東アジア×ハラル:台湾THIDAから学ぶ実務的ヒント (台湾レポート2/4)
一般社団法人ハラル・ジャパン協会
公開日:2025/7/29
日本ではまだ知名度の低い「THIDA」。
しかし、台湾ではすでにハラル認証の実務を担う重要な機関として活躍しています。
今回、台湾出張の一環として、THIDA (Taiwan Halal Integrity Development Association)を訪問し、その活動内容や意図について話を聞くことができました。
THIDAは2008年に設立された、台湾の民間ハラル認証団体の一つです。台湾ではハラル認証は法律上義務化されていないため、複数の認証機関が存在しますが、THIDAはその中でも実務性、情報量、ネットワークの強さから「台湾で最も影響力のある認証機関」とされています。
台湾には7つほどのモスクが存在しますが、それらは認証業務を行っておらず、実際の認証業務はTHIDAが担います。その際、モスク所属の宗教指導者が認証の宗教的解釈や相議に関わり、宗教性と実務性を分離したハラル認証システムを確立しています。
この分業モデルは、非ムスリム圏では特に問われる信頼性を支える重要な基盤となっています。
そのTHIDAの創立者であり、代表であるSalahuding Ma 氏より、面談の時間を頂き、台湾における仕組みや国際視点からのハラル認証の役割について聞くことができました。
THIDAの活動範囲は広く、認証発行だけでなく、教育、政府・教育機関との連携、広報活動、国際協力などを通じて、ハラルビジネスを統合的に支える機関として活動しています。
中でも最も力を入れているのが、2026年10月に本格実施される予定のインドネシアのハラル制度(BPJPH)の変更に備えた「ハラルスーパーバイザー」の養成プログラムです。
現地インドネシアからの人材リクルーティングを行う一方で、台湾内のムスリム系の留学生や移民背景を持つ人材を対象に、ハラルの基礎知識、志向、問題意識を持った人材の育成を目指した教育・技術訓練を実施しています。これは、世界的に需要が高まる一方の「ハラル認証の専門人材」を、地域に根ざした形で持続的に育てることを目的としています。
またTHIDAは東アジア圏の協力構築を重視しています。非ムスリム圏として、イスラム教への理解が乏しいこと、ノンハラルのコンタミネーションが避けられないなど、構造的に同様の難しさを抱える国が多く、その認識を共有することで、現実的なハラル連携モデルを構築しようという考えです。
具体例として、ここで日本企業に求められる役割の一つが、「高質な原料の提供」によるOEM生産です。 台湾の精密な加工技術と組み合わせることで、コストと品質のバランスをとったハラル商品の生産も可能になると考えられます。
また、東アジア各国単独ではハラル関連展示会の開催が難しい一方で、地域連携による「共同開催」という提案は非常に示唆に富んでいました。国境を越えてリソースやノウハウを持ち寄ることで、東アジアならではの実践的かつ継続的なハラル市場開拓の可能性が広がるかもしれません。
最後に、THIDA代表 Salahuding Ma 氏との対話を通じて、私たちはあらためて「現地ハラル認証機関との協力体制づくり」の重要性を強く実感しました。
特に、非ムスリム圏にある日本企業にとって、海外OEMを活用した柔軟な製造体制は、今後の輸出戦略を大きく左右するカギとなります。
これからの日本のハラルビジネスにおいては、「どこでハラルインフラを持ち、どのように実務展開するか」が問われる時代になります。
OEMを活用したイスラム市場戦略の具体化や現地企業とのマッチングに関心のある方は、ぜひハラル・ジャパン協会までご相談ください。
文責
ハラル・ジャパン協会
ハラルビジネスコンサルタント 田上明日菜