AIが企画を作る時代、マーケターに残された仕事は何か?―答えは「問い」を立てる力
スノーフレイク・コンサルティング合同会社
公開日:2025/10/7
日本マーケティング学会注目のエフェクチュエーション理論×生成AI活用を名古屋の哲学的マーケターが実践解説
スノーフレイク・コンサルティング合同会社(所在地:名古屋市)の代表・中島正博は、2025年10月2日、中部マーケティング協会が主催する「マーケティングプランナーコース’25」の初日講演に登壇し、「企画における生成AI活用とエフェクチュエーション」をテーマに講演を行いました。本コースは1989年から36年の歴史を持ち、1,379名の卒業生を輩出してきた実践型マーケティング人材育成プログラムです。2025年度のテーマは「『問い。』から始まるマーケティング~AI時代に求められる人の役割~」。マーケティングの本質的な変革期において、人間にしかできない「問い」を立てる力の重要性に焦点を当てています。
■背景:マーケティングの目的が「競争」から「社会価値創造」へ
2024年、日本マーケティング協会がマーケティングの定義を改定し、「より豊かで持続可能な社会を実現する」ことを明確な目的として位置づけました。従来の「公正な競争」という表現が削除され、顧客や社会との価値共創、ステークホルダーとの関係性醸成が強調されています。
この定義変更は、マーケターの役割が根本的に変わったことを意味します。「どう売るか」ではなく「どうすれば社会が良くなるか」という問いに向き合うことが求められる時代において、中島は「エフェクチュエーション」と「生成AI活用」という2つの武器が有効であると提唱しています。
■講演内容:不確実性の時代を生き抜く新しい思考法
◆エフェクチュエーション―起業家的思考をマーケティングへ
中島は、2024年にはその入門書が日本マーケティング学会の「日本マーケティング本大賞」を受賞したエフェクチュエーション理論を紹介。市場が不確実で前例がない状況では、従来の計画重視型アプローチ(コーゼーション)ではなく、今あるリソースから始め、許容可能な損失の範囲で試行錯誤を繰り返すエフェクチュエーション的思考が有効であると解説しました。
5つの原則(手中の鳥の原則、許容可能な損失の原則、レモネードの原則、クレイジーキルトの原則、飛行機のパイロットの原則)を実務に応用する方法を、具体的な事例を交えて提示しました。
◆生成AI活用による企画業務の劇的な効率化
また中島は、調査、企画立案、資料作成などのデスクワーク要素を生成AIで大幅に効率化することで、行動量を最大化できることを説明。従来のPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルから、着想(Observe)を起点としたOODA的アプローチへの転換を提唱しました。
◆実践事例:名駅ランチタイム・コクリエイション
講演では、中島氏自身が2025年8月に実施した「名駅ランチタイム・コクリエイション」の事例を紹介。JR東海のイノベーション推進室担当者との会話から生まれた「なぜイノベーション部署の人がオープンイノベーションイベントに参加しないのか」という問いを起点に、以下の成果を実現しました。
・コスト:会場費ゼロ(協力により)、ツール利用料約1,500円/月、工数約10~15時間・成果:中部経済新聞に掲載、大手生命保険会社の新規事業担当から問い合わせ
・検証:仮説と異なる結果から新たな事業展開の可能性を発見
この事例は、エフェクチュエーションの原則と生成AI活用を組み合わせることで、リスクを最小限に抑えながら新しい価値創造に挑戦できることを実証しています。
※詳しくはこちらのプレスリリースをご覧ください。
https://presswalker.jp/press/85310
■参加者の反応:高い満足度と実務への応用期待
講演後のアンケート(回答者18名)では、「なぜ今『問い』が重要なのか」「エフェクチュエーションの考え方」「生成AI活用方法」の3項目すべてで高い納得感が示されました。
参加者からは、 「AIで効率化できる部分と、人間が考えるべき『問い』の部分が明確になった」 「失敗を恐れずに小さく試すという考え方が実務に活かせそう」 「生成AIの具体的な活用方法が参考になった」 などの声が寄せられています。
■講師コメント:「問い」を立てられる人材の育成へ
AI技術の進化により、情報処理や分析業務は加速度的に自動化されています。その一方で、「何を問うべきか」「何を解決すべきか」という根本的な問いを立てる能力は、人間にしかできない創造的行為です。
「より豊かで持続可能な社会」という抽象的なビジョンに向き合い続けることがマーケターの新しい役割であり、そのためにはエフェクチュエーション的思考と生成AI活用が不可欠であると考えます。
今後も、生成AI活用支援とエフェクチュエーションの推進に取り組み、不確実性の高い時代を生き抜く人材育成に貢献していく予定です。
■登壇者プロフィール
中島正博(なかしま・まさひろ)
スノーフレーク・コンサルティング合同会社 代表
名古屋大学文学部西洋哲学専攻を卒業。株式会社ジェイアール東海髙島屋に勤務中、2018年に自費でマーケティングプランナーコース受講。2020年独立、2023年法人化。生成AI活用研修、エフェクチュエーション普及活動、哲学×マーケティングのコンテンツ開発を行う。「名古屋にエフェの風を吹かせる」をキャッチコピーに、企業研修、セミナー登壇、ワークショップファシリテーションなど多方面で活動中。
主な実績:
・企業向け生成AI活用研修多数・名古屋商工会議所「AI時代のジャイアントキリング」などセミナー登壇多数
・エフェクチュエーション勉強会「エフェ会」(累計参加者100名超)主催
・名古屋大学TOIC NAGOYAとの共同ワークショップ実施など
■マーケティングプランナーコース’25について
主催: 中部マーケティング協会
期間: 2025年10月2日~11月28日(全6回)
テーマ: 「『問い。』から始まるマーケティング~AI時代に求められる人の役割~」
特徴: 異業種人材によるグループワーク、企画における生成AI活用、企業間共創による価値創造
実績: 開催36年、卒業生1,379名、参加者満足度96.5%(2015-2024年平均)
https://www.cpc.or.jp/mg/