マンション修繕委員“なりすまし”は氷山の一角、構造的リスクとは?
株式会社さくら事務所
公開日:2025/7/16
議論誘導・インフレ便乗…数億円規模の修繕工事を守れるか
個人向け総合不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)、マンション管理組合向けコンサルティングを行う“不動産の達人”株式会社さくら事務所(東京都渋谷区/社長:大西倫加)は、2025年5月、首都圏の大規模マンションで、工事業者の社員2名が住民になりすまして修繕委員会に潜入し、工事業者選定を誘導していた事件について、専門家の見解を発表しました。本件に関する取材やご質問がございましたらお気軽にお問い合わせください。
「業者のなりすまし=業者による議論の主導」が行われることによって、管理組合にどのようなリスクがあるのか?
例)不要不急の工事提案、不当な高額工事、特定業者への発注誘導 など
・今回の事件で「なりすまし」が行われていたことは氷山の一角・現に“なりすまし”がない管理組合でも、施工会社や管理会社が「今やらないと工事費がさらに上がる」とインフレを口実に修繕を急がせる提案も多い
・こうした圧力は、建物の劣化状態ではなく「時期ありき」で修繕を進めさせるリスクをはらんでいる
管理組合の脆弱性が招く利益相反の温床
マンション管理組合は、会社組織のようにガバナンスが整っているわけでもなく、専門知識を持つ個人のように調査・判断できるわけでもありません。
役員が定期的に交代する特性もあり、利害関係者に議論をリードされやすい土壌があります。
特に狙われやすいマンションは?
・大規模マンション:住民同士の顔が見えず、成りすましが発覚しにくい・投資用マンション:非居住オーナーが多く、管理への関心が薄い
・管理意識の低いマンション:理事会(委員会)活動が形式的で、外部業者に主導権を握られやすい
・外部管理者方式のマンション:外部管理者に任せきりになることで管理意識が軽薄になり、不正に気付く機会が減る
管理組合が実施すべき3つの自衛策
1. 居住者名簿の整備と更新:本人確認の精度を高めるため、居住者名簿を常に最新の状態に保つ。
2. 管理組合による最終判断:管理会社はあくまで協力者。最終的な委員の承認判断は管理組合が行う。
3. 利益相反の事前確認:応募者が大規模修繕工事に関わる会社に勤務している場合など、利益相反の可能性がないか事前に確認。
今後も同様の事件は増加する可能性が高いと予想されます。この背景には、マンションの修繕積立金が悪徳業者の標的になりやすいこと、また、役員交代や専門知識の不足により、業者に議論をリードされやすい構造が考えられます。特に大規模修繕は数億円規模の判断です。議論が不透明なままだと、過剰な金額になることや、不要不急な工事が承認されるリスクがあるため、修繕のタイミングや内容は、物価や慣習ではなく、建物の現状と資金状況に基づくべき。そのためには、利害関係のない第三者視点が欠かせません。
さらに具体的なお話が聞きたい方はお気軽にお問合せください。専門家が事例と共に取材にてお話させていただきます。
さくら事務所について株式会社さくら事務所は「人と不動産のより幸せな関係を追求し、豊かで美しい社会を次世代に手渡すこと」を理念として活動する、業界初の個人向け総合不動産コンサルティング企業です。1999年、不動産コンサルタント長嶋修が設立。第三者性を堅持した立場から、利害にとらわれない住宅診断(ホームインスペクション)やマンション管理組合向けコンサルティング、不動産購入に関する様々なアドバイスを行う「不動産の達人サービス」を提供、72,000組を超える実績を持っています。
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