Twitterで話題の人気マンガ家・史群アル仙の新境地! 昭和テイスト×ホラー『迷うは君の世界』はこんなにも恐ろしい…

マンガ

公開日:2016/12/16

『迷うは君の世界』(史群アル仙とkiske3/主婦の友社)

 ここ数年、TwitterなどのSNSで自作のマンガを発表し、一躍人気作家へと上り詰めた人たちがいる。史群アル仙のペンネームで活躍するマンガ家もその一人だ。史群さんが注目を集めるようになったのは、約2年前の2014年。幼い妹の一言で殺意が消え失せてしまった男の姿を描いた「狂人になりきれない男」や、少し生意気な妹と兄のやり取りが心に迫る「オカマのお兄ちゃん」など、発表した作品はどれもわずか1ページという短さながら「思わず泣ける」と話題になった。

 そんな史群さんの最新作が、このたび単行本化された。それが12月16日(金)に発売された『迷うは君の世界』(史群アル仙とkiske3/主婦の友社)である。

 本作は前述の泣ける作品とは一線を画し、ホラーテイストに満ち溢れたマンガだ。熱狂的なファンの生霊に苦しめられるバンドマン、旦那の浮気をきっかけに精神に異常をきたしてしまった女性、スマホの画面に突如現れた怪異など、どれも背筋に冷たいものが走る仕上がりになっている。

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 さらに本作が妙に怖いのには、理由がある。それは史群さんの作風だ。水木しげる、手塚治虫、吾妻ひでお、楳図かずおなど、昭和を代表する作家陣のテイストを受け継ぎ、見事に現代風に昇華させている。キャラクターはデフォルメされておりリアリティの対極にあるようだが、それが読み手の想像力を掻き立てるのだ。さらに極力トーン処理を廃し、墨の黒さを引き立たせているため、作品全体にはどことなく泥臭さが漂う。それがホラーの世界観とマッチしているのだ。内臓をぶちまけた死体の描写なんかは、リアルに描かれるよりも怖い。それはきっと、読み手の脳内にダイレクトに届くためだろう。現代のホラーマンガにこのような表現方法があったのかと、思わず唸ってしまう。

 本書は単行本特典の描き下ろし作品のほか、長短問わずオムニバス形式でさまざまな話が盛り込まれているが、たった4ページほどで背筋がゾクゾクさせられてしまうのは、さすがTwitter発のマンガ家。短い話をどう見せるか、十分理解されているのだろう。もちろん、長編も読み応えあり。緩急ある構成になっているため、気づけば最後まで読み切っているはずだ。

 本作はまだまだ続刊の予定とのこと。ホラー好きはもちろん、これまであまり興味がなかった人も、一度史群さんの世界に迷い込んでもらいたい。

文=五十嵐 大

『迷うは君の世界1(史群アル仙)』発売記念イベント開催!
史群アル仙×ROLLY 即興BIG漫画ライブペインティング&ライブミュージックSHOW
■日時:2016年12月17日(土) 18:00~ 
■場所:HMV&BOOKS TOKYO 7Fイベントスペース
東京都渋谷区神南1-21-3 渋谷 modi 内
■内容:『迷うは君の世界1』サイン本お渡し&ROLLYさん演奏による史群アル仙 さんライブペインティング
※参加方法、詳細は、HMV&BOOKS TOKYOのホームページをご確認ください。
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