「国境なき医師団」唯一の日本人緊急対応コーディネーターである著者が一時帰国--。『ガザ、戦下の人道医療援助』(萩原 健:著)の電子書籍版も配信開始。

株式会社ホーム社

更新日:2025/5/29

株式会社ホーム社
株式会社ホーム社は、戦闘が激しさを増すガザに入って、実際に目のあたりにした6週間の様子を記したノンフィクション単行本『ガザ、戦下の人道医療援助』の電子書籍版を5月23日(金)に配信開始いたしました。




至近距離での空爆、戦車による砲撃、繰り返される退避要求に右往左往……。
安全な水さえも不足し、密集するテント生活で困窮を極める大量の避難民。集団的懲罰のような状況の中、必死で医療に携わり、少しでも多くの命を救おうと懸命な「国境なき医師団(MSF)」のスタッフや医療関係者。疲弊しながらも希望を失わないガザの住民や子どもたち、複雑な氏族社会。活動責任者として、スタッフの安全を確保しつつ、地域住民との交渉などにも奔走する著者が、現地に入らなければ知り得なかった2024年8月~9月のガザの現実を描きました。

著者の萩原健さんは本書の出版前から海外の活動地に赴かれたため、発売日には不在で、5月下旬に帰国して初めて実際の本を確認しました。

【著者・萩原 健からのメッセージ】

2024年9月にガザでの活動を終え、あちらこちらに書き留めていた記録をとりまとめたのがその1カ月後、それからレバノンでの活動を経て加筆・修正し、出版まで6カ月を要しました。その間も、ガザの人びとを取り巻く環境は、毎日が台風に見舞われるかの如く目まぐるしく変わり、この本が世に出てからも状況は悪化の一途をたどっているかのようです。
私は本書の「おわりに」で現地からのメッセージをご紹介しました。
「皆が信じ、自ら言い聞かせてきたこと、それは、終わりのない戦争はないということだけだった」
今でも、ガザの人びとの多くは、きっと、そう自らに言い聞かせ続けていることと思います。
別の世界にいる私たち一人ひとりにできることには、限界があるかもしれません。しかし、そのようにして闘い続けている人びとの存在を忘れないこと、それだけでも、大きな意味があると私は考えています。

【緊急対応コーディネーターとは】

国境なき医師団は、さまざまな理由により危急的に生命の危険にさらされている人びとに対する人道医療援助活動を主としていますが、平時の態勢では対応しきれない状況もあります。突発的で大規模な自然災害、感染症の拡大、突然の国内外紛争の勃発や極度の情勢悪化などです。そのような有事に対応するために組まれるのが緊急対応チームで、それを統率するのが緊急対応コーディネーターです。医療援助を必要としている人びとにたどり着くことさえままならない流動的で混沌とした状況で現地入りすることもあります。数日の間に、必要なニーズを把握し、当局や住民との交渉や安全管理など医療援助活動を行うための環境を整え、即医療援助活動を開始することが求められます。
国境なき医師団の緊急対応コーディネーターとして登録されるには、医療、非医療従事者問わず、さまざまな状況、情勢下でチームを統率する活動経験が求められます。
萩原さんは2017年に日本人として初めてこの役を担い、現在に至っても唯一の日本人として活動を続けています。

【国境なき医師団とは】

世界中どこでも、人種や政治、宗教にかかわらず、生命の危機に直面している人びとに、徹底した独立・中立・公平の立場で医療・人道援助活動を行っている団体。無償で医療を提供しています。1971年にフランスで発足し、1999年には、ノーベル平和賞を受賞しました。

【内容紹介】


撮影日:2024年5月6日 撮影:Mohammed Abed (C)MSF
ラファのパレスチナ人避難民ガザ地区南部のラファで、イスラエル軍による退避要求を受けて移動するため、荷物を運ぶパレスチナ人の避難民。繰り返される退避要求のため、何度も移動した人々も多い。




撮影日:2024年1月20日 (C)MSF
MSFのタンクローリーからの給水を監督するMSFスタッフ人口30万人だったガザ南部のラファに150万人の避難民が流入したため、飲み水や生活用水が不足した。水を汲み上げ、運搬する燃料も不足し、水道、道路、インフラも破壊されている。そのため病気の子どもも増えている。



●「ガザ地区のブロック分け」の発表(序章より)
2023年12月1日、イスラエル軍は、ガザ地区をいくつものブロックに分けた地図を公開。“ガザ地域の住民の安全確保のための措置”と報じた。が、その後行われたことは繰り返される“退避要求”、“事実上の強制移動”、“集団的懲罰”という非人道的行為と思われるものだった。 ※地図も掲載しています。
●絶対的に不足している水(第三章より)
軍事利用されるおそれがあるとして、復興に必要な物資は厳しい規制がかけられているため、損傷したインフラは復旧できない。人びとは人道援助団体が手配した給水車に頼るしかなく、給水所には連日人が殺到。ときには水をめぐって抗争にまで発展している。
●“音”(第四章より)
もし近距離なら次の攻撃に備え、安全な場所に避難しなければいけないし、攻撃の目標となる場所次第では、診療所や病院に大量の負傷者が運び込まれる可能性がある。(中略)戦闘機の音が近づき離れていくその数秒間、爆発音を“待っている”数秒間は、大きなストレスがかかるのだ。
●至近距離での空爆(第五章より)
9月4日、23時20分。ヒューッという空気を割くような音に続いて大きな爆発音と振動。(中略)僕は念のため部屋を出て、上に向かって、「窓ガラスから離れて、床に伏せ、指示を待て。階下に下りてくるな。聞こえたか?」と叫んだ。
●ガザの子どもたち(第七章より)
ここは約3割が10歳未満という社会だ。そのせいだろうか、数え切れないほどの受け入れ難い現実がある中でも、僕はガザに強烈なエネルギーを感じるのだ。日々のスタッフとのやりとりの中にも、笑いがある。

【高野秀行さん(ノンフィクション作家)推薦!】

「ニュースやSNSでは見えないガザ紛争の現実に瞠目した」

【書誌情報】



タイトル:『ガザ、戦下の人道医療援助』
著者:萩原 健
発売日:2025年4月25日
電子書籍発売日:2025年5月23日
定価:2,200円(10%税込)
ページ数:260ページ(本文256ページ/カラー口絵4ページ)
判型:四六判 ソフトカバー
発行:ホーム社 発売:集英社
ISBN 978-4-8342-5399-3
作品詳細はこちら



【著者プロフィール】萩原 健(はぎわら けん)

国境なき医師団緊急対応コーディネーター。活動責任者。1967年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。石油開発企業勤務を経て2008年から国境なき医師団に参加。2017年から緊急対応コーディネーター兼活動責任者に。紛争、難民・国内避難民、災害、感染症流行対応など、数々の現場を経験し現在に至る。
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