『名探偵コナン』新一と平次、2人の絆を感じる傑作エピソード5選!

マンガ

更新日:2017/5/4

『名探偵コナン』(青山剛昌/小学館)

 公開9日間で興行収入27.6億円を突破した映画『名探偵コナン から紅のラブレター』。人気の理由は、西の高校生探偵・服部平次がメインのストーリー、しかもラブコメだということだろう。発売されたばかりの最新92巻のラストにも登場し、さらには「名探偵ヘイジ」ブックカバーのプレゼントキャンペーンまで行われ、まさに平次づくしの4月だった。

 映画を前に平次のヒストリーをたどるべくマンガを全巻読みかえしてみたのだが、まあ出るわ出るわ、「おまえ、新一のこと好きすぎじゃね?」なエピソードの数々。事件に連れまわすのはともかくとして、自分が出場する剣道の大会にわざわざ呼びつけたり、偶然おなじ事件を追っているのに気づいたとたん「やっぱり工藤や~!」とやたらに顔をゆるませたり。和葉との仲がなかなか進展しないのもうなずける。和葉そっちのけで、新一を追いかけすぎなのである。

 というわけで、ここでは特にアツい平次の想いが感じられるエピソードを5つ、紹介しよう。

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12~13巻 「ホームズ・フリーク殺人事件」

 推理勝負をしたいからって、面識もないのに「工藤新一をはよ出さんか!!」と毛利探偵事務所に押しかけた(10巻)のもどうかと思うが、「工藤に会えるかもしれないと思ったから」と、ただそれだけの理由で「シャーロック・ホームズ・フリーク歓迎ツアー」に単身参加するのはちょっと行動力ありすぎなんじゃなかろうか。しかも平次、エラリー・クイーン派なのに。だがそれほどの執念を持つ彼だからこそ、推理するコナンの姿に「こんな推理ができるのは自分のほかに工藤新一しかありえない」という確信を持てたのかもしれないし、その揺るぎなさがコナンの親友となりえた理由かもしれない。いろんな意味でまっすぐすぎる彼に触れられる、始まりのエピソードだ。

 

26巻 帝丹高校学園祭殺人事件

 事件で銃撃され入院したコナンを見舞う、律儀な平次。しかも蘭に正体がバレかけていると知り、蘭が演劇の舞台に立つ学園祭に行こうという和葉の誘いを「大事な抜けられへん用事」と物憂げな表情で断った彼がとった行動が、新一の変装をして帝丹高校に現れるという暴挙であった。「オレやオレ!工藤新一や!」……パウダーで顔を白塗りにして、髪型を変えただけでどうしてごまかせると思ったのかはわからないが、その友達想いの健気さは評価したい。

50巻 ゲレンデの推理対決

 「オレ(が解決した事件)は今月6件や……お前は?」とコナンに電話をかける平次の姿に、もしかして毎月こんな電話しているのだろうか……と疑問がよぎった冒頭。対するコナンも「俺は7件」と得意げに返しているから、やはりいいコンビなのである。「新一という名前のとおり俺が一番」というコナンにかちんときた平次が「おまえは二番目だ」と語りはじめるのが中学時代、スキー場でニアミスした、とある探偵との出会い。遭遇した殺人事件があまりに不可解で、人間には不可能な所業だ、犯人は雪女ではないかとどよめく周囲に、「人間がやったから犯罪っちゅうんじゃ!!! それに不可能なモンがあるかちゅうねん!! ボケェ!!!」と怒鳴った平次と、そっくりそのまま同じセリフを吐いた少年がいたというのである。もちろん、その少年こそ中学時代の工藤新一。二人の、本当の出会いを描いたエピソードである。

 

54巻 探偵甲子園殺人事件

  東西南北の高校生探偵を集め、推理勝負によって日本一を決めるテレビ企画に参加するため、コナンを連れて孤島のロッジに向かった平次。もちろん殺人事件が起こるのだが、現場に真っ先に踏み込んだ平次。探偵にとって現場保全は鉄則。それなのに平次の行動は勇み足で探偵失格だ、とやはり高校生探偵の時津に指摘されてしまう。だがそんな平次を「失格なんかじゃないよ」とコナンは優しくフォロー……と思いきや「ちょっと血の気が多いだけ」と落とされるのには笑ってしまう。同年代の探偵たちのなかで、どこか等身大に描かれる二人の姿が新鮮であると同時に、探偵のなんたるかや、推理がもたらす危うさをもつきつけられる、重厚なエピソードだ。ちなみに本作では、探偵キッドのライバルである白馬探も登場。初の三人揃い踏みも読みどころの一つだ。

 

62巻 殺人犯、工藤新一

 「1年前に解いた事件の推理ミスを見つけた」という新一あての手紙がなぜか平次に届きそれを「大親友だから」と、ご機嫌の平次はかわいらしい。ところが事件現場となった村の旅館に滞在中、行方不明になったコナンをみんなで探すと、風邪薬と間違えて哀のつくった解毒剤を飲み、元の姿に戻った新一が。ところが全身水浸しのうえ、記憶喪失。さらには殺人犯の容疑をかけられてしまうのだ。平次はその容疑を晴らすべく推理を重ねるのだが――と、なかなかスリリングで読み応えのあるエピソード。そして、実は新一が初めて元の姿に戻ったのも平次と初対面のとき。平次は数少ない機会の中で三度も“新一”に出会っていることになる。探偵のライバルとして、親友としての二人の繋がりはそんなところからも感じられるのだ。

文=立花もも