低予算でも根強いファン 山田孝之主演「勇者ヨシヒコ」シリーズ誕生秘話

テレビ

2017/3/18


『伝説の書III「勇者ヨシヒコと導かれし七人』(福田雄一/SDP)

 低予算でも面白い番組は作れる。それを証明した代表的なドラマといえば福田雄一氏脚本&監督、山田孝之氏主演の“予算の少ない冒険活劇”「勇者ヨシヒコ」シリーズだ。深夜ドラマでありながら、昨年第3弾として放送された『勇者ヨシヒコと導かれし七人』は多くの視聴者の心を掴んだ。LINEスタンプや脱出ゲームなど、ドラマ終了後も大人気の「ヨシヒコ」シリーズは、そもそもどのように生まれたのだろうか。

伝説の書III「勇者ヨシヒコと導かれし七人』(福田雄一/SDP)は昨年放送されたドラマの完全シナリオ集。ドラマでは泣く泣くカットされた台詞や場面などをあますことなく収録。この本でしか読めない「勇者ヨシヒコ」シリーズ3作を振り返る、福田雄一氏×山田孝之氏の対談も併録している豪華な内容となっている。

 そもそも「ヨシヒコ」シリーズは、リーマン・ショックによって世の中が停滞していた頃に誕生した。ちょうどその頃、福田氏は育児休暇を取得していたため、テレビを見る時間が増えていたが、深夜ドラマは「お金がないからしょうがない」という諦めた空気のものが多かったという。育児休暇後、深夜ドラマを担当することだけが決まっていたが、福田氏の元に入ってきたのは「予算がない」という情報だけだった。そこで、お金がないことを逆手にとって、「お金がない時には絶対にやってはいけないことをやったら良いのではないか」と考え、“予算の少ない冒険活劇”「ヨシヒコ」シリーズが始まった。

 冒険活劇だが、日本のドラマだから中世の騎士も違うし、時代劇の格好での冒険もおかしい。あれこれ考えていた時、福田氏は「ド●クエのパロディにすればいいんだ!」と思いつき、すぐに福田氏と同じくド●クエのファンとして知られる山田孝之氏に直々にオファー。「深夜だしテレ東なんだけど」と伝えたが、山田氏は「面白いことに関して局と時間は関係ありません」とすぐに快諾してくれたという。

「ヨシヒコ」シリーズは、パロディのオンパレードであり、それが作品の魅力。リスクばかり言っていてもキリはない。

「結果的にネタにさせていただいて皆さんも面白がってくれたと思います。エンタメはそういうものが面白いと思っている人が集まった世界なわけですから、実際に動いてみる前から『これは出来ないだろう…』と思って動かないのは非常にもったいないなって」

 福田氏は放送作家でもあるので、バラエティ番組の会議にもよく出るが、彼の先輩世代の方がよっぽど突飛なことを思いつくという。しかし、それに対して20代の若手の作家が「それ、許されますかね」「それ、成立しますかね」みたいなことを言う。それだとテレビは面白くなっていかない。「ヨシヒコ」は、パロディだからこそ、「そこまでいくの? やりすぎじゃない? 大丈夫?」っていう、きわどい内容の方が心惹かれるはずだ。

 シナリオを読むと、放映されたドラマと内容がかなり違うことに気づく。山田氏をはじめとする俳優陣が、福田氏の考えに共鳴しながら、あとから多くのアイデアを出したのだ。脚本はガチガチに作るのではなく、台本を書いてから撮影するまで時間があるから、トレンドのもの、時事ネタなどを入れるためにあえて余白を残し、最終的には俳優や現場の人々みんなで作り上げていく。

 ドラマに出てくる小ネタの数々のなかには俳優陣が考えたものも多い。例えば、ムラサキの「アヒル口」などは山田氏の提案だったという裏話はファンにはたまらない。その他、出演者やゲストには山田氏が直々にオファーした人がいるというし、オープニング楽曲の選定にも山田氏が大きく関わっていたという。第3弾が終わったばかりだが、まだまだ続いてほしい。次回作が待たれてやまない。脚本と役者陣の絆の強さがあるからこそ生まれたのが、「勇者ヨシヒコ」シリーズの面白さなのだ。

文=アサトーミナミ