路上プロレスは場外乱闘の拡大解釈版!『ジャンプ』を読んで育った女子は、ハマりやすい?【DDT高木社長×『プ女子日和』漫画家対談】前編

マンガ

更新日:2017/3/15

「菓子折り事件」を彷彿とさせるシーン

 商店街やキャンプ場などリング外で試合を行う「路上プロレス」など、エンタテインメント性を強く打ち出し人気を博しているプロレス団体「DDTプロレスリング」。そんなDDTが無料マンガアプリ「GANMA!」とコラボし、DDTを題材としたマンガを制作……という描き手募集の告知に素早く反応し、連載となったのがDDTの大ファン・早蕨たまおさん。与えられたテーマは、最近メディアでも取り上げられることの多い「プ女子」=プロレス好きの女子。プ女子として暮らす自らの日常を描き、『プ女子日和 私たちプロレス女子です』(イースト・プレス)として1月に単行本化された。早蕨さんと、次々と新しいアイデアを打ち出してきた経営者であり現役レスラーでもある高木三四郎さん(通称・大社長)に、DDTの魅力、そしてプロレスの魅力について大いに語り合っていただいた。

観客も、レスラー本人も、プロレスに勇気をもらう!

――そもそも、なぜDDTをマンガにしようと思われたのですか?

高木 プロレスを観に来てくださる若い女性が増えている傾向は感じていたので、さらに間口を広げたいなと。僕らも小さいころからマンガを通してプロレスに触れることが多かったので、マンガにしてもらうのはいいな、と思いました。しかもスマホで気軽に読める、というのも10代、20代の若いお客さんに興味を持っていただけるかなと。

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――早蕨さんは、描き手に応募しようと思ったのはなぜですか?

早蕨 募集要項を見た時に「これはもう応募しなければ!」とすぐに思ったんですが、だんだん荷が重いんじゃないかと思い始めて……でもチャレンジしないままだと絶対に悔しい!とも思ったんですよ。マンガを描いている人の中では、2番目か3番目くらいにはDDTが好きなんじゃないかと思っていたので(笑)。初めてDDTを観戦する友達を連れて行く時にしおりみたいなものを作って渡したりしていたんです。パンフレットには載っていない、こういうおもしろさがあるんだよ、という選手紹介のようなものですね。

高木 しおりを作っている方がいる、というのは僕も知っていました。

――DDTは「文化系プロレス」だと自らもおっしゃっていますが、女性ファンも「文化系」の方が多そうですね。

早蕨 そういう方は多いです。マンガ好きも多いですね。

高木 マンガを描く人、結構多いですよね。選手の似顔絵を描く人とか。

早蕨 やたらうまいですよね。

高木 うまいです。すごいクオリティ。

早蕨 『ジャンプ』とか少年マンガを読んで育った女の子たちは、入りやすいみたいです。確かに努力、友情、勝利みたいなテーマはプロレスでも出てくるので、ジャンプマンガっぽいですよね。少年マンガを読んでいれば、人と人とが闘ったりすることにもそんなに抵抗がないですし。生身だとこんな感じなんだ、と楽しく観られる。逆にプロレスを知ってからマンガを読むと、生身の重みみたいなものがわかっているので、よりおもしろいんですよ。この場面はものすごくダメージをうけているな、とかわかるようになりました。プロレスを観る前に読んでいた『キン肉マン』と、プロレスを観てからの『キン肉マン』は全然違う。

高木 (笑)。最初にDDTを観たきっかけはなんだったんですか?

早蕨 私は友達に……『プ女子日和』に出てくる、ガチ美さん(※小さな団体を観戦・応援する、硬派なタイプのプロレスファン)に連れられて。

高木 ガチ美さんは、実在の人物なんですね。僕の知っている方にも似ている女性がいます(笑)。

早蕨 だいぶ誇張して描いてはいますが実在しています(笑)。その時は、ちょうど自分が「マンガをがんばろう!」と思っていた時だったんですよ。その頃のDDTさんは「両国(国技館)でやるぞ!」と言っている時期で、上に登ろうとする力みたいなものを感じて。自分も一緒にがんばろう!と、すごく励まされました。作家の西加奈子さんや、イラストレーターの広く。さんも「プロレスのおかげです」とよくおっしゃっていますが、すごくわかるなあと。自分はまだ全然修行が足りないのでおこがましいですが(笑)

高木 僕もそれは常日頃から言っていて。やっている側ですけど、プロレスに勇気づけられるんです。僕は経営者でもあり選手でもあるので、その狭間で結構大変で……万事がうまくいくわけではない。そういう時に後輩レスラーの試合を観ると、俺もがんばらなくちゃいけないなと思う。プロレスが元気を与えてくれる。

早蕨 生きることや、仕事をがんばっている女性たちに、プロレスはこれからもっと必要になってくるんじゃないかなと思います。

高木 そうですよね。プロレスって、負けてもそこで終わりじゃない。次があるんですよ。負けた選手が次に向かってがんばっていく……。日ごろがんばっている人とか、今は逆境に置かれている方には、すごく受け入れやすいと思いますね。

路上プロレスは場外乱闘の拡大解釈版です

――DDTという団体ならではの魅力というと、どんなところですか?

早蕨 頭がおかしい…というか。

高木 (笑)

早蕨 そもそも非日常であるプロレスの、その枠をさらに超えているところがあって。そんなに一足飛びに超えていいのかと。男色ディーノ選手が観客の男の人たちを次々襲っていたり、飯伏幸太選手が「キャンプ場プロレス」で山の中を駆けまわって人を崖から落としていたり。本屋プロレスでは大社長がジャーマンでアスファルトに叩きつけられていましたよね。

高木 そうです、そうです(笑)。なかなか社員からコンクリート上で技をかけられる社長はいないでしょうね。

早蕨 社長も体を張っている(笑)。マンガのネタを一生懸命考えるのと通じるものがあるなあと思いました。人が思ってもみなかったことを考えなきゃいけない、驚かせなければいけないんだなと勉強させていただいてます。

高木 そうですね。僕らはほかの団体に比べて、「お笑い」の要素が多いんです。「入りやすさ」を追求すると、そういうことになる。女性だけじゃなくて、お年寄りとか子どもとか、たくさんの人に「プロレスってこんなにおもしろいんだ」とか「ここまでアリなんだ」とか思ってほしいんですよ。さきほど早蕨さんも言っていた男色ディーノっていう「ゲイレスラー」は、試合中にお尻を出したりもする(笑)。ただメインの試合に近づくにつれ、メジャー団体でやっているのに負けないくらいのパワフルな試合を展開していく。すべては、そこに至るまでの導線ではあるんですよね。今、60くらいプロレス団体があるので、よその団体がやっていないことをやって、DDTのカラーを出していかないといけない。よその団体は路上でプロレスなんてやらないですよ。リングがなかったら……なんなんだって話じゃないですか。

早蕨 (笑)

高木 ただ……プロレスには場外乱闘っていうものがあるんですよ。

早蕨 そうですね。

高木 だから路上プロレスは場外乱闘の拡大解釈版ですね(笑)。商店街でプロレスをやっていると、普通に買い物に来ているようなお客さんはびっくりして、目を止めてくれますよね。屋内でやっていたら、そういう方たちの目に触れることはない。路上プロレスをやった後は、「プロレス」っていうキーワードで必ず検索するんですよ。そうすると「さっきうちの商店街でプロレスやってた!」「思わず観ちゃったけどおもしろかった」みたいなことを結構言ってくれていて。

早蕨 最近Amazonプライムで、旅先の路上でプロレスをする「ぶらり路上プロレス」という番組をDDTさんが配信していますよね。すごく楽しいんですけど、観客としてそこにいたいなあとジリジリしてしまう。でもそこに映っている一般のお客さんのあきれた顔を観ていると「うんうん、そうでしょう」みたいな満足感もあります(笑)。

後編】プロレスは客も選手も頭がおかしくないとできない!?  今、注目のDDT選手は?【DDT高木社長×『プ女子日和』漫画家対談】

取材・文=門倉紫麻