主人公と待ち人の再会が待ち遠しい! 昭和初期のレトロな東京を描く『曙橋三叉路白鳳喫茶室にて』2巻と作者初のBL作品に注目!

マンガ

公開日:2022/12/9

曙橋三叉路白鳳喫茶室にて
曙橋三叉路白鳳喫茶室にて』2巻(高尾滋/白泉社)

 2022年1月に第1巻が発売され、多くのファンを虜にしてきた『曙橋三叉路白鳳喫茶室にて』(高尾滋/白泉社)。先日11月18日、本作品の第2巻が発売された。

 昭和初期の東京市が舞台となっている本作の主人公は、毎週金曜日に喫茶室「白鳳堂」で大切な人を待ち続けている男子学生・藤田金蓉(ふじた きんよう)。しかし金蓉の待ち人が現れたことはなく、そのミステリアスで儚げな彼を気にした誰かが声をかけ、相談を持ち掛けたことから、気づけば「不思議とお困り事を上手に解決するんだよ」と噂されるようになり、白鳳堂の人気者になっていた。

 そんな金蓉が待ち続けているのは、幼い頃ともに過ごしていた兄のような存在の青年・クロード。英国人駐在官一家の息子だったクロードとは家族ぐるみの付き合いがあり、金蓉も度々母親に連れられて屋敷へと足を運んでいた。お互い第一印象こそ良くなかったものの、次第に意気投合し、2人は仲良くなっていった。

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曙橋三叉路白鳳喫茶室にて 1巻P.137

曙橋三叉路白鳳喫茶室にて 1巻P.145

 だが大正十二年九月一日、金蓉の生活は一変する。関東大震災だ。この震災で関東のあちこちが焦土と化し、母親ともはぐれ、1人ぼっちになってしまった金蓉。そんな彼に手を差し伸べ、救ってくれたのはクロードだった――というところまでが第1巻の内容だ。

 第2巻では、金蓉を最終的に引き取った「藤田の家」の息子としての生活、それからクロードとの生活がより掘り下げられていく。そして、クロードとの別れの日のことも――。また、金蓉が白鳳堂で待ち続けている理由を感じさせてくれる、白鳳堂での思い出シーンも登場する。

曙橋三叉路白鳳喫茶室にて 2巻P.119

 少しずつ明かされていく、金蓉がクロードと過ごした時間のこと。2人の関係を知れば知るほど、クロードとの再会を待ちわびる金蓉にキュンとさせられること間違いなし!

まほうのおうち
まほうのおうち』(高尾滋/白泉社)

 また、この『曙橋三叉路白鳳喫茶室にて』第2巻にあわせて、高尾滋さん初となるBL作品『まほうのおうち』(高尾滋/白泉社)も発売となった。こちらは現代の日本、埼玉県S市を舞台に繰り広げられる物語だ。

 本作の主人公は、閑静な風景が広がるこの町のとある古い一軒家に住んでいる一組のカップル・星碧唯(ほし あおい)と間地孤帆(まち こはん)。2人は、夜の間は普通の男同士のカップルだが、碧唯には孤帆しか知らない秘密がある。それは、毎日日が昇ると同時に“小さな人”になり、日が沈むと普通の“大きな人”になるということ。

まほうのおうち P.29

まほうのおうち P.30

 碧唯は生まれた時、大人になるまでは“おおきなひと”の世界の“ふつう”でいられるようにと魔法をかけられ、何も知らずに“普通の人間”として生きてきた。しかしある日、魔法使いを名乗っている祖母によって、魔法のことや体質のことを知らされる。そして祖母の死後、その魔法が解けて“今の生活”が始まったのだ。

 もしも自分の体が小さくなったら――と想像し、あれこれ思いを馳せるのは楽しいものだが、それが現実になるとさまざまな問題が出てくる。それでも碧唯が笑顔で生きられるのは、ひとえに孤帆の懐の深さとサポートがあってこそ。孤帆の職業がドールハウス作家であったことも大きな救いだ。この2人にかかれば、日々生まれるハードルも人生を楽しむためのスパイスのように思えてくる。

まほうのおうち P.31

 祖母のことや魔法のことなどまだ明かされていない部分も多く、碧唯の“小さい人”になる体質はいったい何なのか、どちらが本来の姿なのか、この世界で魔法使いはどういう位置づけなのか、と気になることが山積み。この『まほうのおうち』も、『曙橋三叉路白鳳喫茶室にて』とあわせて引き続き見守っていきたい。

文=月乃雫

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