一度見たら忘れられない……! 野性爆弾くっきーワールド炸裂の顔マネ集

エンタメ

2017/3/20

『野性爆弾くっきーの[激似顔マネ]図鑑』(扶桑社)

 かつて年末の恒例特番『オールザッツ漫才』で野性爆弾のネタを見た千原ジュニアはこう言い放った。「火薬の量が多すぎるわ!」顔面白塗りにスーツ姿で米米CLUB「君がいるだけで」を歌うくっきーの姿は、明らかに存在が放送コードをはみ出していた。笑いとか顔マネとかいう次元を超えたアウトサイダーアートを鑑賞しているような感覚。これほどまでに強烈な世界観をテレビで披露している芸人は現在、くっきー以外に存在しない。

 そんなくっきーワールドが一冊の本になった。『野性爆弾くっきーの[激似顔マネ]図鑑』(扶桑社)はこれでもかと「火薬」を詰め込んだ爆発力の高すぎる内容である。タイトルにもある顔マネはもちろん、ポエムにイラストに、鬼才くっきーの規格外なセンスを再確認できることだろう。

 くっきーの顔マネといえば顔面を白塗りにしてしまい、カツラやサングラスなどの小道具を装着するスタイルが有名である。最初に挙げた米米CLUBの「カールスモーキー石井」やGLAYの「TERU」などはテレビでも何度か披露したことのある顔マネだが、そのときは正直、似ている似ていない以前にビジュアルのインパクトが先立って戦慄するだけだった。

 しかし、ずらりと並べられた白塗り顔マネ群を眺めていると、意外なほどによく似ている顔が多い。「激似」とまではいかなくても、少なくともタイトルを見る必要なくモデルが分かるほどには特徴を捉えているのだ。

 その秘訣は徹底した特徴の書き込みと表情筋の豊かさである。たとえば、激似度が非常に高い「宮迫博之(雨上がり決死隊)」と「千原せいじ(千原兄弟)」の二作品では、くっきーの顔立ち自体はかけ離れているのに、皺やエラ、鼻の穴を書き込んだうえ、表情を似せることでそっくりに演出している。



 一方で、最初から似せる気のない作品の殺傷能力も凄まじい。「前田敦子」「きゃりーぱみゅぱみゅ」「ダレノガレ明美」…。錚々たる美人タレントたちが恐ろしい形相で表現されていく。個人的には全ての特徴を捉えているはずなのにバケモノにしか見えない「綾瀬はるか」で腹が捩れるほど笑った。

 白塗り以外の顔マネ作品も充実している。というよりも、芸人・くっきーの本領はむしろこちらだろう。「戦慄の一般人編」「哀愁の一般人編」の二章で披露された架空の一般人の顔マネがビジュアル、着眼点ともにぶっ飛びすぎている。「ビジュアルがゴミってるミュージシャン」「窃盗癖がある大部屋の役者」など、いそうにないのに、そう言われたらそうとしか言いようのない顔面の数々は、くっきーワールドの住人たちに他ならない。ちなみに、「哀愁~」に登場する人々の大半は何故か童貞という設定…。


 野性爆弾のネタや関西ネット時代に顕著だった暴力性も歯止めが利かない。顔面血まみれの顔マネ作品にはいずれも「ゴールネットに顔面から転んだ人」「プラレール枕に寝む寝むした人」と奇想天外なタイトルが付けられている。こうしたスリリングなネタが採用されているあたり、旧来の野爆ファンにも楽しめる内容だといえるだろう。

 お笑い芸人がネタを書籍化するときは、内容がマイルドになり、魅力が半減してしまうケースも目立っていた。しかし、本書には全くそれがなく、むしろより過激にくっきーの才能が凝縮されている。

 先輩にもタメ口で渡り合い、人気番組に出演しても己の芸風を貫き通すくっきー。その媚びない姿勢は「テレビが面白くなくなった」と言われて久しい時代に投下された火薬である。本書のようにアナーキーな書籍が一般発売されたことからも、その爆発は収まることがないだろうと窺える。誰もがこんな予想のつかない芸人のブレイクを待ち望んでいたのだ。

 ところで、芸能人顔マネのコメントには全員「#すきすきすぅ」と締められているのだが、「8.6秒バズーカ」だけはその代わりにグロテスクな文章が添えられていたのが、細かくツボに入ってしまった。

文=石塚就一