次にくるマンガ大賞1位の『気になってる人が男じゃなかった』2巻発売! ギャル女子×イケメンすぎる地味女子の関係に変化が…!?

マンガ

公開日:2024/3/2

気になってる人が男じゃなかった
気になってる人が男じゃなかった』(新井すみこ/KADOKAWA)

 44万いいね、8万リポスト。X(旧Twitter)に載った漫画はバズることが多いが、それにしてもずば抜けた数字だ。緑色の背景とモノクロの人物というコントラストが美しく、画像をクリックせずにはいられない。そこで織りなされる最初のポストの4コマは、陽キャの雰囲気をまとった若い女の子あやがよく行くCDショップの男性店員にときめくところから始まる。そして教室でその話をしていると、それを聞いた同じクラスの自称陰キャの女の子が「すごいことになってしまった」と衝撃を受けているシーンが出てくる。その自称陰キャの女の子みつきがなぜ驚いているのかはすぐに明かされる。CDショップの店員は男性ではなくみつきであり、あやは、それを知らないままCDショップの店員に惹かれていくのだ。

気になってる人が男じゃなかった

 話題の漫画『気になってる人が男じゃなかった』(新井すみこ/KADOKAWA)である。1巻の中盤であやはCDショップの店員がみつきだと知る。それから本作におけるふたりの関係が変化していく。あやはギャルっぽい陽キャ、みつきはおとなしい陰キャ。だんだんと女性たちのラブストーリーなのではないかと思えてくるが、実際はあやとみつきのとの繋がりや、音楽を通した気づきが物語の軸になっているのだ。作者である新井すみこさんは、登場人物たちの葛藤、そしてふたりの感情が変化していく様子を丁寧にあぶり出す。

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 たとえばあやは、憧れていたCDショップの店員の正体がみつきだと知ったあと、精神的なダメージを受ける。しかしそれはみつきのことが嫌いになったわけではない。みつきに友だちになりたいと言われて、ふたりが赤面するシーンは、ふたりが互いを特別な存在だと認識していたことを表している。クラスメイトには理解されない音楽を、ふたりは好んで聴き、そうすることによって、よりあやとみつきの関係が深まっていく。感情がすぐ表情や行動に出るあやと、クールに見えつつもあやに対して誠意を尽くそうとするみつき。また、みつきの叔父や、同級生のイケメンなど、ほかの登場人物もストーリーに彩りを添える。

気になってる人が男じゃなかった

 音楽を通してあやとみつきは、ゆっくりと距離を近づけていく。そんな中で、あやはみつきがキラキラして音楽のことを話すのに、学校ではおとなしいことを不思議に思うようになる。これは本作におけるひとつの謎でもある。2巻になると、みつきと知り合いの不思議な女性カンナが登場する。どうやら昔、彼女はみつきの叔父の譲と何かあったらしく……。

気になってる人が男じゃなかった

 2巻の見どころはカンナの登場と、それがどのように物語に影響していくのかだけではない。青春漫画の一大イベントである修学旅行があるのだ。行き先は沖縄である。みつきは戸惑いながらもあやのグループに入り、長時間いっしょに過ごすことでふたりの絆と音楽への愛情は強まる。

気になってる人が男じゃなかった

「推し」であるみつきの前では右往左往してしまうあやには躍動感がある。その躍動感は音楽のリズムに似ていて、ふたりの愛する音楽はこのようなものなのではないかと、読者それぞれも連想できるかもしれない。

 そんなある日、みつきはギターを手に取ってメロディを奏でる。それを聴いたあやはみつきの生み出した音楽が頭から離れなくなり、2巻のラストで大きな提案をする。その提案によって、あやにとってみつきが遠い存在になってしまう可能性を感じながらも、彼女はみつきの音楽の才能をだれよりも先に見抜いた。音楽を奏でたみつきよりも、早く。

気になってる人が男じゃなかった

 まずはXの新井すみこさんのポストなどで本作を試し読みしてほしい。そして、読み進めてほしい。ストーリーを目で追っていると、それぞれの心の奥でリズムが生まれるだろう。それはきっと、ふたりが愛する音楽のリズムと似ているはずだ。

文=若林理央

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