くたびれたスーツと哀愁の背中…社会の陰で奮闘する“おじさん”に涙! SNSで大きな話題を呼んだ『魔法中年』が最高にエモかった件

マンガ

公開日:2022/10/6

魔法中年
魔法中年』(魔木:原作、灰刃ねむみ:作画/白泉社)

 2022年8月29日(月)、話題作『魔法中年』(魔木:原作、灰刃ねむみ:作画/白泉社)のコミックス第1巻が発売された。魔法中年……。“魔法少女”なら多くの人が知っているはず。“魔法少女”なら古くからヒット作を輩出してきた鉄板王道ジャンルである。およそ“萌え”や“胸キュン”とは縁のなさそうな『魔法中年』。果たしてどんな物語なのだろうか。

 本作の舞台は、魔法少女の戦う姿が“娯楽興行”として成立している世界。人類の敵である魔女との戦いに身を投じる彼女らだが、昨今その姿はすっかり日常の光景になっていた。戦闘シーンの動画配信、キャラクターグッズなどで人気を競う魔法少女。彼女らにかかれば、魔女など敵ではない。しかし本当に恐ろしいのは、魔女から生まれる「使い魔」であった。

 魔女の死後、生き残った使い魔は怨念によって凶暴化し、もはや魔法少女では倒せないレベルに成長する。そして、己の親を倒した魔法少女を付け狙う。そんな使い魔を裏で殲滅するのが、そう、魔法中年なのだ――!

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 彼ら魔法中年の仕事は多岐にわたる。魔法少女の戦闘がエンタメとして成立するために魔女を追い込み、その後使い魔を捜索し殲滅。時には魔法少女を運ぶ運転手にもなる。圧倒的な実力を持つ魔法中年だが、彼らが表舞台に立つことはない。

 本作の主人公である魔法中年の田中さんは、「魔法中年はね、“仕事”なんです」「仕事だから毎日しなきゃいけないんです」「ちょっと体調が悪い日や、気分が乗らない日…妻とケンカしたり悲しいことがあってもやらなきゃいけない」と語る。その背中には、日々家族のために頑張る“お父さん”の哀愁や深みが滲み出ているのだ。

 社会の陰で奮闘する全てのおじさんと中間管理職に向けた哀愁の応援マンガ『魔法中年』。コミックス第1巻では主に田中さんの奮闘にスポットが当てられているのだが、ラストに衝撃の展開が待ち受けている。

 日本魔法界最大の対魔防衛サービス会社「尽ヶ原グループ」。魔法界のレジェンドと評される同社の社長は、自分で使い魔の討伐に向かうこともあった。そんな彼の元に、観測史上最強の魔女「死の魔女」の討伐依頼が舞い込んでくる。かつて尽ヶ原社長の左眼を奪ったというその魔女は、何やら田中さんと関係があるらしく……。

 コミカルの中に唐突に差し込まれるシリアス。愛嬌のある田中さんの奮闘記だけでは終わらない本格的ファンタジーは、きっと読む人を夢中にさせるはず。

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