師匠が語る藤井聡太六段の強さの秘密――「天性の負けず嫌いです」

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2018/2/19

 史上最年少プロ棋士・藤井聡太六段の「強さの秘密」を師匠が明かす、『弟子・藤井聡太の学び方』が2018年2月2日(金)に発売された。

 輝かしい成績を誇る若き棋士が小学4年生で弟子入りしたのが、著者・杉本昌隆七段だった。杉本は同書で「入門以来どのような指導をしてきたか」や「進学を強くすすめた理由」「愛弟子はなぜ急成長したのか」といったトピックスを師匠ならではの分析で解説。藤井六段も原稿段階で読了した「藤井聡太オフィシャルブック」ともいえる内容になっている。

 同書でいう「学び」は、具体的な将棋の指し手や戦法ではない。「対局への心がまえ」や「ネットとのつき合い方」といった将棋に関連することも含め、もっと広い意味での「弟子・藤井聡太の学び方」が見えてくる。

「思考力」「集中力」「忍耐力」「想像力」「自立心」「平常心」…。将棋で強くなるために要する力はすべて、人生をより豊かに生きていくうえで必要な学びであると杉本は主張する。そう考える師匠のもとで腕を磨きつつ、人との接し方や人前での話し方、学校の勉強などを身につけていく藤井。将棋盤に向かっているだけでは得られないものを身につけて勝負の世界に邁進する、弟子の成長過程を追いながら「真の学びとは何か」を明らかにしていく。

 負けた後に将棋盤を抱きかかえて号泣していた小学生は、中学生でプロ棋士に。勝っても負けても淡々としている姿が話題だが、杉本は「藤井は天性の負けず嫌いです」と語る。兄弟弟子との対局に負けた時の感想戦で勝ちへのこだわりをむき出しにしたエピソードなどからは、素顔の藤井六段が垣間見える。ここで2018年1月3日(水)に、一門の研究会で交わされていた師弟のやりとりを紹介しよう。

<ミニ対談「二〇一八年 新年の師弟」より>
藤井:三段リーグの最終日はけっこう緊張していたんですけど、その前に師匠に会う機会があって、「心配してないから」と声をかけていただきました。それはとてもうれしかったです。
杉本:たしかにそう言ったね。
藤井:やっぱり自分自身がナイーブな気持ちのときにいただいた言葉だったので、師匠に自分のことを信じてもらっていると感じました。

 日常生活を大切にし、自身が「未完成」である現状をわかっているからこそ取材を受ける機会がほとんどない藤井と家族。だからこそ同書には、「藤井将棋の魅力、強さをまっすぐに伝えたい」「藤井聡太の学び、師弟関係、板谷一門の絆について知っていただきたい」という師匠の思いがつまっている。将棋という勝負の世界で、ときにライバルとなりつつも信頼関係を失わない師匠と弟子との関係には胸を打たれるはず。若き棋士の姿から、人生を豊かにする学び方を手に入れよう。

<同書の内容>
・七割以上を目指すには、自分で考えなければならない
・悔しさが才能を伸ばすエネルギーになる
・対局の機会の少なさが集中力を鍛える
・二次元の将棋盤に対して三次元で考え抜く
・コンピュータが選ばない勝負手を指す
・将棋に関しては、師匠にも自由に反論していい
・学ぶ側には信念、指導者には柔軟性
・将棋を始めると、考えることが好きになる

杉本昌隆(すぎもと・まさたか)
1968年11月生まれ、愛知県名古屋市出身。1980年、6級で故・板谷進九段門。1990年10月1日五段。2001年5月、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。2006年2月10日(金)に七段へ。2008年、「NHK将棋講座」の講師を務める。本格派振り飛車党で、特に相振り飛車については棋界きっての研究家として知られている。将棋の戦術書の著作は15冊以上になる。地元の東海研究会では幹事、また杉本昌隆将棋研究室を主宰し、後進の育成にも力を注ぐ。

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