自殺を命じられる異世界に転生⁉ 元教祖の息子が新宗教を立ち上げるも、信者が少なくて神の力が弱すぎる…!

マンガ

公開日:2023/5/24

神無き世界のカミサマ活動
神無き世界のカミサマ活動』(朱白あおい:原作、半月板損傷:作画 /ヒーローズ)

 2023年春、数多くのテレビアニメが始まった中、1本のアニメが話題になった。豪華な声優陣や作画の良さに加え、ぶっとんだ設定でファンが盛り上がり、人気を博しているのだ。その作品の原作コミックが『神無き世界のカミサマ活動』(朱白あおい:原作、半月板損傷:作画 /ヒーローズ)である。

 本作は日本で命を落とした主人公・卜部征人(うらべ ゆきと)が異世界に転生し、前世(日本)の記憶や経験を頼りに戦うストーリー。ただ征人のスキルというのは基本的に“知力”であり、自分は戦わずに「神」をサポートして目的を達成しようとする……。

 少しヤバい、いや一風変わった異世界転生コミック『神無き世界のカミサマ活動』を、単行本1巻を中心に紹介する。

advertisement

■神無き世界へ転生した青年と元全知全能神のポンコツ幼女がサバイバル!

 全知全能神“ミタマ”を崇める宗教団体「神地崇教」の教祖の子どもだった青年・征人は、修行中の事故で命を落として、異世界に転生してしまう。そこは、前世で征人をろくでもない目に遭わせ続けた神や宗教の概念がない世界だった。前世で意識がなくなるときに彼が願った理想的な世界だったのだ。

神無き世界のカミサマ活動

 しかしそこには歪みがあった。世界を統べる「皇国」が、ある一定の年齢に達した者を選び、命を絶たせる「終生制度」があった。しかも征人のいる村の民にいたっては「終生」の強制、すなわち処刑されていたのだ。

 ある日、征人を家族のように扱ってくれていたアルラルとシルリルという姉妹に「終生」が言い渡される。必死に助けようとした征人も、力及ばず「皇国」の剣士ベルトランに切り伏せられる。薄れゆく意識の中、彼は思わず前世で自分の神ということになっていた“ミタマ”を召喚した。

神無き世界のカミサマ活動

 幼女の姿をしたその神・ミタマは一瞬で皇国兵たちを消滅させ、征人やアルラルたち殺された村の民も皆生き返らせた。チートスキルなんて生やさしいものじゃない、ぞっとするほどの全知全能神の力だったが、そのとき力は尽きていた。

 ミタマの力は、彼女を信じる人間=信者の数が多ければ多いほど発揮できるものだった。信じる以前にミタマを知っている者すらいない、そもそも神の概念もない異世界では、信者は当然0。神の力は使えないのである。

神無き世界のカミサマ活動

「皇国」は村を見逃さない。再び兵士たちがやって来たとき、今度こそ村はなすすべがないだろう。追い詰められた征人は前世の「教祖の息子だったときの知識と知恵」を使うことにした。ミタマの信奉者を増やし、神の力を復活させるために、征人はミタマを崇める「教団」をつくるのだった。

 友だちならぬ、信者1万人できるかな?

■信仰の存在しない世界で教団を立ち上げ、神の力を復活させる

 征人は教団を利益で結びつく団体にした。なぜならここは神や宗教の概念がない世界であり、人々に神や信仰を理解させることは難しいからだ。また強力な神の力も発動できないミタマは、驚くような奇跡を起こすこともできない。そこで彼は、多少戻ったミタマの力で復活させた戦士ベルトランにモンスターから村を守らせ、教団の信者になれば病を治療し、優先的に食糧を提供し、仕事の斡旋や金銭の融資を行うことにしたのだ。

神無き世界のカミサマ活動

 計画はうまく進み、ミタマに信仰という名の力が集まっていった。そんななか征人はふと前世の父親が言っていた「教団の信者を増やすためには地域ごと乗っ取れ」という言葉を思い出す。そこで征人は信者が増えて徐々に蘇るミタマのパワーで、村の文明レベルを進歩させる。水道や電気、さらに農業機械を顕現させるのだ。こうしてさらに信者を増やしていった。

神無き世界のカミサマ活動

 ハードな戦闘シーンはあるものの、基本的にはコメディタッチで読みやすく、征人のうんちくも楽しい。ただやがて、ミタマの「神の力」に比する能力をもつ皇国の守護者「アルコーン」たちが登場し、この異世界の秘密も明かされていく。はたして転生した征人の第二の人生に神の祝福はあるのか?

 本作は数ある異世界転生ストーリーのなかでも想像以上に複雑でアツい物語だ。それを知ったとき、あなたは既に本作の信者になっているだろう。

文=古林恭

あわせて読みたい