日本の漫画・アニメ文化が世界に与えた影響力の大きさを物語る、シンガポール人漫画家のエッセイ漫画に思わず感涙

アニメ・マンガ

2016/11/24

 大友克洋の『AKIRA』や伊藤潤二のホラー漫画に衝撃を受けて漫画を描き始め、意を決して出版社に持ち込み、そして挫折…。そんなほろ苦い経験を描いたエッセイ漫画が静かな話題を呼んでいる。作者はフー・スウィ・チンさん。シンガポール人漫画家だ。もはや「MANGA」が世界共通語であることは知られているが、フーさんのエッセイ漫画『シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす』は、日本の漫画やアニメによって人生が変わった一人の外国人の貴重な記録ともいえる。現在もシンガポールに住むフーさんに話を聞いた。


初めて買った漫画は『ドラゴンボール』の27巻

――簡単な自己紹介をお願いします。

フー・スウィ・チンと申します。シンガポールで漫画を描く仕事をしています。今は日本のWEBサイトに漫画を連載したり、アメリカの企業から依頼されて漫画を描いたりしています。…シンガポールでは引きこもりです(笑)。


――幼い頃から日本の漫画に親しまれていたそうですね。

よく預けられていた親戚の家に漫画がたくさんあって読んでいました。香港の漫画やアメリカのコミックもありました。15歳の時に初めて自分のお金で買った漫画が『ドラゴンボール』でした。本棚の前で30分悩んで買いましたが、なぜか27巻でした(汗)。それからデザインの専門学校に通っていた頃にアニメ映画『AKIRA』を観て、ものすごく衝撃を受けました。『AKIRA』のグッズを探し回ったり、日本版の漫画も買いました。その頃は日本語が読めなかったけど、絵を見るだけで感動しました。日本の漫画の「コマ割り」にもとても影響を受けました。日本の出版社は作画の作法に厳しいと思うので、色々な漫画を読んで勉強しています。


――日本の漫画やアニメ、音楽で好きな作品はなんですか?

いっぱいあり過ぎてわからない!(笑) 『AKIRA』は本当に好きです。実は一度、大友克洋先生と対面する機会があったのですが、かなり緊張しました…。あとは、伊藤潤二のホラー漫画をよく読みます。最近は『モブサイコ100』や『はんだくん』が好きです。あ、『君の名は。』も観ましたよ。映像がとてもきれいでした。音楽はアニメのサウンドドラックをよく聴いています。

日本の漫画業界は本当に厳しい。でも描くのをやめられない。

――日本でエッセイ漫画を出版した感想を教えてください。

夢がかなってとっても嬉しい。シンガポールにいるので、今この瞬間、日本の書店に自分の本が並んでいると思うと、とても不思議です。日本の読者の方から書店店頭の写真を見せてもらいましたが、とても嬉しかったです。

――本には、日本の出版社に持ち込みをしたエピソードも綴っていますね。編集者からの厳しい意見に挫けそうになりながらも持ち込みを続ける姿にうるっときました。

はい、友達から持ち込みという方法があると聞いて、日本の出版社に電話をかけて予約を取るところから始めましたが、かなりつらい経験になりました…(笑)。日本のように漫画家の人口が多い国は、世界ではすごく珍しいですよね。日本の漫画業界は上手な人がとても多いので、本当に厳しい世界だと感じました。でもやめられません。漫画を描くことは厳しいし、つらいですが、とても楽しいんです。


――フーさんのように、日本で作品を出版する外国人漫画家はこれから増えていくと思いますか?

増えると思います。台湾やスペインには日本で漫画を描きたいと思っている漫画家がたくさんいます。

――エッセイ漫画の執筆で大変だったこと、楽しかったことはなんですか?

昔から引きこもりだったので、あまり楽しいエピソードがなくて、ネタ探しに苦心しました(汗)。その頃の話を読者のみなさんに面白いと思ってもらえるかどうか、とても心配です。持ち込みのエピソードはつらかったけど、面白い話がたくさんあるので描いてて楽しかったです。

――日本に滞在した時の、ちょっとした文化の違いに驚くフーさんの姿も印象的でした。

いつもは引きこもりですからね(笑)。日本は不思議な国で、深い文化や歴史があります。新しいものと古いものが一緒に存在してるのも面白い。日本で好きなのは森と神社。妖怪がとても好きです。お話のなかの妖怪ではなくて、本当の妖怪が好きです。日本の森と神社は本当に妖怪がいそうだから好きです。ちょっと苦手なのは、人がいっぱいいる駅。池袋や新宿は怖いですね。あと、日本人の感情はちょっと読みとりにくいかもしれません。


――逆に、日本人におすすめしたいシンガポールのスポットやお店があれば教えてください。

ブギスという街にある「津津(CHIN CHIN)」というお店のチキンライスがおすすめです。コーヒーも美味しいよ。プラナカン料理なら、新しくできた路線の「Beauty World」駅ビル4階の「Dulu Kala」です。ここはカレーが美味しい。スーパーマーケットなら「ムスタファ・センター」。ものすごい品数のあるマーケットで、24時間営業しています。チェーンの豆乳スタンド、「Mr.bean」、マレーシアのコーヒーチェーン「OLD TOWN」も美味しいです!


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フーさんによる世界に1枚のオリジナル直筆ポストカードを10名様にプレゼントいたします。
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Profile
フー・スウィ・チン:漫画家。シンガポール在住。日本のアニメや漫画に衝撃を受け、デザイナーとして勤務するかたわら漫画の執筆を開始。2000年から漫画家に専念し、主にアメリカの出版社で活動。シンガポールや台湾、そして日本でも作品が出版されている。日本への愛情と出版社への持ち込み経験などを綴ったコミックエッセイ『シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす』を2016年9月に発売した。

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取材・文=森井ユカ

森井ユカ
立体造形家、雑貨コレクターとして、キャラクターのデザインや世界の日用品の研究など行う。有限会社ユカデザイン代表。桑沢デザイン研究所非常勤講師。著書に『スーパーマーケットマニア』シリーズ(講談社)、『よくばり個人旅行! 旅立つまでのガイドブック』『描き方BOOK! 読みやすい文字と伝わるイラスト』(KADOKAWA)など多数。

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