。

 6年制の大学で学ぶ薬剤師と比べて、一回の筆記試験のみの登録販売者は専門知識が不足しているのではと心配するむきもあるかもしれないが、そもそもの役割の違いが本書を読むと分かる。受験資格が緩和され合格自体はさほど難しくないものの、合格後は薬剤師や登録販売者の管理のもとで、月80時間以上の実務経験を2年間積むまでは「研修中」という身分のため1人で店頭に立つことができず、晴れて独り立ちした後も5年の間に通算2年分は月80時間以上の実務を維持し、なおかつ規定の外部研修を修めなければ研修中に逆戻りになるという。薬剤師が研究の道に進んだり製薬会社で営業マンになったりする者もいるのに対して、登録販売者に求められているのは、地域に密着して人々の健康をサポートすることなのだ。

 そのため、試験に合格した後に新人登録販売者がつまずくのは接客だそうで、本書には健康相談の基本が載っており、これが私たちにも役に立つ。

 例えば私たちは店頭を訪れると、つい風邪薬や胃薬をというように、買う薬のイメージを先に決めてしまいがちだろう。ブランド名や、テレビCMなどで選んでしまうかもしれない。しかし本書では、病気を診断することができるのは医師だけであるため、登録販売者が行なうことを厳に戒めている。それは患者である私たちについても同じことで、本書ではこんな事例が紹介されている。特定の胃腸薬を頻繁に購入する高齢の女性に著者が話を聞いたところ、「咳が止まる」という理由で連用していることが分かり、逆流性食道炎を考えた著者は病院を受診するように勧めた。胃液が逆流して咽喉を炎症させたり、食道の炎症に周囲の神経が反応したりして咳を起こすことがあるからで、実際に予想通りの診断がなされたそうだ。その患者さんは偶然に胃薬で咳が止まることを発見したものの因果関係が分からぬまま胃薬を求め続けていたわけだが、著者は「店頭に立っていると、こういった事例にいくつも遭遇します」と述べている。

 このように表に現れているだけの症状に、どんな病気が隠れているか分からないのだから、手軽にOTC薬が買えるからとプロに相談しない手はないだろう。またそのさいに、全てお任せというのはプロのすることではない。プロの患者であればプロらしく、要望や質問は的確に伝えたいところだ。巷にあふれる健康情報の中には、薬を使うことを完全否定したり病院には行くなと喧伝したりするものもあるが、プロとの関わりを持たなければ、いつまでも素人のまま。本書を読んで身近な医療従事者である登録販売者とのつき合い方を学び、新人患者からプロの患者を目指してみてはどうだろうか。

文=清水銀嶺