オオカミが恋をした相手はウサギだった―。この感情は「食べてしまいたい」という欲求? それとも愛?『BEASTARS』
公開日:2017/6/10


しかし、一部の肉食獣は違法にその肉や血を手に入れ、自らの欲望を満たしていた。



「擬人化した動物たちの高校生ライフを描いた作品」と聞くと、いわゆる“ほのぼの系ストーリー”をイメージするかもしれませんが、『BEASTARS』(板垣巴留/秋田書店)は全くそうではありません。
1巻冒頭のサスペンス調で始まるエピソードといい、喰うもの喰われるものという本来の食物連鎖の関係性が、作中に常に緊張感を漂わせているのです。
表面上は平和な、しかしどこか歪なこの世界で生きる動物高校生たち。種族を越えた友情や恋もあれば、相容れることのない対立もある。
これは擬人化ではなく、人間の本性を動物たちに置き換えたヒューマンドラマなのです。
世の中にある理不尽や、偏見、自らの本性、更にはスクールカーストまで。そんな極めて“人間的”な壁にぶつかりながらも成長する高校生たちを描いています。
そんな中、ウサギに恋をした少年オオカミ、レゴシ。ウサギへの感情が肉食獣としての本能から来る「食べてしまいたい」という欲求なのか、愛なのか、自分でも混乱します。
二人は一緒にいることはできるのでしょうか? 普通のラブストーリーとは違う意味で、ドキドキとハラハラが止まりません。
(C)板垣巴留(週刊少年チャンピオン・秋田書店)